世界一優しい私の主治医
サナが再び目を覚ましたとき、部屋にはカーテン越しに柔らかな昼下がりの光が満ちていた。
ゆっくりと上体を起こすと、数時間前よりも頭がすっきりと軽くなっている。
「おっ、起きたかい。よく眠れていたな、サナ」
ロフトの下から、ククイがトントンと小気味よい足音を立てて梯子を上がってきた。その手には、なぜか大きめのプラスチック製のボウルと、いくつかの小さな器が載ったトレイが握られている。
「あ、博士……。私、どれくらい寝ちゃってましたか?」
「ばっちり1時間半、最高の『2時間目』だったぜ」
ククイはホワイトボードの『2時間目:お昼寝』に花丸を描き加えると、ニッと白い歯を見せた。
「さあ、それじゃあ次は3時間目――『クッキング(おやつの実習)』の時間だ!」
「えっ? でも私、まだキッチンまで行くのはちょっと……」
不安げに自分の細い足を見つめるサナに、ククイはトレイをベッドの上のサイドテーブルに置きながらウインクしてみせた。
「心配ないさ。今日は『ベッドの上で完結する特製メニュー』を用意したからな。座ったままで十分できる、サナのための特別実習だ」
トレイの上にあったのは、小さめのボウルに入ったプレーンヨーグルト、あらかじめ角切りにされたアローラ特産の果物(マンゴーやナナのみ)、そしてジッパー付きの小さな保存袋に入ったビスケットだった。
「これなら包丁も火も使わない。1時間目のアローラの歴史にちなんで、アローラ伝統のブレンドおやつを作ってみよう」
「わあ……これなら私にもできそう!」
サナの瞳に、パッと輝きが戻る。
「よし、それじゃあまずは最初の工程だ。サナ、その袋に入ったビスケットを、手のひらでクラッシュしてみてくれ」
「クラッシュ……こうですか?」
サナが袋の上からきゅっと力を込めると、サクサクと小気味よい音が響いた。少し力の足りないサナの様子を見て、ククイは上からそっと自分の大きな手を重ねる。
「そうそう、少し粗めにするのがコツだぜ。食感が残って美味しくなるんだ」
二人の手で細かく砕いたビスケットを、ククイが用意した透明なプラスチックのカップの底に敷き詰める。その上から、サナがスプーンを使って、ぽってりとしたヨーグルトをそっと重ねていった。
「上手なもんだな。次はトッピングだ。アローラの太陽をたっぷり浴びた果物を、好きなだけ載せてごらん」
「じゃあ、マンゴーをたくさん……。あ、博士のぶんも載せますね」
熱で少し火照ったサナの指先が、スプーンを動かすたびに小さく揺れる。けれど、その表情は真剣そのものだ。色鮮やかな果物がヨーグルトの白に映え、まるで小さなパフェのような『特製フルーツヨーグルト・トライフル』が完成した。
「できた……! 博士、見てください!」
「おお、完璧だぜ! スクールのみんなに見せたら羨ましがる仕上がりだな」
ククイはサナの健闘を称えるように、大袈裟に拍手をしてみせた。
「それじゃあ、自分たちで作ったおやつをいただくとするか。……サナ、3時間目の実習、大変よくできました!」
「ふふ、いただきます!」
スプーンですくって口に運ぶと、ひんやりとしたヨーグルトの酸味と、濃厚なマンゴーの甘み、そしてサクサクとしたビスケットの香ばしさが口いっぱいに広がった。
「美味しい……!」
「だろ? 自分で作ると美味さは倍増するんだぜ」
自分で何かを成し遂げられたという充実感が、サナの心を満たしていく。
賑やかな調理実習室じゃなくても、ベッドの上の小さなトレイの上には、確かに二人だけの特別で温かい時間が流れていた。
ゆっくりと上体を起こすと、数時間前よりも頭がすっきりと軽くなっている。
「おっ、起きたかい。よく眠れていたな、サナ」
ロフトの下から、ククイがトントンと小気味よい足音を立てて梯子を上がってきた。その手には、なぜか大きめのプラスチック製のボウルと、いくつかの小さな器が載ったトレイが握られている。
「あ、博士……。私、どれくらい寝ちゃってましたか?」
「ばっちり1時間半、最高の『2時間目』だったぜ」
ククイはホワイトボードの『2時間目:お昼寝』に花丸を描き加えると、ニッと白い歯を見せた。
「さあ、それじゃあ次は3時間目――『クッキング(おやつの実習)』の時間だ!」
「えっ? でも私、まだキッチンまで行くのはちょっと……」
不安げに自分の細い足を見つめるサナに、ククイはトレイをベッドの上のサイドテーブルに置きながらウインクしてみせた。
「心配ないさ。今日は『ベッドの上で完結する特製メニュー』を用意したからな。座ったままで十分できる、サナのための特別実習だ」
トレイの上にあったのは、小さめのボウルに入ったプレーンヨーグルト、あらかじめ角切りにされたアローラ特産の果物(マンゴーやナナのみ)、そしてジッパー付きの小さな保存袋に入ったビスケットだった。
「これなら包丁も火も使わない。1時間目のアローラの歴史にちなんで、アローラ伝統のブレンドおやつを作ってみよう」
「わあ……これなら私にもできそう!」
サナの瞳に、パッと輝きが戻る。
「よし、それじゃあまずは最初の工程だ。サナ、その袋に入ったビスケットを、手のひらでクラッシュしてみてくれ」
「クラッシュ……こうですか?」
サナが袋の上からきゅっと力を込めると、サクサクと小気味よい音が響いた。少し力の足りないサナの様子を見て、ククイは上からそっと自分の大きな手を重ねる。
「そうそう、少し粗めにするのがコツだぜ。食感が残って美味しくなるんだ」
二人の手で細かく砕いたビスケットを、ククイが用意した透明なプラスチックのカップの底に敷き詰める。その上から、サナがスプーンを使って、ぽってりとしたヨーグルトをそっと重ねていった。
「上手なもんだな。次はトッピングだ。アローラの太陽をたっぷり浴びた果物を、好きなだけ載せてごらん」
「じゃあ、マンゴーをたくさん……。あ、博士のぶんも載せますね」
熱で少し火照ったサナの指先が、スプーンを動かすたびに小さく揺れる。けれど、その表情は真剣そのものだ。色鮮やかな果物がヨーグルトの白に映え、まるで小さなパフェのような『特製フルーツヨーグルト・トライフル』が完成した。
「できた……! 博士、見てください!」
「おお、完璧だぜ! スクールのみんなに見せたら羨ましがる仕上がりだな」
ククイはサナの健闘を称えるように、大袈裟に拍手をしてみせた。
「それじゃあ、自分たちで作ったおやつをいただくとするか。……サナ、3時間目の実習、大変よくできました!」
「ふふ、いただきます!」
スプーンですくって口に運ぶと、ひんやりとしたヨーグルトの酸味と、濃厚なマンゴーの甘み、そしてサクサクとしたビスケットの香ばしさが口いっぱいに広がった。
「美味しい……!」
「だろ? 自分で作ると美味さは倍増するんだぜ」
自分で何かを成し遂げられたという充実感が、サナの心を満たしていく。
賑やかな調理実習室じゃなくても、ベッドの上の小さなトレイの上には、確かに二人だけの特別で温かい時間が流れていた。