An-Regret.
「重」
「………」
結婚指輪だったり、ペアリングだったり。
ふたりの紬の証は、どこかで形として表されることが多い。
それは気持ちだけの繋がりだけじゃなくて目視できる形として残る、その意味合いにどこか心が安心するんだろう。
だからこそ、その形を取らない人間も少なくない。
「……重かったかな、」
「ゲロ重だろ。いや、ねるがその意味を知ってるかは知らないけど」
ただ、形式として繋がった私たちにとって
そしてすぐどこかへ消える前科をもった私には
ねるは、形を求めた。
それは、結婚指輪に憧れる女の子の一面なのかもしれなかった。
けど、私はそれだけ不安にさせてきたことに申し訳なさが先立ってしまって
ねるの願いを叶えることが最優先で、少しでも安心して欲しいと思う。
そして、ねるの思いもあってその形は私に委ねられた。
「まー、いいんじゃない?ねるは喜んだんでしょ?」
「うん、」
「じゃ、おもーいねるちゃんには、りっちゃんの重いプレゼントがあってたんだよ」
「……」
ホントなら逆だけどな、そう言って愛佳はお酒の入ったグラスを傾けた。
『りっちゃん、決めてきたん?』
『うん』
『えへへ、嬉しいー』
ねると、楔を紡いでから1年。
ねるから形にしたいと話をして数ヶ月。私が決めることを委ねられてからも色んなことを悩んで、ほぼほぼ1年になってしまったから
その機を持って渡すと決めた。
この1年のように、これからも共に。
ふたりで。そして、愛佳や土生ちゃんたち、由依や……もちろん、平手とも。
これからも。
ねるが、笑えるように。
そして
『……ブレスレット…?』
『ううん、これはアンクレットだよ』
『可愛い。ありがとう、理佐』
互いに左の足首に付けて
番を示す。
お揃いのそれを、ねるはしばらくニコニコと眺めていた。
ネックレスじゃ、吸血行為に邪魔だ
ブレスレットも良かったけれど、目に見えるところは少し恥ずかしかった
指輪は、結婚指輪みたいで。ねるに、人間がするそれを見せつけるのが嫌だった。人間に戻りたいと、片隅にでも過ぎって欲しくなかった。
……なんて、。
色んな御託を並べて、言い訳をして。
本心が気づかれないようにした。
愛佳にはすぐ、バレてしまったけれど。
『ホントなら逆だけどな』
……自分への意味だと、言えなかった。
繕いも、言い訳も出来なかった。
私は。
ねるに。
幸せや無事を祈るのでもなく、
愛を送るのでもなく
綺麗に着飾って欲しいのでもなく、
足枷を、つけたんだ。