【hkok】せぶんてぃーん・ぶるーす
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お呼ばれされた原田さんの部屋は、予想と違って綺麗に整頓されていた。
男の部屋は極端に何もないか、散らかりまくっているかのどっちかのイメージがあったが、原田さんは恐らくその中間。意外と家事が得意だったりするのかもしれない。
失礼ながらも辺りを見回していれば、既に先生コンビは晩酌を始めていた。リビングの入口に突っ立ったままだった私も、原田さんに隣りの床を叩かれたのでそこに腰を落ち着かせた。
「っかぁー! やっぱ酒は清酒に限るな!」
「新八、あんま飲み過ぎんじゃねぇぞ。明日も出勤なんだからよ」
忠告を聞いたか聞いてないか次々と酒を平らげていく永倉さん、その様子に苦笑しながら銚子を傾ける原田さん。
対する私は指、ならぬ割きイカをくわえて上機嫌な二人を眺めていた。
本来なら私も輪に混じれるというのに、これではまさにおあずけ状態である。若返るのは女として嬉しいことではあるが、まさか社会人としての楽しみまで奪われるとは思わなんだ。
「どうした? さっきっから飲みもんが減ってねぇぞ」
「そんなことないですよ。
…それに、お二人の飲みっぷりを見てるだけでお腹いっぱいですし」
じとりと、皮肉をちらつかせた目で原田さんを見やる。どうせほろ酔い気分な相手では笑って流されるだけだろうけど。分かりきっている展開に半ば自棄になってコップのウーロン茶を一息にあおった。
「なら… 名字も呑んでみるか?」
「! えっ」
この展開は想定外だ。
「ほらよ」と言って原田さんが透明の液体の入ったお猪口を差し出す。私はごくりと喉を鳴らし、まるで恵みの雨だと言わんばかりに手を伸ばす、と。
「なーんてな。まだお前にゃ早ぇよ」
――そんな満面の笑みを私に向ける頃には、なんてこったい恵みの酒は原田さんのお腹に収まってしまった。
頂戴する気満々だった私はしばらく手を出したまま呆然とした後、思いっきり顔をしかめた。からかったな、この人!
「原田さん…!」
「女がんな顔するもんじゃねぇぞ?」
「んな顔、にさせたのはどこの誰だと思ってるんでしょうか」
「俺だな」
笑い飛ばす彼は本当に悪いと思っているのだろうか。私は何だか睨んでいるのもバカバカしくなって、空のコップにお呼びでないウーロン茶を注ぐ。ウーロン茶くん、せめて君はウーロンハイぐらいにレベルアップしてはくれないだろうか。
「ユウ」
「何ですか」
声だけで返事をすれば、焦れた声色で「ちょっと顔貸せ」とヤンキーのような台詞を吐かれた。私は先ほどのこともあって気が進まなかったが、言われた通りに嫌々ながら顔を向ける。
「は…、!?」
――いつの間にこんなに近くに来ていたのだろうか。
自分から約二十センチの距離に、それはそれは端整な相手の顔があり、ぴたりと全ての動作が止まる。「ちょ、ウーロン茶溢れてんぞ!」という慌てた永倉さんの声もどこか遠くに聞こえた。
そうして石像の如く固まる私を呼び戻したのは、口に広がる甘味だった。
「ん、…?」
「どうだ、美味いか?」
口にスプーンを突っ込まれたまま咀嚼をする。数回も要さずすぐに溶けて消えたそれは、
「これ…プリンですか?」
「当たり。
で、お味はいかがでしたか?」
お嬢さん、と続ける原田さんに倣って私も「とっても美味しかったです」と恭しく返した。すると極上の笑みを真っ向から食らってしまったものだから、僅かに残っていた怒りもどこかへ吹っ飛び頬の筋肉が緩んだ。
「そりゃよかった。ちと固すぎたかと思ったんだけどよ、」
そう言って照れくさそうに頭を掻く仕草も画になってかっこいい――じゃない。待って、待って下さい。
「もしかしてこれ…」
「お、名字も食ったのか! 結構イケるよな、左之のプリン」
「よせよ、新八。おだてたって金は貸さねぇぞ」
「んな堅いこと言うなって!」
豪快に笑い合っている二人に、私の思考は取り残される。
原田さんが、プリン?
偏見はもちろんよろしくないが、それにしたってびっくりすぎるだろう。
あの槍を振り回してこなくそ言ってる原田さんが、喧嘩でも女でも口より先に手が出ちゃう原田さんが。
これが俗に言うスイーツ男子ってやつ? いや主夫か?
兎にも角にもあまりのギャップに私はしばらく頭を抱えることになったのだった。
『その趣味、衝撃絶大』
「他にもレパートリーあるんですか?」
「ああ。基本的な料理と、菓子なら一通り作れるぜ」
「!(ママがいる…!)」
男の部屋は極端に何もないか、散らかりまくっているかのどっちかのイメージがあったが、原田さんは恐らくその中間。意外と家事が得意だったりするのかもしれない。
失礼ながらも辺りを見回していれば、既に先生コンビは晩酌を始めていた。リビングの入口に突っ立ったままだった私も、原田さんに隣りの床を叩かれたのでそこに腰を落ち着かせた。
「っかぁー! やっぱ酒は清酒に限るな!」
「新八、あんま飲み過ぎんじゃねぇぞ。明日も出勤なんだからよ」
忠告を聞いたか聞いてないか次々と酒を平らげていく永倉さん、その様子に苦笑しながら銚子を傾ける原田さん。
対する私は指、ならぬ割きイカをくわえて上機嫌な二人を眺めていた。
本来なら私も輪に混じれるというのに、これではまさにおあずけ状態である。若返るのは女として嬉しいことではあるが、まさか社会人としての楽しみまで奪われるとは思わなんだ。
「どうした? さっきっから飲みもんが減ってねぇぞ」
「そんなことないですよ。
…それに、お二人の飲みっぷりを見てるだけでお腹いっぱいですし」
じとりと、皮肉をちらつかせた目で原田さんを見やる。どうせほろ酔い気分な相手では笑って流されるだけだろうけど。分かりきっている展開に半ば自棄になってコップのウーロン茶を一息にあおった。
「なら… 名字も呑んでみるか?」
「! えっ」
この展開は想定外だ。
「ほらよ」と言って原田さんが透明の液体の入ったお猪口を差し出す。私はごくりと喉を鳴らし、まるで恵みの雨だと言わんばかりに手を伸ばす、と。
「なーんてな。まだお前にゃ早ぇよ」
――そんな満面の笑みを私に向ける頃には、なんてこったい恵みの酒は原田さんのお腹に収まってしまった。
頂戴する気満々だった私はしばらく手を出したまま呆然とした後、思いっきり顔をしかめた。からかったな、この人!
「原田さん…!」
「女がんな顔するもんじゃねぇぞ?」
「んな顔、にさせたのはどこの誰だと思ってるんでしょうか」
「俺だな」
笑い飛ばす彼は本当に悪いと思っているのだろうか。私は何だか睨んでいるのもバカバカしくなって、空のコップにお呼びでないウーロン茶を注ぐ。ウーロン茶くん、せめて君はウーロンハイぐらいにレベルアップしてはくれないだろうか。
「ユウ」
「何ですか」
声だけで返事をすれば、焦れた声色で「ちょっと顔貸せ」とヤンキーのような台詞を吐かれた。私は先ほどのこともあって気が進まなかったが、言われた通りに嫌々ながら顔を向ける。
「は…、!?」
――いつの間にこんなに近くに来ていたのだろうか。
自分から約二十センチの距離に、それはそれは端整な相手の顔があり、ぴたりと全ての動作が止まる。「ちょ、ウーロン茶溢れてんぞ!」という慌てた永倉さんの声もどこか遠くに聞こえた。
そうして石像の如く固まる私を呼び戻したのは、口に広がる甘味だった。
「ん、…?」
「どうだ、美味いか?」
口にスプーンを突っ込まれたまま咀嚼をする。数回も要さずすぐに溶けて消えたそれは、
「これ…プリンですか?」
「当たり。
で、お味はいかがでしたか?」
お嬢さん、と続ける原田さんに倣って私も「とっても美味しかったです」と恭しく返した。すると極上の笑みを真っ向から食らってしまったものだから、僅かに残っていた怒りもどこかへ吹っ飛び頬の筋肉が緩んだ。
「そりゃよかった。ちと固すぎたかと思ったんだけどよ、」
そう言って照れくさそうに頭を掻く仕草も画になってかっこいい――じゃない。待って、待って下さい。
「もしかしてこれ…」
「お、名字も食ったのか! 結構イケるよな、左之のプリン」
「よせよ、新八。おだてたって金は貸さねぇぞ」
「んな堅いこと言うなって!」
豪快に笑い合っている二人に、私の思考は取り残される。
原田さんが、プリン?
偏見はもちろんよろしくないが、それにしたってびっくりすぎるだろう。
あの槍を振り回してこなくそ言ってる原田さんが、喧嘩でも女でも口より先に手が出ちゃう原田さんが。
これが俗に言うスイーツ男子ってやつ? いや主夫か?
兎にも角にもあまりのギャップに私はしばらく頭を抱えることになったのだった。
『その趣味、衝撃絶大』
「他にもレパートリーあるんですか?」
「ああ。基本的な料理と、菓子なら一通り作れるぜ」
「!(ママがいる…!)」