延命治療
「博士!サナがいないロト!!」
ロトム図鑑の警告音で目が覚める。時計を見ると朝の10時を示していた。
慌てて研究所の中を探し回るがどこを探しても見つからない。
「俺は外を見てくる!ロトムは研究所に残って待っていてくれ」
「了解ロト」
研究所を出て街へと続く坂道を駆け上がる。辺りは人が溢れており、嫌な予感だけが胸を支配していた。
「サナ!!いるなら返事してくれー!!」
必死に呼びかけるが、彼女の姿は見えない。ショッピングモール、ポケモンスクール、森など思いつくところは全て虱潰しに探していった。
「はぁ……はぁ……はぁ」長い坂道を登り切ったところで息を整える。
「……やっぱりいないか」
しかしそこに彼女の姿はなかった。念のため店先を見て回ったがやはりどこにも見当たらない。
「くそっ……」
焦りで頭が真っ白になり、何も考えられなくなる。その時、よく見知ったシルエットの男がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「グズマくん!」
「ッチ…お前かよ」
彼は悪態をつきながらも俺の話を聞いてくれた。
「……なるほどなァ。つまりあのガキが行きそうな場所が知りたいと」
「あ、ああ。何か知らないか?」
「………言っておくが、俺は止めたからな?」
「……?どういうことだ?」
「俺様が止めてもあいつは研究所に帰らなかったってことだよ」
「……っ」
「まあいい。俺が知っている限りでいいんだったら教えてやる」
「本当か!?」
「ああ。まずは……」
グズマくんの話によるとどうやらサナはカキと一緒に市場を回っているらしいことがわかった。
「あと、体調悪そうだったぞ」
という一言でますます不安が増していく。
「すまない、恩に着る!」
礼を言いながら走り出す。後ろからうるせぇという声が聞こえたが気にしてはいられない。
「頼む、無事でいてくれ……!」
俺は祈るような気持ちで市場へと向かった。