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世界一優しい私の主治医

アローラの明るい日差しが、リビングの窓から柔らかく差し込んでいる。
少しだけ気分が良いというサナのために、ククイはZ技のポーズのお手本を見せてあげることにした。

「よし、次はこうやって腕をクロスさせて……」

ククイの動きに合わせて、サナもベッドの上で小さな手を伸ばしてみる。けれど、熱っぽさが残るぼやけた頭では、ポーズの順番が全く頭に入ってこない。腕を右にやるのか左にやるのかさえ混濁し、思うように動かない自分の身体に、サナは「……はぁ」と小さくため息を吐いて肩を落とした。

「覚えられなくて、ごめんなさい……」

落ち込むサナの様子に、ククイは優しく目を細めると、パンッと一度手を叩いた。

「謝ることなんてないさ。無理に覚えようとしなくていい、今日は見ているだけでいいんだぜ」

そう言うと、ククイは一歩後ろへ下がり、足幅を大きく広げた。そして何を始めるかと思えば、その逞しい両腕を大きく曲げ、胸の前でドカンと巨大な『ハートマーク』を作り上げた。

「え……っ!?」

あまりの唐突さと、褐色の筋肉質な大男が全力で作るキュートすぎるハートの絵面に、サナは目を丸くして固まった。

ククイは真顔のまま、今度は頭の上に腕を回して、さらに大きなハートを作る。

「驚いたか? 実はこれ、フェアリータイプのZ技の振り付けなんだぜ! 全力で可愛く、愛を表現するのがコツなんだ!」

ドヤ顔でキレッキレの『全力ハートポーズ』を決める博士。
そのあまりに豪快で、けれどどこまでも自分を楽しませようとしてくれているのが伝わる姿に、サナの胸の奥からこみ上げるものがあった。

「ふ……っ、あはははっ!」

久しく忘れていた、お腹の底からの笑い声。
サナが弾けたように笑うと、ククイも嬉しそうに白い歯を見せて「ニッ」と笑った。

「お、いい笑顔だ! フェアリーZの効果はバツグンだったようだな」

笑いすぎて目元に浮かんだ小さな涙を拭いながら、サナは大きく頷いた。
難しいポーズなんて覚えられなくてもいい。ただこうして彼が作ってくれる温かな時間の中にいるだけで、冷え切っていたサナの心には、確かに陽だまりのようなエネルギーが満ちていくのだった。
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