【hkok】せぶんてぃーん・ぶるーす
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
SHRを終え、長い一日がようやく終わった。未だかつて色んな意味でこんなに濃ゆい一日があっただろうか、いやない、ないない。心だけにあきたらず、首まで振ってしまった。
そしてこの一日がこれから続いていくことになるのだろうかと大きな不安が影を差した。しばらく座ったままほうけていれば、周りは帰るなり部活に行くなりして一人もいなくなってしまった。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かで。なんだか世界から隔離された気分にすらなってしまい、涙の膜がじわりと滲んで視界がぼやける。ああ、これから私にどうしようっていうんだ。
「ユウさん?」
「…千鶴!」
心地よいソプラノの声が空っぽの教室に響く。それは紛れもない…このむさ苦しい学園で唯一の華、千鶴だった。教室の扉から様子を窺うようにひょっこりと顔を覗かせている。
あと一歩のところで溢れ出しそうだった涙は引っ込み、自然と顔の筋肉が和らいだ。それに釣られたのか千鶴も柔らかく微笑み、教室内を見渡してから私の元へと小走りで駆けて来た。私も席を立ち迎えるように手を広げ――さながらドラマの長い年月を経て再会を果たす恋人同士のように、
「あれ、千鶴ちゃんたらこんなとこにいたんだ」
呆気なく阻まれた。
満足そうに背後から千鶴を抱き寄せる。この人絶対タイミング狙ってたよ。勝ち誇ったような笑みで目配せされ、私はかなり腹が立ったので近くの机を蹴った。そして小指を打った。
あまりに痛くて中腰で悶えていると、「ダッサ」と目で嘲笑う沖田さんが見えてなんかもう、爆発寸前です。
「総司! いい加減オレの教科書返せ――って、千鶴とユウ?」
息を切らした平助君が焦った様子で駆け込んで来た。ちょっと、どんどん私と千鶴の空間が壊されていくんですけど。
ようやく痛みも引いて立ち上がれば、平助君が顔を真っ赤にしながら沖田さんの腕を解いて吠えていた。解放された千鶴が言い合う二人(ほぼ平助君の一人相撲だが)を気にしつつ、「足、大丈夫ですか」と私に声をかけてくれた。やっぱり私のオアシスだよ、君は!
抱き付きたい衝動を抑えて頭を撫ぜれば、くすぐったそうに目を伏せる。ちょっとこれどうしよう、超ときめくんですけど。襲っちゃってもいいんですか、教えて先生。
「それにしてもさ」
幸せを噛み締める私に向かって、できることなら耳に入れたくない声が聞こえた。名残惜しくもオアシスをフレームアウトして、声の主に目を向ける。そこには美〇さんもびっくりな殺気に溢れたオーラを漂わせる彼がいた。近くにいた平助君も顔色がすっかり青ざめていた。ちょっと距離を置いた私ですら冷や汗が止まんないもの、近くでオーラを受ける平助君にはご愁傷様としか言えない。
「こんな男ばっかの学校に編入してくるなんて変わってるよね、君」
「そう、ですか?」
努めて平静を装い、目の前まで距離を詰めて来た沖田さんを見据える。下から見上げる彼は想像以上の迫力で、言葉が出てこない。
これは、相当に怒らせてしまったらしい。
理解する頃には時既に遅し、口元だけに笑みをたたえた彼の顔がゆっくり迫る。それは光景だけ切り取ればロマンチックに見えたかもしれない。
「もしかして…君はそれが目当てだったりするのかなぁ」
挑発めいた口調で放たれた言葉は、私のプライドを傷つけるには十分だった。
確かに悔しいのに、手汗ごと握り締める拳は小刻みに震えているというのに。目を合わせるとなかなか言葉が出てこない。
何も言い返せない私に気をよくしたのか、沖田さんはまたあの笑顔で顔を離した。
なけなしの根性を振り絞って、このまま引き下がれるものかと噛み付こうとした時だった。
「沖田先輩、いくらなんでも失礼すぎますよ!」
「! 千鶴…」
私を守るように前に立つ彼女はゲームで見たまま、か弱そうなのに正義感は人一倍。
これにはさすがの沖田さんも面を食らったようで、ほんの一瞬だけいつもの飄々とした表情を崩した。
かく言う私も、まさか千鶴に助けられると思っていなかったので、ただ目を見開くしかなかった。
「やだなぁ。冗談だよ、冗談」
「冗談にしても今のは、」
「千鶴。…ありがとう、もういいよ」
これ以上私のせいで立場が悪くなるのは申し訳ないと、慌ててこのまま食いかかろうとする彼女を止めた。すると不満げな顔をして千鶴はこちらを見つめる。ああもう、可愛いじゃないかこん畜生!
どん底だった私のテンションボルテージは一気に跳ね上がった。
「…そうだ、千鶴ちゃん。この間一緒にデートする約束したよね? 今から行こうよ」
「い、今からですか? でも」
ちらちら見てくる瞳に思わず引き止めたくなってしまったが、その向こうの殺気むんむんな彼を見たらもう選択肢は一つしか残されていなかった。
「私のことはいいから、…いってらっしゃい」
「だってさ。ほら、行こう」
「あっ…さ、さようなら、ユウさん、平助君!」
手を引かれながら見えなくなるまで申し訳なさそうに視線を送ってくる千鶴に、子を奪われる母のような気持ちになってしまった。
「…で。君はよかったの?」
「な、何のことだよ」
「言わなくても分かるでしょ? なんなら言ってあげてもい…」
「いーよ、言わなくて!
…オレに千鶴のことを止める権利なんてないだろ」
あら、随分弱気ですこと。
犬だったら耳を垂らしてうなだれているであろう姿が、あまりにも愛らしくて笑ってしまった。
「っオレももう帰るからな!」
「ん、バイバイ」
笑われたのが余程恥ずかしかったのか、耳まで赤くして怒って帰ってしまった。その後ろ姿を軽く手を振って見送る。
そんなだから沖田さんにからかわれちゃうんだよ。それが平助君のいいところでもあるんだけど。
さっき平助君に気味悪がられた笑みを浮かべながら荷物を鞄に詰め込む。
さて、私も帰ろうかな、……
「…どこに?」
『学園は戦場』
「え、ちょ、どうしようこれ。もしかして私家なき子? 嘘でしょ……同情するなら家をくれぇえ!」
そしてこの一日がこれから続いていくことになるのだろうかと大きな不安が影を差した。しばらく座ったままほうけていれば、周りは帰るなり部活に行くなりして一人もいなくなってしまった。
さっきまでの喧騒が嘘のように静かで。なんだか世界から隔離された気分にすらなってしまい、涙の膜がじわりと滲んで視界がぼやける。ああ、これから私にどうしようっていうんだ。
「ユウさん?」
「…千鶴!」
心地よいソプラノの声が空っぽの教室に響く。それは紛れもない…このむさ苦しい学園で唯一の華、千鶴だった。教室の扉から様子を窺うようにひょっこりと顔を覗かせている。
あと一歩のところで溢れ出しそうだった涙は引っ込み、自然と顔の筋肉が和らいだ。それに釣られたのか千鶴も柔らかく微笑み、教室内を見渡してから私の元へと小走りで駆けて来た。私も席を立ち迎えるように手を広げ――さながらドラマの長い年月を経て再会を果たす恋人同士のように、
「あれ、千鶴ちゃんたらこんなとこにいたんだ」
呆気なく阻まれた。
満足そうに背後から千鶴を抱き寄せる。この人絶対タイミング狙ってたよ。勝ち誇ったような笑みで目配せされ、私はかなり腹が立ったので近くの机を蹴った。そして小指を打った。
あまりに痛くて中腰で悶えていると、「ダッサ」と目で嘲笑う沖田さんが見えてなんかもう、爆発寸前です。
「総司! いい加減オレの教科書返せ――って、千鶴とユウ?」
息を切らした平助君が焦った様子で駆け込んで来た。ちょっと、どんどん私と千鶴の空間が壊されていくんですけど。
ようやく痛みも引いて立ち上がれば、平助君が顔を真っ赤にしながら沖田さんの腕を解いて吠えていた。解放された千鶴が言い合う二人(ほぼ平助君の一人相撲だが)を気にしつつ、「足、大丈夫ですか」と私に声をかけてくれた。やっぱり私のオアシスだよ、君は!
抱き付きたい衝動を抑えて頭を撫ぜれば、くすぐったそうに目を伏せる。ちょっとこれどうしよう、超ときめくんですけど。襲っちゃってもいいんですか、教えて先生。
「それにしてもさ」
幸せを噛み締める私に向かって、できることなら耳に入れたくない声が聞こえた。名残惜しくもオアシスをフレームアウトして、声の主に目を向ける。そこには美〇さんもびっくりな殺気に溢れたオーラを漂わせる彼がいた。近くにいた平助君も顔色がすっかり青ざめていた。ちょっと距離を置いた私ですら冷や汗が止まんないもの、近くでオーラを受ける平助君にはご愁傷様としか言えない。
「こんな男ばっかの学校に編入してくるなんて変わってるよね、君」
「そう、ですか?」
努めて平静を装い、目の前まで距離を詰めて来た沖田さんを見据える。下から見上げる彼は想像以上の迫力で、言葉が出てこない。
これは、相当に怒らせてしまったらしい。
理解する頃には時既に遅し、口元だけに笑みをたたえた彼の顔がゆっくり迫る。それは光景だけ切り取ればロマンチックに見えたかもしれない。
「もしかして…君はそれが目当てだったりするのかなぁ」
挑発めいた口調で放たれた言葉は、私のプライドを傷つけるには十分だった。
確かに悔しいのに、手汗ごと握り締める拳は小刻みに震えているというのに。目を合わせるとなかなか言葉が出てこない。
何も言い返せない私に気をよくしたのか、沖田さんはまたあの笑顔で顔を離した。
なけなしの根性を振り絞って、このまま引き下がれるものかと噛み付こうとした時だった。
「沖田先輩、いくらなんでも失礼すぎますよ!」
「! 千鶴…」
私を守るように前に立つ彼女はゲームで見たまま、か弱そうなのに正義感は人一倍。
これにはさすがの沖田さんも面を食らったようで、ほんの一瞬だけいつもの飄々とした表情を崩した。
かく言う私も、まさか千鶴に助けられると思っていなかったので、ただ目を見開くしかなかった。
「やだなぁ。冗談だよ、冗談」
「冗談にしても今のは、」
「千鶴。…ありがとう、もういいよ」
これ以上私のせいで立場が悪くなるのは申し訳ないと、慌ててこのまま食いかかろうとする彼女を止めた。すると不満げな顔をして千鶴はこちらを見つめる。ああもう、可愛いじゃないかこん畜生!
どん底だった私のテンションボルテージは一気に跳ね上がった。
「…そうだ、千鶴ちゃん。この間一緒にデートする約束したよね? 今から行こうよ」
「い、今からですか? でも」
ちらちら見てくる瞳に思わず引き止めたくなってしまったが、その向こうの殺気むんむんな彼を見たらもう選択肢は一つしか残されていなかった。
「私のことはいいから、…いってらっしゃい」
「だってさ。ほら、行こう」
「あっ…さ、さようなら、ユウさん、平助君!」
手を引かれながら見えなくなるまで申し訳なさそうに視線を送ってくる千鶴に、子を奪われる母のような気持ちになってしまった。
「…で。君はよかったの?」
「な、何のことだよ」
「言わなくても分かるでしょ? なんなら言ってあげてもい…」
「いーよ、言わなくて!
…オレに千鶴のことを止める権利なんてないだろ」
あら、随分弱気ですこと。
犬だったら耳を垂らしてうなだれているであろう姿が、あまりにも愛らしくて笑ってしまった。
「っオレももう帰るからな!」
「ん、バイバイ」
笑われたのが余程恥ずかしかったのか、耳まで赤くして怒って帰ってしまった。その後ろ姿を軽く手を振って見送る。
そんなだから沖田さんにからかわれちゃうんだよ。それが平助君のいいところでもあるんだけど。
さっき平助君に気味悪がられた笑みを浮かべながら荷物を鞄に詰め込む。
さて、私も帰ろうかな、……
「…どこに?」
『学園は戦場』
「え、ちょ、どうしようこれ。もしかして私家なき子? 嘘でしょ……同情するなら家をくれぇえ!」