【hkok】せぶんてぃーん・ぶるーす
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一週間の中で誰もが浮き足立つ日、日曜日。
だらだらと過ごしたい今日であるが、バイト三昧な私は朝から出勤だった。
少し予定より寝過ごしてしまったこともあり慌ただしく駆け回っていると、インターホンが部屋に響いた。
「この忙しい時に…」
若干苛立ちながらモニターのスイッチを押せば、一人のおばあちゃんがそこに立っていた。その姿に十分な見覚えがある私は、大慌てで玄関の扉を開いた。
「――管理人さん!」
「ああ、ユウちゃん。朝からすまないねぇ」
この口に手を添えて上品に笑う方こそ、マンションの管理人さん。私が一人暮らしというのもあって、何かとよくしてくれるとても気のいいおばあちゃんだ。
自ずと笑顔になりながら「何かありましたか?」と問い掛ければ、管理人さんは途端に気まずそうに私を見た。
「ユウちゃん、今月の家賃まだ払ってないだろう?」
「あ、……はい」
「事情もあるしねぇ…あんまり催促するのも可哀相なんだけど、ご両親に取り合ってみてくれないかい?」
「わかりました。気をつかっていただいてすみません…」
「いいんだよ。何かあったら言いにおいで」
「ありがとうございます」
頭を下げれば管理人さんは去っていった。姿が見えなくなったのを確認してから扉を閉めると、自然とため息が漏れる。
この立派な部屋の家賃が高校生のバイトの稼ぎでどうにかなるかなんて、火を見るより明らかだ。
トリップってもっとはっちゃけていいものだと思っていたのだが、あまりに現実的すぎる生活にがっくり肩を落とした。
「(ここで悩んでいたって仕方ない。バイトだ、バイト)」
「お先失礼しまーす」
バイトを終え外に出れば、もう鮮やかな緋色の夕日が辺りを染めていた。しかしそんな綺麗な景色には目もくれず、意識は早く帰って身体を休めたいという考えでいっぱいだった。
疲れているからかいやに長く感じた家路もようやくマンションに着き、ポストを確認する。私宛に手紙を出す人がこの世界にいるわけないけれど、一応。
小さな扉を開けば、そこにはやけに分厚い白い封筒が置いてあった。誤配かと思われたがそれの表にはパソコンで打ったような文字でくっきりと私の名前と住所が綴られていた。けれどもその裏には送り主についての情報が全く書いていない。
恐る恐る封筒を開けると、中には見たこともないぐらいの紙の束――諭〇様の札束が入っていた。
「嘘…っ!?」
いたずらにしては随分質が悪い。危うく落としそうになったそれを持ち直してよく見ると一枚の手紙が入っていた。
手紙を開くとやはり機械的な文字で、『これは貴女のものです。どうぞお役立て下さい。』とだけ書かれていた。丁度困っていた時にくるあたり、これもトリップの特権というやつなのだろうか。
いくらそうでも誰からか分からない以上、あまり気が気でない。かと言って今頼れるのはこれぐらいしかない。
ぐるぐると二つの考えをループさせていると、突然叫び声が聞こえた。
「うわっ、なんだそりゃあ!?」
「! え…」
振り向けば、すぐ後ろから私の手元を覗き込む、永倉さんがいた。心なしかその瞳は輝いているように見える。
「高校生が持つ金額じゃねぇよな。よし、ここは俺が」
「おら、新八。仮にも教師だろ、生徒にたかるなっての」
さらに後ろから永倉さんの頭を叩いたのは、原田さん。
言い合う二人を呆然と眺めているとふと原田さんがこちらに向き直った。
「親からの仕送りか?」
「あ、…はい。そんなとこです」
「そうか。大事につかえよ」
ぽんぽんと言い聞かせるように頭を軽く叩かれる。以前もやられたが、彼の癖なのだろうか。
でもひどく安心する感じがした。
「そうだ、なんならユウちゃんも来るか?」
言葉に主語が見当たらず首を傾げれば、永倉さんが指で輪を作り口に持っていく仕草をした。理解した私は思わず頷きかけるが、「おいおい、ユウにはまだ早ぇだろ」という原田さんの言葉になんとか止まった。
そういえば、今の私は高校生なんだった。
久々に味わいたかったし、何よりこの人たちと呑めたらきっと楽しいのに。
よっぽど私が落ち込んでいるように見えたのか、原田さんは諦めたようなため息を吐くと、
「ま、呑まなけりゃ問題ねぇだろ。…ユウも来るか?」
と、やはり私の頭に手を置いて言って下さった。
『彼女の盲点』
「っはい!(やったー! 酒だ酒だー!)」
「……そりゃ反則だろうよ」
「おい左之! 赤くなってねぇで早く行くぞ!」
だらだらと過ごしたい今日であるが、バイト三昧な私は朝から出勤だった。
少し予定より寝過ごしてしまったこともあり慌ただしく駆け回っていると、インターホンが部屋に響いた。
「この忙しい時に…」
若干苛立ちながらモニターのスイッチを押せば、一人のおばあちゃんがそこに立っていた。その姿に十分な見覚えがある私は、大慌てで玄関の扉を開いた。
「――管理人さん!」
「ああ、ユウちゃん。朝からすまないねぇ」
この口に手を添えて上品に笑う方こそ、マンションの管理人さん。私が一人暮らしというのもあって、何かとよくしてくれるとても気のいいおばあちゃんだ。
自ずと笑顔になりながら「何かありましたか?」と問い掛ければ、管理人さんは途端に気まずそうに私を見た。
「ユウちゃん、今月の家賃まだ払ってないだろう?」
「あ、……はい」
「事情もあるしねぇ…あんまり催促するのも可哀相なんだけど、ご両親に取り合ってみてくれないかい?」
「わかりました。気をつかっていただいてすみません…」
「いいんだよ。何かあったら言いにおいで」
「ありがとうございます」
頭を下げれば管理人さんは去っていった。姿が見えなくなったのを確認してから扉を閉めると、自然とため息が漏れる。
この立派な部屋の家賃が高校生のバイトの稼ぎでどうにかなるかなんて、火を見るより明らかだ。
トリップってもっとはっちゃけていいものだと思っていたのだが、あまりに現実的すぎる生活にがっくり肩を落とした。
「(ここで悩んでいたって仕方ない。バイトだ、バイト)」
「お先失礼しまーす」
バイトを終え外に出れば、もう鮮やかな緋色の夕日が辺りを染めていた。しかしそんな綺麗な景色には目もくれず、意識は早く帰って身体を休めたいという考えでいっぱいだった。
疲れているからかいやに長く感じた家路もようやくマンションに着き、ポストを確認する。私宛に手紙を出す人がこの世界にいるわけないけれど、一応。
小さな扉を開けば、そこにはやけに分厚い白い封筒が置いてあった。誤配かと思われたがそれの表にはパソコンで打ったような文字でくっきりと私の名前と住所が綴られていた。けれどもその裏には送り主についての情報が全く書いていない。
恐る恐る封筒を開けると、中には見たこともないぐらいの紙の束――諭〇様の札束が入っていた。
「嘘…っ!?」
いたずらにしては随分質が悪い。危うく落としそうになったそれを持ち直してよく見ると一枚の手紙が入っていた。
手紙を開くとやはり機械的な文字で、『これは貴女のものです。どうぞお役立て下さい。』とだけ書かれていた。丁度困っていた時にくるあたり、これもトリップの特権というやつなのだろうか。
いくらそうでも誰からか分からない以上、あまり気が気でない。かと言って今頼れるのはこれぐらいしかない。
ぐるぐると二つの考えをループさせていると、突然叫び声が聞こえた。
「うわっ、なんだそりゃあ!?」
「! え…」
振り向けば、すぐ後ろから私の手元を覗き込む、永倉さんがいた。心なしかその瞳は輝いているように見える。
「高校生が持つ金額じゃねぇよな。よし、ここは俺が」
「おら、新八。仮にも教師だろ、生徒にたかるなっての」
さらに後ろから永倉さんの頭を叩いたのは、原田さん。
言い合う二人を呆然と眺めているとふと原田さんがこちらに向き直った。
「親からの仕送りか?」
「あ、…はい。そんなとこです」
「そうか。大事につかえよ」
ぽんぽんと言い聞かせるように頭を軽く叩かれる。以前もやられたが、彼の癖なのだろうか。
でもひどく安心する感じがした。
「そうだ、なんならユウちゃんも来るか?」
言葉に主語が見当たらず首を傾げれば、永倉さんが指で輪を作り口に持っていく仕草をした。理解した私は思わず頷きかけるが、「おいおい、ユウにはまだ早ぇだろ」という原田さんの言葉になんとか止まった。
そういえば、今の私は高校生なんだった。
久々に味わいたかったし、何よりこの人たちと呑めたらきっと楽しいのに。
よっぽど私が落ち込んでいるように見えたのか、原田さんは諦めたようなため息を吐くと、
「ま、呑まなけりゃ問題ねぇだろ。…ユウも来るか?」
と、やはり私の頭に手を置いて言って下さった。
『彼女の盲点』
「っはい!(やったー! 酒だ酒だー!)」
「……そりゃ反則だろうよ」
「おい左之! 赤くなってねぇで早く行くぞ!」