過保護な博士
「…悪かった」
あれからしばらく経って、ようやく落ち着きを取り戻した私達はリビングで向かい合っていたのだが、博士は開口一番に謝ってきた。
「どうして博士が謝るんですか?」
「いや、だって……。君が怪我をしたのは僕の責任でもあるだろう…」
どんどん声が尻すぼみになって行く。どうやらかなり反省しているようだ。
「そりゃあ、あれだけじぃーっと見られれば指くらい切りますよね?私に怪我させない、と言いつつこの様ですし?」
ちょっと意地悪く聞いてみると、また彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「面目ない…本当にすまなかった」
何よりも自分のせいで怪我をさせてしまったことを気に病んでいるようだった。
「いいですよ、別に」
「え?」
「だから、怪我したこと自体はもう気にしていないんです!ただ、さっきみたいに見られているとやっぱり落ち着かないというか……」
「そう、だよな……。今後はなるべく君を困らせないように努力するよ」
「はい、お願いしますね!」
やっとわかってもらえたかとホッとしていると、彼は何か思いついたかのように口を開いた。
「そうだ!これからは監視カメラを設置して君を観察することにしよう!」
「へ?」
たらり、と背筋に冷や汗が流れる。今、彼はなんて言った?
「それなら君も僕の視線を感じなくて済む!それにいつでもどこでも君の様子が見られるから一石二鳥じゃないか!」
「ちょっと待ってください博士!」
「そうと決まれば早速設置しなければ!」
「わぁぁああ!嘘でしょう!?ねえ、ほんとにやめて!?!?」
その後、あまりにも行き過ぎな彼の行動に痺れを切らした私が怒るのはまた別の話である。