緑⊿の短編系




ドクッ、ドクッ、


暗がりの世界に、私はベッドを見下ろしながら腕を着く。

いつもより早い、心臓の音。
熱の籠る、体。
何かが違う、感覚。


それは、普段受け入れないお酒を飲んだせいなのか。
それとも、

愛しい人の身が、目の前に艶めかしく横たわるせいなのか。


「……っ、」

「今にも襲ってきそうな顔やね、理佐」

「…、。」


浅く早い、口呼吸を自覚して、口を閉じる。溜まっていた唾を飲み込めば
ねるの言葉が、私を正確に表していると知る。


「ねる、」

「……キスしよ、りっちゃん」

「、っ!」


ねるの掠れた声に、体が勝手に息を吸い込む。
同時に、ねるの柔く温かい手のひらが私の頬を包んだ。
決して強くないはずのその手に引き寄せられて、私は体を落とす。

ねるの横に肘を付き、顔を傾ける。
ねるの呼吸が聞こえたと思った瞬間、唇は感じたことの無い柔らかさと熱を、脳へダイレクトにぶつけてきた。

触れるだけ、なんてことはなく。
本能のように、リップ音を立てながらキスを繰り返し、徐々に唇の隙間を互いに許していく。
啄むようなキスは、深く、濃厚に、粘着質な音を立て。いやらしく、ねると私の世界を
セックスへと導いていく。


「ん、ふ……っ」

「…っ、はぁ、っ、」


ねるの手のひらは後頭部に移動して、くしゃりと髪を掴む仕草が伝わる。撫でる程優しくない手つきで私の頭をまさぐると、耳へと行きついた。

耳の形を確認するかのような、ねるの指先に、ゾワゾワと体が震える。耳の中に指が入り込んで来て体ビクリと跳ねると、ねるはキスの合間に息を震わせた。

笑われたのだと、分かった。


耳をいじるねるの指先を迎えるように首を回して、ねるの指を咥え込む。
軽く歯を立て、顔をそのままに視線をねるへと向ける。笑われた悔しさと熱を、視線にのせれば 笑っていた余裕は消え去り私の視線に身体を疼かせるねるがいた───

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