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【概要】
アビスED後のレプリカルークがヴェスペリアの世界へトリップ。ヴェスペリアはEDから半年後ぐらい。
完全オリジナル展開。
オリキャラ主人公設定濃いめ?です(追々主人公の過去とかも書くかもです)。
主にほのぼの。
【タタル渓谷に現れた「ルーク」について】
この連載では、レプリカルークの記憶を持ったアッシュという解釈を前提に話が進んでいきます。
【オリジナル設定】
ヨーデルが皇帝になっている。
フレンは皇帝直々の推薦により騎士団長になっている。
ユーリは基本的にギルドの仕事で世界を飛び回っている。
権力関係は、主人公≧フレン。
【その他】
話は主に主人公視点とルーク視点の両方で進んで行きます。
お相手は作るかも未定。ですがルーク、ひいてはルクティアを救済したいという思いで書き始めたので、ルーク√だけは無いです。
【主人公設定】
『ユウ・名字』
(創作名:ハニカ・アーチ)
性別:女性
年齢:22歳
職業:皇帝補佐兼護衛役
武器:刀
サブにブーツ(打撃性も兼ね備えたもの)
『ルーク・フォン・ファブレ』
性別:男性
年齢:20歳
武器:剣
身長:175cm
服装:原作と変わらず
性格:卑屈なところは相変わらず
根本的な性格は原作通り
*
1.真白の幕開け
黒が支配する空間、ふわふわと浮いているような感覚――
ここは、どこなのだろう。
覚醒しきっていない意識のまま、漠然とそう考えた。
自分では目を開けたつもりだが、この周りの暗さではその理解もくらまされる。
周辺に何があるのか、果てがあるのかすら分からない。
とりあえず限界まで記憶を辿れば、…俺はエルドラントで師匠と戦ってローレライを解放し、冷えきったアッシュを抱えながらローレライと会話していたら意識が持っていかれるような感じがして……恐らくアッシュが“ルーク”としてあっちに残ったのだろう。
そして俺は――
「(死んだ、のか…?)」
心の中で口にした途端、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
つい最近知った、死ぬということ。以来ずっと畏怖してきたそれが今、現実となっている。
けれど死んでいるというのなら何故、形や意識が残っているのだろう。
そんな疑問も浮かんだが、何も考えられない――考えたくないという気持ちが思考のほとんどを支配していた。
「みんなのところへ、戻り、たい」
喉から絞り出すように願った瞬間、真上から白い光が差し込んだ。気のせいかと思ったが、それは依然として消える気配はない。
真っ暗なここでは救いの光にすら見え、自然と手は上に向かって伸ばされていた。
指先から全身へと伝わる温もり。あまりの心地よさに目をつむれば、瞬く間に意識を繋ぐ糸がぷつりと切れた。
(今一度機会を与えよう…かの地で力を持つ者…と…再び……――)
*
2.焔の無いところに煙は立たぬ
「ユウ、少し休憩したらどうだい?」
「遠慮しておきます。もうちょっとだから」
軽く手を上げて断り、再び書類に取り掛かった。目の前の幼馴染みにはやれやれとでも言いたげなため息を贈られたが、聞こえてないことにして。
「大体、フレンもちゃんと仕事してるの?」
「もちろん。ただユウより外での仕事が多いだけだよ」
満面の笑みで言われ、ひくつく口角を必死に抑える。こっちはほぼ一日中城に缶詰だっていうのに…。
――なにせ半年前に起きた世界の変革以来、事務の仕事が立て込んでいるのだ。今は前よりかは落ち着いているが、魔物に襲われる人や魔導器を返せという人、そうそう世界中の人間が受け入れられるわけがないとは思っていたが、それによるトラブルの八割方が騎士団に回ってくるのにはうんざりだ。それでも陛下のほうが何倍も大変なんだからこんな弱音、絶対に吐かないけれど。
小さくため息をついて頭を抱えた。
「失礼します。騎士団長、デイドン砦より救援の要請が出ましたので報告に参りました」
「ああ。分かった」
やっとフレンの部下のお迎えが来たらしく、眉間のシワもようやく消えた。頬杖をついた刹那、こちらの反応をうかがうかのように一べつされ、私は顎で扉を指した。さぁ出ていけと鼻を鳴らしていると、脇に控えていた彼女――ソディアは苦い顔をして私を見た。
「…皇帝補佐もご同行願います」
まさに表情通り、さっきより幾分かトーンの下がった声でそう付け足された。しかし私は思わず不機嫌になるより先に、目を丸くする。
陛下の護衛やよっぽどの大事があった時以外、ほとんど外の任務には出ない私が指名されるのは珍しいことだった。
彼女に問い掛ければ、バツが悪そうに「“第一発見者の要請”だそうです」とだけ答えて部屋を出た。
残されたフレンと私は、図らずもお互いに顔を見合わせてしまった。
*
3.空からの来訪者
それはほんの数十分前の出来事。
クオイの森に向かって真上から射す光が確認されたらしい。だが天気は快晴で、雷はまず有り得ない。何かの爆発の線もあるが、爆音が全く聞こえないのも不自然だ。
そしてそこにたまたま居合わせた第一発見者は、デイドン砦にいる騎士を伝って私とフレンを呼んだ、というわけらしい。
色々突っ込みたい点はあるが、外に出るいい口実が出来たと足取り軽く現場に向かった。
「ユウは遠足気分か?」
「だって、話を聞くからに大した事でもなさそうでしょ。それに隊を率いるわけでもなく、たったの三人だし。ピクニックよピクニック」
「立派な仕事です!」
聞いていないと思っていた彼女に、相変わらず機嫌が悪そうに突っ込みを入れられてしまった。それも魔物を倒しながらというところがさすがフレンの部下なだけはある。
「ソディア…そんなにカッカしてるとその内頭からツノが生えてきちゃうよ?」
「っ! は、生えません!」
そう言うそばから、わざわざ手で頭を確認するとこが可愛らしいというかなんというか。
口を押えて笑いを堪えていれば「あまり僕の部下をからかわないでくれよ」とお叱りをいただいてしまった。
「――着きましたよ」
ここにくるのはいつぶりだろうか。あの旅の時を少し思い出しながら、歩みを進める。そうしてしばらく歩いていると一つの人影が確認できた。
それが“第一発見者”らしく。なぜかあまり近付きたがらないソディアが不思議だったが、人物が確認できた瞬間に解決した。
「お、きたか。ちゃんとユウもいるな」
「…ユーリ」
「そうだろうとは思ったけどね」
相変わらずぽんぽんと頭を叩く手を払って、説明を促した。
「これを見ろ」
「これ…って、男の子じゃない」
ユーリが指差す方向には、赤い髪が特徴的な男の子が横たわっていた。行き倒れでもしてしまったのかと走り寄れば、顔色からしても死んではおらずただ寝ているだけのように見える。
「こいつが落ちてきたんだ」
「落ちて…?」
「さっきの光と一緒にな」
「にわかには信じられない話だが」
「確かに“普通なら”まず有り得ねぇな。
…とまぁそこで、こいつの目が覚めて万が一俺が襲われた時のために二人を呼んだんだよ」
一人じゃ心細いからな、付け足すと同時に片目をパチリと瞑って見せる。
それだけ余裕をかましている時点で、私達の必要性は皆無に等しい。わざわざ厄介ごとに引き込んでくれたわ、とじと目であしらった。
「で、どうするのよこの子は」
「ここじゃいつ魔物に襲われるか分からないしな」
「民間人という可能性も捨てられない以上、今はデイドン砦で保護しよう。その後のことはこの青年の目が覚めてからだ」
言うが早くソディアに保護する部屋の確保に向かわせ、ユーリに男の子をおぶらせる。私も砦までの護衛を命ぜられた(フレンは言ってからすぐ“しまった”って顔をしたけど)。
まだまだ青臭い中で、垣間見える騎士団長としての貫禄に、自分でも目元が緩むのが分かった。
「了解です、騎士団長?」
「へいへい分かったよ、騎士団長」
「……今日はいやに疲れるよ」
*
4.拒めども拒めども
深い眠りの中で夢を見た気がした。
何故か俺は小さい時に戻っていて、また真っ暗な世界の中にいた。
そのまま呆然と座っていた俺に向かって目の前から沢山の白い手が伸びてくる。
どこまでもついてくるそれが怖くて、まだおぼつかない二足歩行で必死に逃げた。
走って走って……もう限界だと諦めかけた瞬間、足を踏み外した感覚と共に目が覚めた。
「っ、はぁ、…夢?」
目に写るのは黒ではなく、石で固められた天井。背中には簡素ながらも布団の柔らかい感触。
予想が外れほっとしたのも束の間、勢いよく起き上がって辺りを確認する。
――どこだよ、ここ…。
壁に鎧やら武器やらが立て掛けられているのを見れば宿、まして屋敷ではないことぐらい判断するのは容易かった。
一気に不安に胸が駆られ、ふらふらする身体を無理矢理引っ張ってベッドから降りた。
やっとの思いでこの部屋唯一の出入り口であるドアのノブに手を掛けると、
「わ、…びっくりした」
「! なっ、」
見知らぬ女の人が視界に飛び込んできた。
その人は俺の顔を見て目を白黒させた後、人当たりの良さそうな笑顔で「おはよう」と言って見せた。呆気に取られて思わず俺も「おはよう」と返してしてしまったが、一体誰だ。
「目が覚めてよかった。色々事情を聞きたいのだけれど、大丈夫?」
「えっ…あ、ハイ」
疑問符を頭に浮かべる俺に対し、女の人は落ち着いた口調で話を進める。
しどろもどろな返事を聞いたが早く、俺の手をひったくってぐいぐい引っ張る。
ほんの少しの時間で分かったこの人のこと。
……見掛けによらず強引で、力が強い。
強制的に歩かされる形で連れて来られたのは、小さな会議室のようなところ。
長方形のテーブルに沿って並べられたイスには、男の人が二人座っていた。
この部屋に足を踏み入れたのと同時にその人達の視線が俺に向かって集まるのが分かり、妙な威圧感に身体が萎縮した。
「こらこら、二人してそんなに睨むんじゃないの。この子に敵意はないから」
「あ…あぁ、ごめん」
「別に睨んじゃいないっての」
女の人の喝のおかげで威圧感は消えたものの、未だに視線が刺さる。
突っ立ったまま冷や汗をかいていると、女の人に金髪の男の人の隣りに座るよう促され、少々ぎこちなく腰をかけた。
「…で、まず君の名前を教えてくれないかな」
向かい側に座った女の人はやはり笑みを浮かべながら、問うた。有無を言わさない雰囲気に、即座にフルネームを名乗った。
金髪の人や女の人の格好といい、軍の人なのだろうか。
「…ルーク、ね」
「じゃあ次、君はどこから来たんだい?」
「……よく覚えてないけど、一番記憶に新しいのはエルドラント、です」
「えるどらんと?」
この場にいる三人の声が見事にハモった。次に訪れたのは静寂と、それぞれの唸る声。
確かに民間の人なら知らなくてもおかしくない。俺は急いで「マルクトのタタル渓谷の近くの島です」と付け足した。
しかしそれが逆に墓穴を掘った。
「マルクト? タタ……島?」
「えーっと、マルクト帝国のタタル渓谷は知ってますか?」
「マルクト、…帝国? 帝国はもちろん知っているけど……マルクトという呼び方は聞いたことがないな」
「! ピ、ピオニー陛下が治める国だ…ですよ」
「皇帝の座にはヨーデルが就いたばっかだろ」
こいつは何を言っているんだ、とでも言いたげな怪訝な視線に耐えきれず口をつぐむ。いくらキムラスカ人でもマルクトの存在を知らないわけがない。
まるでこの人達はオールドラントを知らないとでも言っているような――
違う。
知らないんだ、本当に。
「(じゃあ、ここは、)
この世界の名前は…?」
恐る恐る聞いてみれば三人は不思議そうに顔を見合わせた後、女の人が教えてくれた。
「テルカ・リュミレース」
だ、と。
*
5.絶望の淵
なんでだよ。ローレライは解放した、オールドラントは救えた、アッシュは助けられた……なのに俺は勝手に生かされて、訳の分からない世界に連れて来られて――こんなこと望んじゃいなかった。どうせなら元の世界、皆のいる世界に戻してくれればよかっただろ…!
テーブルの上に乗せた拳に思わず力が籠る。その手には行き場のない憤りを握りしめ、ぶつけどころを必死に探していた。
「ルーク、ルーク…
大丈夫?」
ハッと意識を戻すと、見るからに心配そうに覗き込む瞳が在った。澄んだそこには戸惑いと怒りに醜く歪む自分の表情が映る。
なんで、こんな顔をしている。
なんで、俺は生きている。
なんで、この人はここにいる。
この世界は、なんなんだ。
もはや己の力では整理しきれない“何”が渦を巻き、ごうごうと俺を追い立てる。
いたちごっこのように巡るそれに恐怖し、身体が震える。ただでさえ強く握り締められている拳だが、震えを抑えるため爪が食い込むのではないかというぐらい一層力を加えた。
痛いなんて感覚は今の俺にはない。絶望や憎悪という負の感情に支配され、痛みを感じる隙間なんてこれっぽっちも残されていないのだ。
「っんで、だよ…!」
俯くととうとう視界までもが歪んできた。
限界まで水分が溜まり零れ落ちそうになったのと同じ頃合に、その温もりは不意に俺の憤りを包んだ。
驚愕しながらゆっくりと顔を上げれば、両の手を使って一つの拳を包み込む女の人が目に入る。
柔らかく笑むその人は、“天使”にも“悪魔”にも見えた。
もしもこのような状況でなければ、俺は天使に微笑み返しその手を握り返しただろう。しかし、今の俺は……
「っやめてくれ!」
「! ルーク…っ」
乾いた音が響き渡ったのと同時に、俺は辺りを見向きもせずその部屋を飛び出した。
走っていると様々な人と擦れ違う。同じ人であることには変わりないのに、その格好や雰囲気が今まで見たことも感じたこともないものだと俺は知ってしまった。走ろうと足掻こうと逃れられない事実が追いかけてくる。
どうしようもなく苦しい。
このまま走り続ければ皆のところへ行けるかな、それとも疲れ果ててまたあの黒い世界に戻るのかな。空想にも似たことを考えながら足を動かす。
しばらくは止まるつもりなんてなかったが、あるものを見て足はぴたりと動きを止めた。
――魔物。
また一つ、見慣れたものが見れたと思ったのに。人ばかりでなく、魔物までもが知らない姿をしていた。
おどろおどろしくうごめく、食虫植物の形をした馬鹿でかい魔物。そいつは潔く俺に狙いを定める。確かに見たことのない魔物ではあるが、今までの経験から相当に手強い相手だということが読み取れた。
異様に乾いた口内を意識的に唾液で潤し、それを飲み下す。同じタイミングで背中に下げられた柄に手をかけ、――え?
「ない…!?」
背中に回した手は何故か空を掴む。目で確認してもそこには何もなかった。
焦る俺なんて相手にとっては知ったことではないし、むしろ絶好のチャンスだ。ツルのような触手で、身体を貫かんばかりに鋭く突いてくる。太刀打ちできる術を失った俺は、ひたすら攻撃を避け続ける。これではただの体力戦の上に、さっきまで走っていたこちらには分が悪い。
二度目の終わりか――頭の隅で見え隠れする考え。畏怖していたそれすら、この状況では救いに見える。
きっと避けるのを止めたら、こいつはためらいなくそのツルで俺の真ん中を突き刺すのだろう。
そして、救われるんだ。
忙しく動いていた足をぴたりと止めて、魔物を見据える。予想通り、俺の突拍子もない動きに戸惑いを見せずツルの先端を向けた。それでいいと、目を瞑って時を待つ。間もなく訪れる痛みに構えていた、が。
「っに…やってんの、馬鹿!」
「い゙っ!?」
やってきたのは予想とはだいぶ違う頭部の鈍い痛みと、怒気をふんだんにはらんだ罵声。思わず開けてしまった目に飛び込んできたのは、形のよい眉を力いっぱい中央に寄せる女の人だった。その表情には、初めて会った時のしとやかな印象なんて微塵も残していなかった。
驚きに気を取られながらも、「あの魔物は、」と女の人の向こうに目を向ければそこには二人の男が巧みな剣裁きで敵を翻弄していた。
呆然と立ち尽くす俺の胸に、いやに懐かしく感じる愛剣があてがわれる。しっくりと手に馴染むそれに自然と笑みが零れた。
「私たちのことは斬っちゃダメだからね?」
茶目っ気ある笑顔につられてまた笑む。剣を背中の定位置に携え、いざ行かんと前を見た時だ。
「危ない!」
目の前の人の手を思いきり引いて、剣を一振りした。確かな手応えを感じたのを確認すると、不気味な形をしたそれは断末魔を上げて空気に還る。最期までそれを見送り、ほっと安堵のため息を零した。
次に気付いたのは強く引っ張ってしまった彼女の安否。慌てて後ろを振り向くと、その人はいつか見た柔らかい笑みをたたえていた。てっきり不機嫌になっているかと思っていたが、呆気ないほどに予想は裏切られた。
さらに耳には何故か手を叩く音が響いていた。
「お前、なかなかやるな」
「ああ。ぜひ騎士団に来てほしいぐらいだ」
「それいいじゃない! 今の騎士団は人手が少し足りないし」
「あ、あのー…」
*
アビスED後のレプリカルークがヴェスペリアの世界へトリップ。ヴェスペリアはEDから半年後ぐらい。
完全オリジナル展開。
オリキャラ主人公設定濃いめ?です(追々主人公の過去とかも書くかもです)。
主にほのぼの。
【タタル渓谷に現れた「ルーク」について】
この連載では、レプリカルークの記憶を持ったアッシュという解釈を前提に話が進んでいきます。
【オリジナル設定】
ヨーデルが皇帝になっている。
フレンは皇帝直々の推薦により騎士団長になっている。
ユーリは基本的にギルドの仕事で世界を飛び回っている。
権力関係は、主人公≧フレン。
【その他】
話は主に主人公視点とルーク視点の両方で進んで行きます。
お相手は作るかも未定。ですがルーク、ひいてはルクティアを救済したいという思いで書き始めたので、ルーク√だけは無いです。
【主人公設定】
『ユウ・名字』
(創作名:ハニカ・アーチ)
性別:女性
年齢:22歳
職業:皇帝補佐兼護衛役
武器:刀
サブにブーツ(打撃性も兼ね備えたもの)
『ルーク・フォン・ファブレ』
性別:男性
年齢:20歳
武器:剣
身長:175cm
服装:原作と変わらず
性格:卑屈なところは相変わらず
根本的な性格は原作通り
*
1.真白の幕開け
黒が支配する空間、ふわふわと浮いているような感覚――
ここは、どこなのだろう。
覚醒しきっていない意識のまま、漠然とそう考えた。
自分では目を開けたつもりだが、この周りの暗さではその理解もくらまされる。
周辺に何があるのか、果てがあるのかすら分からない。
とりあえず限界まで記憶を辿れば、…俺はエルドラントで師匠と戦ってローレライを解放し、冷えきったアッシュを抱えながらローレライと会話していたら意識が持っていかれるような感じがして……恐らくアッシュが“ルーク”としてあっちに残ったのだろう。
そして俺は――
「(死んだ、のか…?)」
心の中で口にした途端、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
つい最近知った、死ぬということ。以来ずっと畏怖してきたそれが今、現実となっている。
けれど死んでいるというのなら何故、形や意識が残っているのだろう。
そんな疑問も浮かんだが、何も考えられない――考えたくないという気持ちが思考のほとんどを支配していた。
「みんなのところへ、戻り、たい」
喉から絞り出すように願った瞬間、真上から白い光が差し込んだ。気のせいかと思ったが、それは依然として消える気配はない。
真っ暗なここでは救いの光にすら見え、自然と手は上に向かって伸ばされていた。
指先から全身へと伝わる温もり。あまりの心地よさに目をつむれば、瞬く間に意識を繋ぐ糸がぷつりと切れた。
(今一度機会を与えよう…かの地で力を持つ者…と…再び……――)
*
2.焔の無いところに煙は立たぬ
「ユウ、少し休憩したらどうだい?」
「遠慮しておきます。もうちょっとだから」
軽く手を上げて断り、再び書類に取り掛かった。目の前の幼馴染みにはやれやれとでも言いたげなため息を贈られたが、聞こえてないことにして。
「大体、フレンもちゃんと仕事してるの?」
「もちろん。ただユウより外での仕事が多いだけだよ」
満面の笑みで言われ、ひくつく口角を必死に抑える。こっちはほぼ一日中城に缶詰だっていうのに…。
――なにせ半年前に起きた世界の変革以来、事務の仕事が立て込んでいるのだ。今は前よりかは落ち着いているが、魔物に襲われる人や魔導器を返せという人、そうそう世界中の人間が受け入れられるわけがないとは思っていたが、それによるトラブルの八割方が騎士団に回ってくるのにはうんざりだ。それでも陛下のほうが何倍も大変なんだからこんな弱音、絶対に吐かないけれど。
小さくため息をついて頭を抱えた。
「失礼します。騎士団長、デイドン砦より救援の要請が出ましたので報告に参りました」
「ああ。分かった」
やっとフレンの部下のお迎えが来たらしく、眉間のシワもようやく消えた。頬杖をついた刹那、こちらの反応をうかがうかのように一べつされ、私は顎で扉を指した。さぁ出ていけと鼻を鳴らしていると、脇に控えていた彼女――ソディアは苦い顔をして私を見た。
「…皇帝補佐もご同行願います」
まさに表情通り、さっきより幾分かトーンの下がった声でそう付け足された。しかし私は思わず不機嫌になるより先に、目を丸くする。
陛下の護衛やよっぽどの大事があった時以外、ほとんど外の任務には出ない私が指名されるのは珍しいことだった。
彼女に問い掛ければ、バツが悪そうに「“第一発見者の要請”だそうです」とだけ答えて部屋を出た。
残されたフレンと私は、図らずもお互いに顔を見合わせてしまった。
*
3.空からの来訪者
それはほんの数十分前の出来事。
クオイの森に向かって真上から射す光が確認されたらしい。だが天気は快晴で、雷はまず有り得ない。何かの爆発の線もあるが、爆音が全く聞こえないのも不自然だ。
そしてそこにたまたま居合わせた第一発見者は、デイドン砦にいる騎士を伝って私とフレンを呼んだ、というわけらしい。
色々突っ込みたい点はあるが、外に出るいい口実が出来たと足取り軽く現場に向かった。
「ユウは遠足気分か?」
「だって、話を聞くからに大した事でもなさそうでしょ。それに隊を率いるわけでもなく、たったの三人だし。ピクニックよピクニック」
「立派な仕事です!」
聞いていないと思っていた彼女に、相変わらず機嫌が悪そうに突っ込みを入れられてしまった。それも魔物を倒しながらというところがさすがフレンの部下なだけはある。
「ソディア…そんなにカッカしてるとその内頭からツノが生えてきちゃうよ?」
「っ! は、生えません!」
そう言うそばから、わざわざ手で頭を確認するとこが可愛らしいというかなんというか。
口を押えて笑いを堪えていれば「あまり僕の部下をからかわないでくれよ」とお叱りをいただいてしまった。
「――着きましたよ」
ここにくるのはいつぶりだろうか。あの旅の時を少し思い出しながら、歩みを進める。そうしてしばらく歩いていると一つの人影が確認できた。
それが“第一発見者”らしく。なぜかあまり近付きたがらないソディアが不思議だったが、人物が確認できた瞬間に解決した。
「お、きたか。ちゃんとユウもいるな」
「…ユーリ」
「そうだろうとは思ったけどね」
相変わらずぽんぽんと頭を叩く手を払って、説明を促した。
「これを見ろ」
「これ…って、男の子じゃない」
ユーリが指差す方向には、赤い髪が特徴的な男の子が横たわっていた。行き倒れでもしてしまったのかと走り寄れば、顔色からしても死んではおらずただ寝ているだけのように見える。
「こいつが落ちてきたんだ」
「落ちて…?」
「さっきの光と一緒にな」
「にわかには信じられない話だが」
「確かに“普通なら”まず有り得ねぇな。
…とまぁそこで、こいつの目が覚めて万が一俺が襲われた時のために二人を呼んだんだよ」
一人じゃ心細いからな、付け足すと同時に片目をパチリと瞑って見せる。
それだけ余裕をかましている時点で、私達の必要性は皆無に等しい。わざわざ厄介ごとに引き込んでくれたわ、とじと目であしらった。
「で、どうするのよこの子は」
「ここじゃいつ魔物に襲われるか分からないしな」
「民間人という可能性も捨てられない以上、今はデイドン砦で保護しよう。その後のことはこの青年の目が覚めてからだ」
言うが早くソディアに保護する部屋の確保に向かわせ、ユーリに男の子をおぶらせる。私も砦までの護衛を命ぜられた(フレンは言ってからすぐ“しまった”って顔をしたけど)。
まだまだ青臭い中で、垣間見える騎士団長としての貫禄に、自分でも目元が緩むのが分かった。
「了解です、騎士団長?」
「へいへい分かったよ、騎士団長」
「……今日はいやに疲れるよ」
*
4.拒めども拒めども
深い眠りの中で夢を見た気がした。
何故か俺は小さい時に戻っていて、また真っ暗な世界の中にいた。
そのまま呆然と座っていた俺に向かって目の前から沢山の白い手が伸びてくる。
どこまでもついてくるそれが怖くて、まだおぼつかない二足歩行で必死に逃げた。
走って走って……もう限界だと諦めかけた瞬間、足を踏み外した感覚と共に目が覚めた。
「っ、はぁ、…夢?」
目に写るのは黒ではなく、石で固められた天井。背中には簡素ながらも布団の柔らかい感触。
予想が外れほっとしたのも束の間、勢いよく起き上がって辺りを確認する。
――どこだよ、ここ…。
壁に鎧やら武器やらが立て掛けられているのを見れば宿、まして屋敷ではないことぐらい判断するのは容易かった。
一気に不安に胸が駆られ、ふらふらする身体を無理矢理引っ張ってベッドから降りた。
やっとの思いでこの部屋唯一の出入り口であるドアのノブに手を掛けると、
「わ、…びっくりした」
「! なっ、」
見知らぬ女の人が視界に飛び込んできた。
その人は俺の顔を見て目を白黒させた後、人当たりの良さそうな笑顔で「おはよう」と言って見せた。呆気に取られて思わず俺も「おはよう」と返してしてしまったが、一体誰だ。
「目が覚めてよかった。色々事情を聞きたいのだけれど、大丈夫?」
「えっ…あ、ハイ」
疑問符を頭に浮かべる俺に対し、女の人は落ち着いた口調で話を進める。
しどろもどろな返事を聞いたが早く、俺の手をひったくってぐいぐい引っ張る。
ほんの少しの時間で分かったこの人のこと。
……見掛けによらず強引で、力が強い。
強制的に歩かされる形で連れて来られたのは、小さな会議室のようなところ。
長方形のテーブルに沿って並べられたイスには、男の人が二人座っていた。
この部屋に足を踏み入れたのと同時にその人達の視線が俺に向かって集まるのが分かり、妙な威圧感に身体が萎縮した。
「こらこら、二人してそんなに睨むんじゃないの。この子に敵意はないから」
「あ…あぁ、ごめん」
「別に睨んじゃいないっての」
女の人の喝のおかげで威圧感は消えたものの、未だに視線が刺さる。
突っ立ったまま冷や汗をかいていると、女の人に金髪の男の人の隣りに座るよう促され、少々ぎこちなく腰をかけた。
「…で、まず君の名前を教えてくれないかな」
向かい側に座った女の人はやはり笑みを浮かべながら、問うた。有無を言わさない雰囲気に、即座にフルネームを名乗った。
金髪の人や女の人の格好といい、軍の人なのだろうか。
「…ルーク、ね」
「じゃあ次、君はどこから来たんだい?」
「……よく覚えてないけど、一番記憶に新しいのはエルドラント、です」
「えるどらんと?」
この場にいる三人の声が見事にハモった。次に訪れたのは静寂と、それぞれの唸る声。
確かに民間の人なら知らなくてもおかしくない。俺は急いで「マルクトのタタル渓谷の近くの島です」と付け足した。
しかしそれが逆に墓穴を掘った。
「マルクト? タタ……島?」
「えーっと、マルクト帝国のタタル渓谷は知ってますか?」
「マルクト、…帝国? 帝国はもちろん知っているけど……マルクトという呼び方は聞いたことがないな」
「! ピ、ピオニー陛下が治める国だ…ですよ」
「皇帝の座にはヨーデルが就いたばっかだろ」
こいつは何を言っているんだ、とでも言いたげな怪訝な視線に耐えきれず口をつぐむ。いくらキムラスカ人でもマルクトの存在を知らないわけがない。
まるでこの人達はオールドラントを知らないとでも言っているような――
違う。
知らないんだ、本当に。
「(じゃあ、ここは、)
この世界の名前は…?」
恐る恐る聞いてみれば三人は不思議そうに顔を見合わせた後、女の人が教えてくれた。
「テルカ・リュミレース」
だ、と。
*
5.絶望の淵
なんでだよ。ローレライは解放した、オールドラントは救えた、アッシュは助けられた……なのに俺は勝手に生かされて、訳の分からない世界に連れて来られて――こんなこと望んじゃいなかった。どうせなら元の世界、皆のいる世界に戻してくれればよかっただろ…!
テーブルの上に乗せた拳に思わず力が籠る。その手には行き場のない憤りを握りしめ、ぶつけどころを必死に探していた。
「ルーク、ルーク…
大丈夫?」
ハッと意識を戻すと、見るからに心配そうに覗き込む瞳が在った。澄んだそこには戸惑いと怒りに醜く歪む自分の表情が映る。
なんで、こんな顔をしている。
なんで、俺は生きている。
なんで、この人はここにいる。
この世界は、なんなんだ。
もはや己の力では整理しきれない“何”が渦を巻き、ごうごうと俺を追い立てる。
いたちごっこのように巡るそれに恐怖し、身体が震える。ただでさえ強く握り締められている拳だが、震えを抑えるため爪が食い込むのではないかというぐらい一層力を加えた。
痛いなんて感覚は今の俺にはない。絶望や憎悪という負の感情に支配され、痛みを感じる隙間なんてこれっぽっちも残されていないのだ。
「っんで、だよ…!」
俯くととうとう視界までもが歪んできた。
限界まで水分が溜まり零れ落ちそうになったのと同じ頃合に、その温もりは不意に俺の憤りを包んだ。
驚愕しながらゆっくりと顔を上げれば、両の手を使って一つの拳を包み込む女の人が目に入る。
柔らかく笑むその人は、“天使”にも“悪魔”にも見えた。
もしもこのような状況でなければ、俺は天使に微笑み返しその手を握り返しただろう。しかし、今の俺は……
「っやめてくれ!」
「! ルーク…っ」
乾いた音が響き渡ったのと同時に、俺は辺りを見向きもせずその部屋を飛び出した。
走っていると様々な人と擦れ違う。同じ人であることには変わりないのに、その格好や雰囲気が今まで見たことも感じたこともないものだと俺は知ってしまった。走ろうと足掻こうと逃れられない事実が追いかけてくる。
どうしようもなく苦しい。
このまま走り続ければ皆のところへ行けるかな、それとも疲れ果ててまたあの黒い世界に戻るのかな。空想にも似たことを考えながら足を動かす。
しばらくは止まるつもりなんてなかったが、あるものを見て足はぴたりと動きを止めた。
――魔物。
また一つ、見慣れたものが見れたと思ったのに。人ばかりでなく、魔物までもが知らない姿をしていた。
おどろおどろしくうごめく、食虫植物の形をした馬鹿でかい魔物。そいつは潔く俺に狙いを定める。確かに見たことのない魔物ではあるが、今までの経験から相当に手強い相手だということが読み取れた。
異様に乾いた口内を意識的に唾液で潤し、それを飲み下す。同じタイミングで背中に下げられた柄に手をかけ、――え?
「ない…!?」
背中に回した手は何故か空を掴む。目で確認してもそこには何もなかった。
焦る俺なんて相手にとっては知ったことではないし、むしろ絶好のチャンスだ。ツルのような触手で、身体を貫かんばかりに鋭く突いてくる。太刀打ちできる術を失った俺は、ひたすら攻撃を避け続ける。これではただの体力戦の上に、さっきまで走っていたこちらには分が悪い。
二度目の終わりか――頭の隅で見え隠れする考え。畏怖していたそれすら、この状況では救いに見える。
きっと避けるのを止めたら、こいつはためらいなくそのツルで俺の真ん中を突き刺すのだろう。
そして、救われるんだ。
忙しく動いていた足をぴたりと止めて、魔物を見据える。予想通り、俺の突拍子もない動きに戸惑いを見せずツルの先端を向けた。それでいいと、目を瞑って時を待つ。間もなく訪れる痛みに構えていた、が。
「っに…やってんの、馬鹿!」
「い゙っ!?」
やってきたのは予想とはだいぶ違う頭部の鈍い痛みと、怒気をふんだんにはらんだ罵声。思わず開けてしまった目に飛び込んできたのは、形のよい眉を力いっぱい中央に寄せる女の人だった。その表情には、初めて会った時のしとやかな印象なんて微塵も残していなかった。
驚きに気を取られながらも、「あの魔物は、」と女の人の向こうに目を向ければそこには二人の男が巧みな剣裁きで敵を翻弄していた。
呆然と立ち尽くす俺の胸に、いやに懐かしく感じる愛剣があてがわれる。しっくりと手に馴染むそれに自然と笑みが零れた。
「私たちのことは斬っちゃダメだからね?」
茶目っ気ある笑顔につられてまた笑む。剣を背中の定位置に携え、いざ行かんと前を見た時だ。
「危ない!」
目の前の人の手を思いきり引いて、剣を一振りした。確かな手応えを感じたのを確認すると、不気味な形をしたそれは断末魔を上げて空気に還る。最期までそれを見送り、ほっと安堵のため息を零した。
次に気付いたのは強く引っ張ってしまった彼女の安否。慌てて後ろを振り向くと、その人はいつか見た柔らかい笑みをたたえていた。てっきり不機嫌になっているかと思っていたが、呆気ないほどに予想は裏切られた。
さらに耳には何故か手を叩く音が響いていた。
「お前、なかなかやるな」
「ああ。ぜひ騎士団に来てほしいぐらいだ」
「それいいじゃない! 今の騎士団は人手が少し足りないし」
「あ、あのー…」
*
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