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Unforgettable.


不意に首元に触れる。
けれど、朝まであったあの感触はどこにもない。


『………なんなん』



理佐と別れたあと、意味もなく図書室に行き、荷物を机に置きながら呟いた。



図書室には窓が続いていて、眩しいくらいの太陽が本や棚を照らしている。
本の並ぶ空気や世界観は好きだった。だからこそ、ここに逃げてきたのかもしれない。


外を眺めると、窓の外には桜が見える。
ここのところ、異常気象なのか教科書や予報の通りに桜は咲かず時期がズレている。

桜のない入学式は少し寂しい気もした。











ーーー昨日は、夜桜を見に行った。



理佐と、だけではない。

平手友梨奈、志田愛佳、小池美波、土生瑞穂とねるを合わせて6人だった。
異様な気もするけれど、仲の良い人を繋げて行くと意外と広がってしまうものだ。


桜は満開とはいかなかったけれど、桜色には染まっていて
桜が咲く時期に合わせた催し物もあった。
桜見と、屋台と、目的はそれぞれ半々だったように思う。



それもあってか、最初こそ6人だったけれど土生と美波、平手と愛佳が抜けていって


気づけば理佐と二人きり。。。



『あいつら、どこいったんだろ』


どこか、怒っているような困っているような…照れている様にも見えて

理佐は素直じゃないからな、なんて自惚れにも近い感想を持っていた。


『まぁ、いいやなか?皆それぞれ動いた方が楽しいと』

『………そうだけど、私といてもねるはつまらないでしょ』

『そんなことなか!理佐とおれるのねる嬉しいばい』

『………なら、いいけど』






桜のライトアップは明るくて、夏のお祭りほど暗くない。
理佐の表情ははっきりと見えていた。
見えないように顔を背けていた理佐がおかしくて、笑ってしまう。


『なに』

『なんでもない!ねえ、向こうも見に行こうよ』





私が指差す方には、今いる場所とは種類の違う桜が植わっている。

咲く時期が僅かに違うから、咲いていないかもしれないけど、理佐となら『咲いてなかったね、また咲く頃に来よう』なんて会話が出来るだけでも行く価値があると思った。








土生と小池は付き合ってるんじゃないか、とか
愛佳の女遊びは何歳まで続くのか、なんて居ない4人の話をしながら歩く。



目的地に着くと、一応のライトアップはされているけれど見物にはならないのか、人はいなくて夏のお祭り位までに暗い。




『咲いとらんね』

『…………』

『また、咲く頃に来てもよか?また一緒に…』

『………………』



返答がないことが不安になって、半歩程後ろにいる理佐に振り向く。


『…………理佐?』


暗いせいで顔が見えない。


『どしたん?………っ!』




理佐に近づこうとした瞬間、衝撃が走った。


『いっ……』



一瞬、何が起こったのか分からなくて
痛みすら追いついてこなかった。



背中は堅いものに押し付けられていて
さっき見ていた桜の幹を思い出す。


堅いものが痛くて不快で、離れようとするけれど
体が動かない。


目の前には理佐の顔。





ここでやっと、



理佐に、押し付けられて、拘束されていることが知れた。


理佐の腕に片方ずつ私の腕が捕まっている。腰のあたりから密着していて、こんなに人と触れ合ったことは無いと思うほどに、理佐が近くて
キスだって出来てしまう距離ーー。



訳の分からない状況にも関わらず、恥ずかしくなった。



『な、ん……りさ……?はなしてっ』

『………むりだよ』

『なんでっ……』





理佐じゃないみたいな声。

冷たくて、強引に押し付けられる。





首元に、理佐の顔が埋まる。

『んッ………!』

吐いた息が私の体を跳ねさせた。

その一瞬で、私の腕は理佐の片手に後ろ手にまとめられる。
幹に挟まれて、余計に拘束された気がした。それでも傷はつかないように理佐の腕があった。



何故か、理佐の力には勝てなくて、
理佐の空いた片腕が私の頬に触れた。


首元をねっとりと舐められる。
感じたことの無い感覚に、声が出なかった。
身体だけがびくびくと過剰に反応した。

この先の恐怖に震えているのだろうか、
本能が、死を予感しているのか


理佐の笑った顔は思い出せるのに
さっき見た理佐の表情は真っ黒に塗りつぶされて、思い出せない。



春の夜はまだ冷える。

理佐の舌が通って濡れた部分は、春の空気と理佐の息で感覚が研ぎ澄まされていく。



知らない感覚に、ごちゃごちゃにされた頭に、
辛そうな声が響く。





『………ッ、ねるを、ちょうだい。』




その言葉が届いた瞬間、皮膚が破かれる音がしたーーー




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