【hkok】小さな心は道連れに
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「――どう思う」
沈黙を破ったのは重く響くような声。その顔は灯に照らされ、男の目鼻立ち整った顔を強調しているようだ。
投げかけられた言葉を皮切りに各々は唸るなり、目を伏せるなり、あるいは傍観を決め込む者もいる。
「何もしてないって言ってるんだし、解放してもいいんじゃねぇの?」
後ろ手に手をつき、半ば投げやり気味に周囲に提案を持ちかける。この中では一番年若いのではと思われる人物。内容に加えその男の態度も相まってか、すぐさま反論の声が上がる。
「本人はそう言っててもよ、あんな風変わりな格好じゃ周りに“自分は怪しい者です”って言って回ってるようなもんだろ」
重厚な筋肉に包まれた腕を組み、苦い顔で正論を述べる。投げやりに言葉を放った男もまた、反り返った背中を正して考え直す。二人の意見もふまえた上で、再び沈黙が部屋を埋める。
誰もが頭を抱えしばらくは抜け出せそうにない沈黙を破ったのは、この場に不釣り合いな明るい声色だった。
「多かれ少なかれ疑いがあるなら、さっさと殺しちゃったほうがいいんじゃないですか?」
さも悪びれのないように言う男に、周囲はため息をこぼすなり眉間に眉を寄せた。しかし反論の声だけは上がらず、その男の意見も間違いではないことがうかがえる。
再び沈黙に入る場に、今まで黙していた男がとうとう口を開いた。
「そうだな…」
部屋の人々の視線は迷うことなくその一点に集中する。腕を組んで考え込む姿がしばらく見られた後、この場にいる皆の顔を一通り眺めた。その表情からは自らの決断に腹を決めたということが分かる。
「実害を被ったとの声は無いのだろう? ならば、このまま帰そうじゃないか」
確かに不思議な格好や言動はあるが…、と付け足して皆の意見をうかがうように再び視線を辺りに遣った。首を横に振る者はおらず、いても相変わらずの人の好さにため息をこぼすぐらいだ。
「おそれながら局長、一つ提案してもよろしいでしょうか」
「おお、なんだ?」
今まで黙り込んでいた人物に、局長と呼ばれた人物は少し目を丸くした。
「相手の意図が読めない以上、野放しにするのは危険かと。
故に、監視をつけてはいかがでしょうか」
敵の意図を探るには、泳がせるのも一つの手だ。しかも何も相手の手がかりが掴めていないこの状況では、一番の有効手段と言えるだろう。
誰からも反対の声は発せられず、「そうしよう」という局長の声でその場はお開きとなった。
『ひとつの審判』
――現れたのは、ひとつの道。