【hkok】せぶんてぃーん・ぶるーす
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桜もすっかり散って、青々とした葉を出し始めた頃。
いいのか悪いのか、私はすっかり学園の生活に馴染んでいた。やはり元の生活には戻れないが、バイトも無事食品工場のバイトに受かり、生活はなんとか凌げていた。
今日もこれからバイトだ。帰りのSHRを終えるとダッシュで廊下を駆け抜ける。こんなとこ先生や風紀委員に見つかったらただじゃ済まないが、時間が押している今は気にしている場合ではなかった。
「(よし、まだ間に合――)っ!」
携帯を確認しているほんの僅かな間、目を離している隙に何かにぶつかった。感触からするに恐らく人間で、走った勢いも相俟って後ろに大きくよろめく身体。衝撃を前にギュッと強く目をつむれば、待っていた痛みは来ず代わりに右腕を掴まれた感覚が襲った。
「この俺に体当たりとは……勇ましい女もいたものだ」
恐る恐る目を開ければ、何故か男の顔がドアップで視界に飛び込んで来た。反射的に後退りしようとするも、掴まれた右腕に力を込められそれは叶わない。
果ては掴んでいる手とは反対の手で顎に手を掛けられる。さっきよりいくらか冷静になった頭で考えるに……この特徴的な喋り方、いやに妖艶な立ち振る舞いをなさる方は、
「風間、彼女が怯えています」
「へぇー、アイツ以外に女なんていたんだな」
目だけで横を確認すれば、ゴツい体型に厳つい顔をした男と、ウェーブがかかった長髪に色黒の男がいた。
「……我が妻ほどではないな」
そして、間違いない――この人は“風間千景”だ。
満足そうに彼は鼻で笑うと、私はやっと解放された。
ほうと息を吐いてこのまま立ち去ろうと思ったが、ぶつかったのは私だしどんな形であれ助けられたのは事実だ。
「あの、…ありがとうございました」
下げていた頭を、なかなか反応が返ってこないので上げれば、風間さんは品定めでもするような目付きでこちらを見ていた。
「……ほう。俺に惚れたか」
「何でそうなるんですか」
「ふっ…照れるな。仕方がない、第二候補ぐらいになら入れてやらないこともないぞ」
「……」
呆れてものも言えない、とはまさにこのこと。自分の都合のいいほうに思考が進んでいく彼を白い目で見ていると、脇の不知火さんと天霧さんから同情の視線を受ける。助けてはくれないらしい。
「俺と話がしたければいつでも生徒会室に来るといい。…存分にもてなしてやろう」
再び顎に手を掛けられ、息がかかる程の距離でそう囁かれた。
千鶴だけでなく私にまで色目を使うとは、よっぽどこの人は女に飢えているのだろうか。
満足げに立ち去る後ろ姿を見送って携帯を見ると、もう時間まで三十分を映しており、私は大慌てでバイト先へ向かった。
『鬼、来襲』
「天霧、さっきの女について調べておけ」
「御意」
「あれは、なかなか面白い奴だ…ふはは…!」
「(……ご愁傷さん)」
いいのか悪いのか、私はすっかり学園の生活に馴染んでいた。やはり元の生活には戻れないが、バイトも無事食品工場のバイトに受かり、生活はなんとか凌げていた。
今日もこれからバイトだ。帰りのSHRを終えるとダッシュで廊下を駆け抜ける。こんなとこ先生や風紀委員に見つかったらただじゃ済まないが、時間が押している今は気にしている場合ではなかった。
「(よし、まだ間に合――)っ!」
携帯を確認しているほんの僅かな間、目を離している隙に何かにぶつかった。感触からするに恐らく人間で、走った勢いも相俟って後ろに大きくよろめく身体。衝撃を前にギュッと強く目をつむれば、待っていた痛みは来ず代わりに右腕を掴まれた感覚が襲った。
「この俺に体当たりとは……勇ましい女もいたものだ」
恐る恐る目を開ければ、何故か男の顔がドアップで視界に飛び込んで来た。反射的に後退りしようとするも、掴まれた右腕に力を込められそれは叶わない。
果ては掴んでいる手とは反対の手で顎に手を掛けられる。さっきよりいくらか冷静になった頭で考えるに……この特徴的な喋り方、いやに妖艶な立ち振る舞いをなさる方は、
「風間、彼女が怯えています」
「へぇー、アイツ以外に女なんていたんだな」
目だけで横を確認すれば、ゴツい体型に厳つい顔をした男と、ウェーブがかかった長髪に色黒の男がいた。
「……我が妻ほどではないな」
そして、間違いない――この人は“風間千景”だ。
満足そうに彼は鼻で笑うと、私はやっと解放された。
ほうと息を吐いてこのまま立ち去ろうと思ったが、ぶつかったのは私だしどんな形であれ助けられたのは事実だ。
「あの、…ありがとうございました」
下げていた頭を、なかなか反応が返ってこないので上げれば、風間さんは品定めでもするような目付きでこちらを見ていた。
「……ほう。俺に惚れたか」
「何でそうなるんですか」
「ふっ…照れるな。仕方がない、第二候補ぐらいになら入れてやらないこともないぞ」
「……」
呆れてものも言えない、とはまさにこのこと。自分の都合のいいほうに思考が進んでいく彼を白い目で見ていると、脇の不知火さんと天霧さんから同情の視線を受ける。助けてはくれないらしい。
「俺と話がしたければいつでも生徒会室に来るといい。…存分にもてなしてやろう」
再び顎に手を掛けられ、息がかかる程の距離でそう囁かれた。
千鶴だけでなく私にまで色目を使うとは、よっぽどこの人は女に飢えているのだろうか。
満足げに立ち去る後ろ姿を見送って携帯を見ると、もう時間まで三十分を映しており、私は大慌てでバイト先へ向かった。
『鬼、来襲』
「天霧、さっきの女について調べておけ」
「御意」
「あれは、なかなか面白い奴だ…ふはは…!」
「(……ご愁傷さん)」