デート
「なにこれ……すっごく美味しい!!」
目の前に置かれた巨大なパンケーキに思わず歓声を上げる。
ここはメレメレ島のパンケーキショップ。
ポケモンスクールの近くにある有名なお店らしい。
私が注文したのは定番メニューである『アローラパンケーキ』だ。
「ふわっふわだね!今まで食べてきたどのデザートより好きかも……!」
夢中でパンケーキを口に運んでいるとカキが手を伸ばしてきた。
「ほら、クリームついてるぞ」
そう言って、カキは私の口元についたクリームを指先で拭ってくれた。
そのままペロッと舐める仕草があまりにも様になっていて、つい頬が熱くなってしまう。
「あっ、ありがと……」
「どういたしまして。そんなに急いで食べると喉に詰まるぞ?」
「えへへ……だってすっごくおいしいんだもん。こんなに幸せな気分になれる食べ物初めて!」
「そうか。喜んでくれて何よりだ」
「うん!ありがとう、カキ」
そう言って笑いかけると、カキも笑ってくれる。
その表情を見ただけで胸の奥がきゅっと甘く疼いた。
(なんだろう……この気持ち)
この気持ちの正体を知りたくて、胸の奥で燻っているモヤモヤした感情について考え込む。突然胸が息苦しさを訴えたかと思えば、今度は顔から火が出そうなほど身体中が熱くなる時もある。
今のように笑顔を見ると嬉しいはずなのに、同時に泣きたいような切ない気持ちにも襲われてしまう。
でも、不思議とその感覚は決して不快なものではなかった。
「……ねえ、私変じゃない?大丈夫かな?」
「ん?どこがだよ?」
「うーん……なんかこう……上手く言えないんだけど……」
うまく言葉が出てこなくて言い淀んでしまう。すると、急にカキの手が伸びてきて私の頭を撫で始めた。
「わわっ!?な、なに?」
「ん?ああ、悪い。なんかボーッとしてたみたいだからさ。もしかしたら体調が悪いのかなって思ってな」
「大丈夫だよ。今日のためにたくさん寝て来たし!元気いっぱいだよ!」
「そういう問題なのか……?まぁでも、無理だけはするなよ」
そう言ってカキは心配そうな眼差しを向けた。どうして彼はいつも私のことを気にかけてくれるのだろうか。
「カキってば本当に過保護なんだから……」
過保護、という言葉に心当たりがあるのかカキの顔が引きつった。
「そ、それはお前のことが心配だからだ!別に過保護とかじゃねぇよ!」
「何が違うのかよくわかんない…私もう子どもじゃないんだよ?」
不満げに呟いてみるけれど、決して嫌ではない自分がいることに気づく。むしろもっと甘えてみたいという思いすらあった。
「子ども扱いなんてしてねぇよ。ただ俺は……」
カキが何かを言おうとしたその時、タイミング悪く伝票を持った店員さんが現れたため最後まで聞き取ることができなかった。
「………」
「………」
それきり2人の間に沈黙が訪れる。店内の嫌に明るいBGMだけがやけに大きく聞こえていた。
その後はよく覚えていない。気が付けばカキがお会計を済ませてくれていて二人で店の外へ出ていた。
「あの、ごちそうさまでした……。いくらだった?」
慌てて財布を取り出したが、カキはそれを手で制してきた。
「いいって。俺からの奢りだ」
「ダメだよ!ちゃんとお支払いしないと!」
「いらないって言ってるだろ?どうしても払いたいなら、また一緒にここに来ようぜ」
「えっ?」
思いも寄らぬ提案に驚いていると、不意に手を握られた。
「あ、あの……カキ……?」
戸惑う私を無視して、カキはそのまま歩き出す。
「ほら行くぞ。早くしないといい時間になっちまう」
「あっ、ちょっと待ってよぉ!」
結局私は彼に引っ張られるまま歩き続ける。
繋いだ手からは温もりと優しさが伝わってくるようで、胸の奥がくすぐったくなった。
目の前に置かれた巨大なパンケーキに思わず歓声を上げる。
ここはメレメレ島のパンケーキショップ。
ポケモンスクールの近くにある有名なお店らしい。
私が注文したのは定番メニューである『アローラパンケーキ』だ。
「ふわっふわだね!今まで食べてきたどのデザートより好きかも……!」
夢中でパンケーキを口に運んでいるとカキが手を伸ばしてきた。
「ほら、クリームついてるぞ」
そう言って、カキは私の口元についたクリームを指先で拭ってくれた。
そのままペロッと舐める仕草があまりにも様になっていて、つい頬が熱くなってしまう。
「あっ、ありがと……」
「どういたしまして。そんなに急いで食べると喉に詰まるぞ?」
「えへへ……だってすっごくおいしいんだもん。こんなに幸せな気分になれる食べ物初めて!」
「そうか。喜んでくれて何よりだ」
「うん!ありがとう、カキ」
そう言って笑いかけると、カキも笑ってくれる。
その表情を見ただけで胸の奥がきゅっと甘く疼いた。
(なんだろう……この気持ち)
この気持ちの正体を知りたくて、胸の奥で燻っているモヤモヤした感情について考え込む。突然胸が息苦しさを訴えたかと思えば、今度は顔から火が出そうなほど身体中が熱くなる時もある。
今のように笑顔を見ると嬉しいはずなのに、同時に泣きたいような切ない気持ちにも襲われてしまう。
でも、不思議とその感覚は決して不快なものではなかった。
「……ねえ、私変じゃない?大丈夫かな?」
「ん?どこがだよ?」
「うーん……なんかこう……上手く言えないんだけど……」
うまく言葉が出てこなくて言い淀んでしまう。すると、急にカキの手が伸びてきて私の頭を撫で始めた。
「わわっ!?な、なに?」
「ん?ああ、悪い。なんかボーッとしてたみたいだからさ。もしかしたら体調が悪いのかなって思ってな」
「大丈夫だよ。今日のためにたくさん寝て来たし!元気いっぱいだよ!」
「そういう問題なのか……?まぁでも、無理だけはするなよ」
そう言ってカキは心配そうな眼差しを向けた。どうして彼はいつも私のことを気にかけてくれるのだろうか。
「カキってば本当に過保護なんだから……」
過保護、という言葉に心当たりがあるのかカキの顔が引きつった。
「そ、それはお前のことが心配だからだ!別に過保護とかじゃねぇよ!」
「何が違うのかよくわかんない…私もう子どもじゃないんだよ?」
不満げに呟いてみるけれど、決して嫌ではない自分がいることに気づく。むしろもっと甘えてみたいという思いすらあった。
「子ども扱いなんてしてねぇよ。ただ俺は……」
カキが何かを言おうとしたその時、タイミング悪く伝票を持った店員さんが現れたため最後まで聞き取ることができなかった。
「………」
「………」
それきり2人の間に沈黙が訪れる。店内の嫌に明るいBGMだけがやけに大きく聞こえていた。
その後はよく覚えていない。気が付けばカキがお会計を済ませてくれていて二人で店の外へ出ていた。
「あの、ごちそうさまでした……。いくらだった?」
慌てて財布を取り出したが、カキはそれを手で制してきた。
「いいって。俺からの奢りだ」
「ダメだよ!ちゃんとお支払いしないと!」
「いらないって言ってるだろ?どうしても払いたいなら、また一緒にここに来ようぜ」
「えっ?」
思いも寄らぬ提案に驚いていると、不意に手を握られた。
「あ、あの……カキ……?」
戸惑う私を無視して、カキはそのまま歩き出す。
「ほら行くぞ。早くしないといい時間になっちまう」
「あっ、ちょっと待ってよぉ!」
結局私は彼に引っ張られるまま歩き続ける。
繋いだ手からは温もりと優しさが伝わってくるようで、胸の奥がくすぐったくなった。