Succubus
「りさっ、」
ねるのアパートに着いて、すぐ。
荷物を置く間もなく、ねるのその身へと腕を回した。
存在を確かめるように強く。体は密着し、熱量だけでなく吐く息も吸う息も伝わってきて、ねるは身を捩った。
「理佐、」
「………い、?」
「え?」
「なにも、されてない?」
「………、」
いつでも。いつだって。
貴女は、優しい。
包み込むような優しさは、泣きたくなってしまう。
「……うん、」
「……よかった、」
安心した声とともに、回した腕にぐっと力を込められて一瞬苦しくなるけれどそれはすぐに解かれた。
離れていく息苦しさに、寂しくなる。
「……帰る、ね」
「えっ!?」
「……考えたいことあるでしょ?」
「ーー……」
その悲しげな瞳に、私は、映らない。
顔を俯かせて、怖がっているかのようで。
それでも、言葉とは裏腹にそのまま足を動かさない理佐に切なくなる。
優先してくれるのは、ねるのことで。
いつもそれに甘えて、貴女を傷つけている。
想いが通じて一緒にいるはずなのに、その形は、その価値は、お互いが別の方法で大切にしている。
「待って、」
それはいつか、誤解を生んで綻びになってしまうんだ。
だから、
「…ここに、おって。理佐、」
「……」
引き寄せるように垂れた理佐の腕を引くけれど、その足はどっちにも動かなくて、拒否されていると感じてしまう。
それを飲み飲んで、理佐に向き合う。腕は離さなかった。
「……お願い。」
ねるの言葉に、理佐がひゅっと息を吸う。
掴んだ腕に力が入って、何かを覚悟するような仕草だった。
「…ねるは、」
「ん?」
「それが、どういうことか、分かってる…?」
「……え?」
「もう、…我慢なんて、出来ないよ、」
前髪に隠れていた表情がゆっくりと上がって顔を出す。
眉は泣きたいのかと思うほど歪んでいたのに、ねるはその瞳に疼いてしまう。
「ーー、」
「………、ねる。」
熱の孕んだ眼が、射抜いてくる。
熱の篭った声が、体を響かせる。
いつの間にか、掴んだ手は掴まれていた。
でも、それは全て。
ねるがサキュバスだから…?
「あの子に言ったのは嘘だよ。いつだって、ねるへの気持ちは惑わされてる」
ぐっ、と喉が詰まる感覚。
「触りたくて、肌に触れたくて、キス、したくて。いつも、闘ってる。ねると居られたらそれでいいって思ったのに、あの子に捕まってるのを見て我慢できなかった。」
頭は熱に浮かされながら、血が引いたように冷たくて。
震える手は、力ばかりが込められて。
声は、低いのに不安定で。
「でも、触れたら止まれないって分かってる。それが、ねるを傷つけるとも思ってる…」
目は必死に君を捉えるけれど、見返してくる瞳に
戸惑って揺れる。
それは、あまりにかっこ悪かった。
でも。
それは、理佐がねるを想う、見えない心の全ての形だった。
「理佐…」
「考えたいこと、あるんなら、もう帰る。でも、私を引き止めるんなら…そういうこともちゃんと考えて」
口調がハッキリしていて不安になる。でもそれは理佐が答えを、覚悟している証拠だった。理佐が掴んでいたねるの手を離すと、ねるの腕だけがひとり、宙に浮いた。
離れた理佐の手。
ねるは切なくなる。たったそれだけの事が、別れの兆しの気がした。
その手を離したくない。理佐が求めてくれることに喜びだってある。それが例え、サキュバスに当てられただけだとしても理佐なら。理佐だから、『それでもいい』と思える。
「……よかよ、」
「………」
「ねる、理佐のこと好きやけん。なんの後悔もなか」
「……違う、!」
「え?」
否定する言葉とは逆に、長い腕に捕まる。
さっきまでの、揺れる理佐とは違う。
あまりに、力強かった。
「ねる、好きだよ」
「ーー、」
「好きなの、ねるのこと、」
「サキュバスとか、そんなの関係ない。でもねるは、自分が『そう』だから私が我慢できないって思ってるんでしょ…?」
「………りさ、」
「、いつも、思うんだ。どうしたらねるに伝わるんだろうって。伝えられるんだろうって…」
『サキュバス』だから、『淫魔』だから。
そんなもの、純粋に『好きだからだ』と一掃出来ればいいのに。
想いも心の内も、色がわかったらいい。
そうしたら、君が悲しむことも半分には減らせた。
でも、そんなの、できないから。
必死に、何回でも。伝え合うしかない。
「ねるはどこかで、あの子に触れた私がねるに触れないこと嫌だったりしない?」
「……それは、」
ーーーいやだ。
誰よりも、何よりも。
ねるは理佐を誘えるはずで。誘ってきた。
けど、
その行為への箍を外したのはあの子だ。
ねるよりも先に、理佐に触れたーー
「ねる、」
「……っ、」
「好きじゃない人を抱いた。それは最低だったと思う、そのせいで、ねるに嫌な思いもさせた。本当にごめん、」
でも、と理佐は言葉を続ける。
理佐の中で、あれだけ真っ直ぐに思いを投げかけてくれた愛佳がいた。
あの子を抱いた、その過去に。傷つく必要も、蔑ろにする必要もない。
自分を肯定することはできないけれど、ただせめて、責めることも傷つけることもやめようと思えた。
「ねるのことは、大事だから、守りたくて、笑っててほしくて。勘違いしたまま傷つけたくない…」
ずっと前にも気づいたはずだった。
自分がやるべきは、ねるを大切にすることで
自分を傷つけ感傷に浸ってる時間なんてない。
君に、想いを伝えるために
君を、大事にするために
君を、傷つけずに 守るために
私はーーー
「どうしたら、いい?」
理佐の、その一言は
泣きそうな顔とともに降ってきて。
ねるは、笑みが漏れる。
必死で考えて、たくさん想ってくれて。
愛されている。
ただ1人、愛する人に。
ねるは、抱きしめられたその体を少しだけ離して、解放された手をゆっくりと理佐に近づける。
指でなぞるように、理佐の濡れた頬を包む。
涙は、いつの間にか零れていた。
「……キスして、」
遠くで、人の存在がする。
ドアの向こうには何気ないなんの変哲もない日常がある。
そんなことを、頭の片隅で考えながら、
目の前の、初めて目の当たりにするねるを見つめた。
ねるの言葉に
理佐の揺れる瞳は、しっかりとねるを見つめる。
「好きって言って欲しか」
悲しげな眉は、綺麗な形へ変わる。
ドクドクと心臓が痛いほどに暴れて、死ぬんじゃないかと不安になった。
「抱きしめて」
まだ、その肌に触れてもいないのに
呼吸が震える。
キスしようとして、震える呼吸がねるにバレないように息をとめた。
ねるは、近づく唇に気づいて
重なる直前に最後の願いを込めるように小さく甘い、掠れた声を残した。
「ねるに、触れて…?」
もっと、
深く。
もっと、
奥まで。
誰も触れたことの無い部分にまで、理佐で埋めて、すべて染めてほしい、。
重なった唇を皮切りに、
なだれ込むように溺れていく。
切れた呼吸。
汗ばんだ肌。
粘着質な音。
布やベッドが生む雑音。
きみの瞳、唇、
貴女の指先、舌、
体温と、熱。
真っ白い世界は、君と同じように見れたらいい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…理佐、?」
「…大丈夫?ねる」
うっすらと浮かび上がった意識の先では
化粧けのない、少し幼げを残した理佐が微笑んでいて。
柔らかい声に包まれる。
「ふふ、なにニヤニヤしてるの」
「幸せやなぁって思ったと。」
布団に潜って、理佐の体に抱きつく。
邪魔するものなどなくて、肌と肌の感覚や体温が全身に広がって、心を満たしていく。
「そういえば、理佐、なんで大学におったと?」
「愛佳に、ねるがあの子とタイマンしに行ったって言われて。それだけで、無我夢中に走ってった」
理佐の腕もねるの背中に回って、
その身を呈して守るようだった。
「私にしたみたいに、ねるにも手を出すんじゃないかって怖かった」
あの時、理佐が止めてくれなかったら、きっとそうなっていただろう。
「そうなったら、きっと…」
その先を言葉にはしなかったけれど、恐ろしい言葉が待ってる気がして。
「理佐、ありがと」
「……」
「ねる、幸せばい」
抱きしめあったせいで、顔は見えないけれど、
ねるの耳に、鼻をすする音が小さく届いた。
「泣きよるの?泣き虫さんやねぇ」
「うるさい、」
ぐずぐずになる。
そんな姿まで君に晒してしまう。
涙は、君に伝えたい。
夢の中の君は、ありのままの姿だった。
それがあまりに妖艶で。
欲は留まることを知らなくて、君を泣かせてしまったこともある。
でも、この体の熱は君だから、抑えきれないんだ。
誰を相手にしたところで、君に敵いはしない。
高く、この上なく熱く、熱の篭ったこの肌の温もりは、君しか知らない。
それでも、
夢は、現実にはなり得ないと、君は言ったね。
ずっと、考えていたんだ、
どんなに君と交わってもそれが夢なら。
どんなに熱がなくたって、あの子との現実が勝る。そう言われたと思っていた。
いや、君はきっとそう言っていた。
否定したくて仕方がなかった。
でも、否定するために何が必要かも分からなくて。君を傷つけてしまっていた。
でも。
今なら、否定の必要は無い。
肯定しよう。
夢は、現実にはなり得ない。
あの、欲と性にまみれた夢は、
君との現実になり得ない。
敵いはしない。
目の前にした、現の君に。
あまりの衝動に駆られるんだーーー。
ねるのアパートに着いて、すぐ。
荷物を置く間もなく、ねるのその身へと腕を回した。
存在を確かめるように強く。体は密着し、熱量だけでなく吐く息も吸う息も伝わってきて、ねるは身を捩った。
「理佐、」
「………い、?」
「え?」
「なにも、されてない?」
「………、」
いつでも。いつだって。
貴女は、優しい。
包み込むような優しさは、泣きたくなってしまう。
「……うん、」
「……よかった、」
安心した声とともに、回した腕にぐっと力を込められて一瞬苦しくなるけれどそれはすぐに解かれた。
離れていく息苦しさに、寂しくなる。
「……帰る、ね」
「えっ!?」
「……考えたいことあるでしょ?」
「ーー……」
その悲しげな瞳に、私は、映らない。
顔を俯かせて、怖がっているかのようで。
それでも、言葉とは裏腹にそのまま足を動かさない理佐に切なくなる。
優先してくれるのは、ねるのことで。
いつもそれに甘えて、貴女を傷つけている。
想いが通じて一緒にいるはずなのに、その形は、その価値は、お互いが別の方法で大切にしている。
「待って、」
それはいつか、誤解を生んで綻びになってしまうんだ。
だから、
「…ここに、おって。理佐、」
「……」
引き寄せるように垂れた理佐の腕を引くけれど、その足はどっちにも動かなくて、拒否されていると感じてしまう。
それを飲み飲んで、理佐に向き合う。腕は離さなかった。
「……お願い。」
ねるの言葉に、理佐がひゅっと息を吸う。
掴んだ腕に力が入って、何かを覚悟するような仕草だった。
「…ねるは、」
「ん?」
「それが、どういうことか、分かってる…?」
「……え?」
「もう、…我慢なんて、出来ないよ、」
前髪に隠れていた表情がゆっくりと上がって顔を出す。
眉は泣きたいのかと思うほど歪んでいたのに、ねるはその瞳に疼いてしまう。
「ーー、」
「………、ねる。」
熱の孕んだ眼が、射抜いてくる。
熱の篭った声が、体を響かせる。
いつの間にか、掴んだ手は掴まれていた。
でも、それは全て。
ねるがサキュバスだから…?
「あの子に言ったのは嘘だよ。いつだって、ねるへの気持ちは惑わされてる」
ぐっ、と喉が詰まる感覚。
「触りたくて、肌に触れたくて、キス、したくて。いつも、闘ってる。ねると居られたらそれでいいって思ったのに、あの子に捕まってるのを見て我慢できなかった。」
頭は熱に浮かされながら、血が引いたように冷たくて。
震える手は、力ばかりが込められて。
声は、低いのに不安定で。
「でも、触れたら止まれないって分かってる。それが、ねるを傷つけるとも思ってる…」
目は必死に君を捉えるけれど、見返してくる瞳に
戸惑って揺れる。
それは、あまりにかっこ悪かった。
でも。
それは、理佐がねるを想う、見えない心の全ての形だった。
「理佐…」
「考えたいこと、あるんなら、もう帰る。でも、私を引き止めるんなら…そういうこともちゃんと考えて」
口調がハッキリしていて不安になる。でもそれは理佐が答えを、覚悟している証拠だった。理佐が掴んでいたねるの手を離すと、ねるの腕だけがひとり、宙に浮いた。
離れた理佐の手。
ねるは切なくなる。たったそれだけの事が、別れの兆しの気がした。
その手を離したくない。理佐が求めてくれることに喜びだってある。それが例え、サキュバスに当てられただけだとしても理佐なら。理佐だから、『それでもいい』と思える。
「……よかよ、」
「………」
「ねる、理佐のこと好きやけん。なんの後悔もなか」
「……違う、!」
「え?」
否定する言葉とは逆に、長い腕に捕まる。
さっきまでの、揺れる理佐とは違う。
あまりに、力強かった。
「ねる、好きだよ」
「ーー、」
「好きなの、ねるのこと、」
「サキュバスとか、そんなの関係ない。でもねるは、自分が『そう』だから私が我慢できないって思ってるんでしょ…?」
「………りさ、」
「、いつも、思うんだ。どうしたらねるに伝わるんだろうって。伝えられるんだろうって…」
『サキュバス』だから、『淫魔』だから。
そんなもの、純粋に『好きだからだ』と一掃出来ればいいのに。
想いも心の内も、色がわかったらいい。
そうしたら、君が悲しむことも半分には減らせた。
でも、そんなの、できないから。
必死に、何回でも。伝え合うしかない。
「ねるはどこかで、あの子に触れた私がねるに触れないこと嫌だったりしない?」
「……それは、」
ーーーいやだ。
誰よりも、何よりも。
ねるは理佐を誘えるはずで。誘ってきた。
けど、
その行為への箍を外したのはあの子だ。
ねるよりも先に、理佐に触れたーー
「ねる、」
「……っ、」
「好きじゃない人を抱いた。それは最低だったと思う、そのせいで、ねるに嫌な思いもさせた。本当にごめん、」
でも、と理佐は言葉を続ける。
理佐の中で、あれだけ真っ直ぐに思いを投げかけてくれた愛佳がいた。
あの子を抱いた、その過去に。傷つく必要も、蔑ろにする必要もない。
自分を肯定することはできないけれど、ただせめて、責めることも傷つけることもやめようと思えた。
「ねるのことは、大事だから、守りたくて、笑っててほしくて。勘違いしたまま傷つけたくない…」
ずっと前にも気づいたはずだった。
自分がやるべきは、ねるを大切にすることで
自分を傷つけ感傷に浸ってる時間なんてない。
君に、想いを伝えるために
君を、大事にするために
君を、傷つけずに 守るために
私はーーー
「どうしたら、いい?」
理佐の、その一言は
泣きそうな顔とともに降ってきて。
ねるは、笑みが漏れる。
必死で考えて、たくさん想ってくれて。
愛されている。
ただ1人、愛する人に。
ねるは、抱きしめられたその体を少しだけ離して、解放された手をゆっくりと理佐に近づける。
指でなぞるように、理佐の濡れた頬を包む。
涙は、いつの間にか零れていた。
「……キスして、」
遠くで、人の存在がする。
ドアの向こうには何気ないなんの変哲もない日常がある。
そんなことを、頭の片隅で考えながら、
目の前の、初めて目の当たりにするねるを見つめた。
ねるの言葉に
理佐の揺れる瞳は、しっかりとねるを見つめる。
「好きって言って欲しか」
悲しげな眉は、綺麗な形へ変わる。
ドクドクと心臓が痛いほどに暴れて、死ぬんじゃないかと不安になった。
「抱きしめて」
まだ、その肌に触れてもいないのに
呼吸が震える。
キスしようとして、震える呼吸がねるにバレないように息をとめた。
ねるは、近づく唇に気づいて
重なる直前に最後の願いを込めるように小さく甘い、掠れた声を残した。
「ねるに、触れて…?」
もっと、
深く。
もっと、
奥まで。
誰も触れたことの無い部分にまで、理佐で埋めて、すべて染めてほしい、。
重なった唇を皮切りに、
なだれ込むように溺れていく。
切れた呼吸。
汗ばんだ肌。
粘着質な音。
布やベッドが生む雑音。
きみの瞳、唇、
貴女の指先、舌、
体温と、熱。
真っ白い世界は、君と同じように見れたらいい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…理佐、?」
「…大丈夫?ねる」
うっすらと浮かび上がった意識の先では
化粧けのない、少し幼げを残した理佐が微笑んでいて。
柔らかい声に包まれる。
「ふふ、なにニヤニヤしてるの」
「幸せやなぁって思ったと。」
布団に潜って、理佐の体に抱きつく。
邪魔するものなどなくて、肌と肌の感覚や体温が全身に広がって、心を満たしていく。
「そういえば、理佐、なんで大学におったと?」
「愛佳に、ねるがあの子とタイマンしに行ったって言われて。それだけで、無我夢中に走ってった」
理佐の腕もねるの背中に回って、
その身を呈して守るようだった。
「私にしたみたいに、ねるにも手を出すんじゃないかって怖かった」
あの時、理佐が止めてくれなかったら、きっとそうなっていただろう。
「そうなったら、きっと…」
その先を言葉にはしなかったけれど、恐ろしい言葉が待ってる気がして。
「理佐、ありがと」
「……」
「ねる、幸せばい」
抱きしめあったせいで、顔は見えないけれど、
ねるの耳に、鼻をすする音が小さく届いた。
「泣きよるの?泣き虫さんやねぇ」
「うるさい、」
ぐずぐずになる。
そんな姿まで君に晒してしまう。
涙は、君に伝えたい。
夢の中の君は、ありのままの姿だった。
それがあまりに妖艶で。
欲は留まることを知らなくて、君を泣かせてしまったこともある。
でも、この体の熱は君だから、抑えきれないんだ。
誰を相手にしたところで、君に敵いはしない。
高く、この上なく熱く、熱の篭ったこの肌の温もりは、君しか知らない。
それでも、
夢は、現実にはなり得ないと、君は言ったね。
ずっと、考えていたんだ、
どんなに君と交わってもそれが夢なら。
どんなに熱がなくたって、あの子との現実が勝る。そう言われたと思っていた。
いや、君はきっとそう言っていた。
否定したくて仕方がなかった。
でも、否定するために何が必要かも分からなくて。君を傷つけてしまっていた。
でも。
今なら、否定の必要は無い。
肯定しよう。
夢は、現実にはなり得ない。
あの、欲と性にまみれた夢は、
君との現実になり得ない。
敵いはしない。
目の前にした、現の君に。
あまりの衝動に駆られるんだーーー。