緑⊿の短編系


長い片想いをしてきた。

気づいたら好きで、でも、その時にはもう届かなくて。

奇跡とも運命とも呼べる再会をして、もう消えたと思っていた、消せたと思ってた想いはぐずぐずと燻っていただけで。

あっという間に、心を焦がしていく。




長い。

本当に長い片想いをしてきたんだ。







なのに。








「てっちゃ〜ん!」

「なんだよー」




目の前の恋人は、何故私じゃない人に擦り寄っているのだろうか。

お酒は飲んでる。
それはいい。

成人したし、明日も休みだし。
仲間内で飲み会だし、せっかくだし…………





でも、なんでねるは平手にべったりなんだ?






「理佐、顔怖いで」

「………うるさいな、」




お酒に弱いらしい美波は、ちびちびとお酒を含んではソフトドリンクを飲んでの繰り返しの様子だった。

仕事で来れない土生ちゃんが迎えに来るらしい。

けど。



「なんや、ねるはてちにご執心やなぁ?」

「…………」

「ほんで?怒ってんの?」

「………………」

「んふふ、ヤキモチさんやねぇ」




長い付き合いのせいか、無言の圧は怖くないと言わんばかりに美波はニヤニヤしながら寄ってくる。
イライラするけど、美波の言うことは間違っていなかった。
ぐいっと、グラスに入っていたお酒を流し込む。




「案外、理佐に原因があるんと違う?」






…………私に?

そんなの聞いたことない。
でも、言えないのかもしれない。

一緒に暮らし始めて1年経つけれど、不満を言われたことも無い。気をつけているつもりだけど、ねるにも不満が溜まってるんだろうか。

それで、

愛想が尽きたとか?
ねるを支えてきたのは平手だった。
なら、平手に惹かれていってしまっても仕方ないし
私が悪いのかも………。

え、

どうしよう。




家具とか、2人で買ったし
別れたらそれで喧嘩したりするのかな、


いやだな。
ぐちゃぐちゃになっちゃうんなら、いっそちゃんと引き際をキレイにしたいし、


ああ、でも、



ねるがいなくなって、
別れて…


私、生きていけるのかな……















「りっちゃん、」

「はっ、」



気づけば美波のいた所に、ねるがいて
こっちを覗き込んでいた。

ねると目が合うと、
ねるは不貞腐れたように唇を突き出して隣に座る。




「ねる、?」

「何考えてたと?」

「…………」

「理佐はねるのことなんて、どーでもいいんやね」

「そんなことない!」




私の声に、ねるはびっくりした顔をする。
きょとーん、て感じ。




「ねるのこと考えてたよ!平手とばっかくっついてさ、」


んん?酔ってるのかもしれない、、。
こんなこと、普段絶対言わないのに。

そんな私に慌てたように反論してくるねる。顔が赤くて、やっぱりねるも酔ってるんだって感じる。



「やって、ねる、てちとイチャイチャしとるのに、全然見とらんし」

「気づいてたよ。だから、別れる心の準備を」

「、はあ?なんでそうなると!?」

「私に愛想尽かしたから、平手にいくんでしょ?分かってるよ」


ただの強がりだったそれを言った瞬間、
「ばか理佐!」って小さく聞こえた。
たぶん美波の声だったと思う。


そして、それと同時くらいに、肩に衝撃が来て視界が揺れた。


「いっだ!」


肩パンとか、マジやめてください……、
女の子でしょ……


「理佐のばか!!りっちゃんだって、ここんとこずっと『藤吉ちゃん』の話ばっかりやんか!!ニヤニヤしよって!変態!」

「へっ、!!?」


美波「えー、理佐変態なん?そりゃあかんわー」

平手「ないよねー。まじないわー」







………うるさいな!!
だって絶対面白いもんあの子!



茶々を入れ始める2人に、ねるは私の『藤吉ちゃん』に関する行動を暴露し始める。


平手は呆れてたから、何回も聞いていたのかもしれない、、



「ねる!!もうやめて!」

「じゃあ、ねるにちゃんとねるのこと好きってしょうめーして!」

「えっ、」

「しょーめー!!」




腕をバタバタさせて、ねだるねるは
子供のそれで。

ヤキモチ焼きはお互い様だな、と思った。








全然宥められないねるに手こずっている間に、迎えに来た土生ちゃんや愛佳というギャラリーが増えてしまったのは
忘れてしまいたい………。








愛佳「藤吉ちゃんて?」
理佐「新しい後輩。教育担当なんだ」

愛佳「へー。かわいいの?」ニヤニヤ
理佐「……梨加ちゃんに言っとくね」

愛佳「は!?なんでだよ!今のは浮気に入らねーだろ!」
理佐「うるさい!にやにやしてたじゃんか!!」


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