毒
「サナっ!ビードルに刺されたんだって!?大丈夫かい!?」
ぜえぜえと肩で息をする俺を見て「あはは、心配し過ぎですよ博士」と保健室のベッドでなんでもなさそうに笑っている彼女の顔はまだ青白いままだった。
担当教師から話を聞くに今日のフィールドワーク中に運悪く、鳥ポケモンと交戦中だったビードルに鉢合わせてしまったらしい。その時に毒針をモロに食らってしまったそうだ。幸い命に関わるような毒性の強いものじゃなかったようだが、それでも身体に受けたダメージはかなりのものだろう。
「…本当に無事で良かった」
「心配かけちゃいましたね。ごめんなさい」
「いや謝るのはこっちだよ。今日に限って出かけていて君のピンチに気付けなかった。ロトムから君の話を聞いて一瞬目の前が真っ暗になったぜ…」
帽子を脱いで冷や汗を拭うと彼女はいつものように優しく微笑んでくれた。
「ふふっ、でもすぐに帰ってきてくれましたよね?流石です!」
「当たり前だろ……?君のためならどこへだって駆け付けるさ」
照れ隠しに頭を掻きながら視線を外す。
すると、ふと彼女の腕に巻かれている包帯に目が留まった。
「ところで…治療はちゃんとして貰ったかい?」
「はい、カキに毒を吸い出して貰いました」
「も、もしかしてそれだけか!?」
俺が慌てて聞き返すとサナはこてんと首を傾げた。
「?はい、それだけ…ですけど…なにかマズかったでしょうか?」
マズいも何も大問題だ。
生まれてからずっとアローラで過ごしているカキならばそれで十分な処置になるのだろうが、病気がちで1日の多くを研究所のベッドで過ごす彼女には不十分だ。
それならば治療が終わっているのにも関わらず、顔色が悪いことにも納得がいく。
「毒が完全に抜けきってないんだ!待ってろ、今解毒剤を持ってくる!」
「えぇっ!?そんな大げさなものじゃないんですからいいですよー」
「駄目だ。ほら、ちゃんと横になる!」
「うぅ……」
俺は急いで薬を取りに行き、それを飲ませると彼女はぐったりとした様子を見せた。
「……ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
「気にすることはないよ、それよりも早く元気になることが一番だからね」
彼女は小さく笑って、そのまま目を閉じた。
「…でも、ホントのこと言うと…刺された時、身体が痺れて、どんどん呼吸が出来なくなって…死んじゃうかと思いました」
「サナ……」
「カキに応急処置して貰っても息苦しさが取れなくて、でも心配かけるわけにもいかなくて…」
「それで我慢してたんだな?」
彼女が恐る恐る頷くと俺は深く息を吐いた。
彼女の控えめで謙虚な一面は長所でもあるのだが、多々行き過ぎてしまうことがあるのだ。もちろんこの状況も。
「全く…無理しないでくれよ、それに嘘をつかないでくれ。正しい治療が出来なくなるだろう?俺には分かるんだから……」
「ふふ、バレちゃいましたか……」
「そりゃあれだけ青い顔をしていれば気付くさ……しかし、一度ビードルに刺されると血栓ができやすくなるらしい。今後また何かあった時に困るかもしれないから、予防の為に血液検査をした方がいいかもな」
「はい、分かりました」
素直に返事をする彼女に俺は満足して頭を撫でると、彼女はウトウトとし始めやがて眠ってしまった。
俺は彼女を起こさないようにそっと立ち上がり、保健室を出る。
放課後まで安静にさせておいたほうがいいだろう。
それにしても、ビードルに刺されるだなんて…
今後はなるべく1人にならないよう注意させなくては……
ぜえぜえと肩で息をする俺を見て「あはは、心配し過ぎですよ博士」と保健室のベッドでなんでもなさそうに笑っている彼女の顔はまだ青白いままだった。
担当教師から話を聞くに今日のフィールドワーク中に運悪く、鳥ポケモンと交戦中だったビードルに鉢合わせてしまったらしい。その時に毒針をモロに食らってしまったそうだ。幸い命に関わるような毒性の強いものじゃなかったようだが、それでも身体に受けたダメージはかなりのものだろう。
「…本当に無事で良かった」
「心配かけちゃいましたね。ごめんなさい」
「いや謝るのはこっちだよ。今日に限って出かけていて君のピンチに気付けなかった。ロトムから君の話を聞いて一瞬目の前が真っ暗になったぜ…」
帽子を脱いで冷や汗を拭うと彼女はいつものように優しく微笑んでくれた。
「ふふっ、でもすぐに帰ってきてくれましたよね?流石です!」
「当たり前だろ……?君のためならどこへだって駆け付けるさ」
照れ隠しに頭を掻きながら視線を外す。
すると、ふと彼女の腕に巻かれている包帯に目が留まった。
「ところで…治療はちゃんとして貰ったかい?」
「はい、カキに毒を吸い出して貰いました」
「も、もしかしてそれだけか!?」
俺が慌てて聞き返すとサナはこてんと首を傾げた。
「?はい、それだけ…ですけど…なにかマズかったでしょうか?」
マズいも何も大問題だ。
生まれてからずっとアローラで過ごしているカキならばそれで十分な処置になるのだろうが、病気がちで1日の多くを研究所のベッドで過ごす彼女には不十分だ。
それならば治療が終わっているのにも関わらず、顔色が悪いことにも納得がいく。
「毒が完全に抜けきってないんだ!待ってろ、今解毒剤を持ってくる!」
「えぇっ!?そんな大げさなものじゃないんですからいいですよー」
「駄目だ。ほら、ちゃんと横になる!」
「うぅ……」
俺は急いで薬を取りに行き、それを飲ませると彼女はぐったりとした様子を見せた。
「……ごめんなさい、迷惑かけちゃって……」
「気にすることはないよ、それよりも早く元気になることが一番だからね」
彼女は小さく笑って、そのまま目を閉じた。
「…でも、ホントのこと言うと…刺された時、身体が痺れて、どんどん呼吸が出来なくなって…死んじゃうかと思いました」
「サナ……」
「カキに応急処置して貰っても息苦しさが取れなくて、でも心配かけるわけにもいかなくて…」
「それで我慢してたんだな?」
彼女が恐る恐る頷くと俺は深く息を吐いた。
彼女の控えめで謙虚な一面は長所でもあるのだが、多々行き過ぎてしまうことがあるのだ。もちろんこの状況も。
「全く…無理しないでくれよ、それに嘘をつかないでくれ。正しい治療が出来なくなるだろう?俺には分かるんだから……」
「ふふ、バレちゃいましたか……」
「そりゃあれだけ青い顔をしていれば気付くさ……しかし、一度ビードルに刺されると血栓ができやすくなるらしい。今後また何かあった時に困るかもしれないから、予防の為に血液検査をした方がいいかもな」
「はい、分かりました」
素直に返事をする彼女に俺は満足して頭を撫でると、彼女はウトウトとし始めやがて眠ってしまった。
俺は彼女を起こさないようにそっと立ち上がり、保健室を出る。
放課後まで安静にさせておいたほうがいいだろう。
それにしても、ビードルに刺されるだなんて…
今後はなるべく1人にならないよう注意させなくては……