傷つけたくない。
笑顔が見たいって心が求めてる。
抱き締めたいって、体が温もりを求めてる。
本能が、
愛理の全てを欲している。
◇◇◇◇◇◇◇◇
――『舞美ちゃんはどっちを選ぶ?』
早貴と舞美が接点をもったのは、制服を纏わなかった休日。
舞美は後輩と気づかず、早貴は先輩と知っていた。
――舞美ちゃんは愛理ちゃんって子、ホントに好きなんだね
――うん!今度、なっきぃにも紹介するよ。一緒に遊びに行こう。
――それは…愛理ちゃんがどう思うかな…
――え?なんで?
――ううん。舞美ちゃんのそういうまっすぐなとこ、良いと思うよ。
――なに急に!照れちゃうよ!
――……。
――なっきぃ?
――……舞美ちゃんはどっちを選ぶのかな?
――…え?
・・・・・
そんな会話をした翌日、舞美は早貴と学校で顔を合わせる。
昨日誤魔化されてしまった話を、ハッキリと形にされ突きつけられた。
――なに、言ってるの…?
――本気だよ。なんなら証明してから決める?
――駄目だよ、証明なんていらないっ!
本気かどうかなんて目を見れば一目瞭然だった。外で会っていた早貴とは違う。隠していたんだと容易に結論が出せる。
――じゃあ、どうする?舞美ちゃん。
――…っ
弧を描く口元が、愛理と同じ様に舞美の名を呼ぶ。
舞美の心が嫌だと叫び、理性が駄目だと抑え込む。ぐらぐらと、ギシギシと軋んでいく。今にも崩れそうな舞美に、囁きが響いた。
――愛理ちゃんを傷つけたくないなら、私を止めておくべきじゃない…?
何かを貫き一本の軸がたてられる。
貫かれたのは舞美自身の意志。
守られたのは、1つの望み。
――愛理を、傷つけたくない。――
◇◇◇◇◇◇◇◇
掴まれた腕が舞美に痛みを訴える。言葉の続かない舞美に痺れを切らした早貴が力を込めていた。
「あたしは…」
『間違ってるよ』
――間違ってることは自分でも分かってる。でも、これが最善なんだ。
愛理は分かってくれるって期待してた。
『舞美ちゃんだよ、傷ついてるのは。』
――あたしは傷ついたって構わないんだ。愛理に傷ついてほしくないだけだから。
だからそんな顔しないでよ
『……好き、だよ』
――……あたしも好きだよ。愛理のこと、大好きなんだ。
本当は抱き締めたかった。思いっきり、体にいる早貴を消してくれたように、それ以上に、あたしの身体が愛理で染まると思えるくらい…。
でも、そんなことしたらこの細く柔らかい体はどうなってしまうんだろう。
目の前にある白い肌は異色の染まるかもしれない、あたしを包む細い体はきっとすぐ負けてしまう、
一瞬でもよぎれば抱き締めるどころか触れることさえ出来なかった。
全てのことから守りきるなんて出来ないと分かってるから、
だから―
「…あたしが好きなのは
早貴だよ。」
一緒にいることなんて、選べない――