「それで？外で無茶した挙げ句体調が悪くなってしまったと？」
リビングのソファーでズキズキと痛む頭を押さえながら私は項垂れた。
「ごめんなさい」
目の前には仁王立ちしているククイ博士の姿があって、その隣ではカキが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「いくら恋人同士になったとはいえ、まだ未成年なんだぞ？それなのに君達ときたら……」
「すみません…俺が調子に乗ったせいだ」
「いや、カキだけの責任じゃない。二人共だよ」
そう言ってため息をつくと、博士はこちらへ向き直った。
「サナ……君はただでさえ身体が弱いのだからもう少し自分を大切にしないといけないよ」
「はい……」
どうやら博士は本気で怒っているみたいだ。
普段優しい人が怒ると怖いというのは本当らしい。
手元のブランケットを握りしめながら小さく縮こまる。
「全く……君には保健体育の授業もしないといけないな」
「「ええっ！？」」
「冗談だ」
「なんだ……」
ほっと一安心して顔を上げると、博士は真剣な顔のまま続けた。
「ただし……次同じような事があった時は覚悟しておくこと」
「……はい」
「まぁ、今回は大目に見るけど次は気を付けるように」
「はい」
「わかりました」
そう返事をして二人で笑うと、ククイ博士もつられて笑顔になった。
「本当に仲が良いな、二人は」
その言葉を聞いて私達は互いに顔を見合わせる。
「はい、とても大切な…恋人ですから！」
私はそう言ってカキの腕にしがみついた。
「おい、いきなり引っ付いてくるなって」
「いいでしょ？減るもんじゃないし」
「俺が抑えられなくなるんだよ！」
「…抑えなくていいよ？」
「はぁ…全くお前ってやつは…」
今博士に念を押された所だろ…と呆れた様子を見せるカキを見て、ククイ博士が楽しそうに笑っている。
カキは不機嫌そうな表情を見せたけれど、それはきっと照れ隠しなんだってわかっていたから怖くはなかった。
だって、ほら。
「ふふっ……」
こうして私に触れてくる手はとても優しいから。
「ねぇ、カキ」
「ん？」
「大好き」
「ああ、知ってるよ」
彼はそう言って、私にキスをする。
幸せすぎて怖いくらいだと思った。
この先何があっても彼と一緒なら乗り越えられる気がする。
だから、私は彼に寄り添って生きていこうと思う。
どんな困難にも負けずに、ずっと側にいるために――。