知ったかぶり
【白南風丸について】
落乱50巻の白南風丸と兵庫水軍さん達のその後ネタです。
色々と勝手に過去捏造しております。
子供時代は7、8歳をイメージしてます。
水軍さん達は偽物注意であります!。
ヒロインらしき女の子も居ます、ご注意下さい。
+++
「悔しいな。」
その子は呟いた。
白南風丸が驚いて彼女を見つめると
「女だからって、ナメるなって事。」
砂浜に座っていた彼女は立ち上がる。
彼女は黒く真っ直ぐな瞳で俺を見つめた。
ニタリと彼女の口角が上がる。初めて見る表情だった。
彼女は、俺達の仲間ではなく余所者である。訳あって、女の身でありながら兵庫水軍で生活していた。
だからなのか、重や航は彼女から距離をとっている。
他の同年代の友達も同様に彼女を避けた。
そんな中、俺はと言えば、どうすればよいか分からないまま、彼女と一緒に過ごすようになっていた。
一人ポツンといる彼女がほっとけなかったし、その時は俺も一人だったから。
「ちょっと、あやつらを見返してくるよ。」
彼女はそう言うと草履を脱ぎ捨てた。
彼女の視線の先には、海に張り出した大岩。
そして、その岩から海に飛び込んで遊ぶ重や航達。
「まさか。」
俺の言葉に彼女は頷いた。
そして、彼女は走り出す。
窓の外に見える大岩に白南風丸はふっと懐かしい光景を思い出していた。
あの大岩は、この辺りでは絶好の遊び場で梅雨明けの蒸し暑くなる頃にはあの岩から子供達が度胸だめしがてら海に飛び込む飛距離を競って遊ぶ。
あの頃の俺は、泳ぎも得意でなかったし、大岩から飛び込むほどの勇気もなかった。
いつも砂浜から彼らのその光景を眺めているだけ。
でも………。
「おーい。白南風丸、早く料理持ってこい。」
そう呼び掛けらてふっと我にかえる。
忍術学園から総大将達と帰宅して、水軍舘で夕食の準備の最中だったのだ。
「今、行きます。」
慌てて白南風丸は夕食を運んだ。
+++
いつものように騒がしくなった夕食の席で、網問は友の元へと走り寄った。
「白南風丸!。身隠しの盾の役に合格したんだって。おめでとう。」
そう言って網問が白南風丸に飛び付き
「白南風丸、よかったな。」
ポンと肩を叩いたのは航である。
「二人とも、ありがとう。」
少し照れた様子で白南風丸が笑う。
向かいの席で、そんな彼等のやり取りを見ていた舳丸も自分の事の様に嬉しくなり、注いであった酒をクイと飲みほした。
網問、航、白南風丸と三人で盃で乾杯していると後から新たな声が上がる。
「それで、どうだった。初忍術学園は、乱太郎達は元気だったか?。」
「重。忍術学園の皆さん元気だったよ。乱太郎君達には色々と助けてもらった。」
振り返えると重と東南風が酒瓶片手に立っている。
「背中の方は大丈夫か。」
東南風の言葉に白南風丸は頷く。
「やっぱり、バレてましたか。背中の方は学園の校医さんに膏薬をもらってからはすっかりよくなりました。痛みもありません。」
白南風丸は今度は横を向く。
「そうだ、網問。新野先生に膏薬を分けてもらったんだ。よかったら一緒に使おう。」
「助かるよ。忍術学園の膏薬って、凄く効きそう。」
「網問だけか、ずるいぞ。」
いつの間にから白南風丸のまわりには、同年代の水夫達が集まっていた。
さらに、その場は賑やかとなる。
+++
白南風丸は水軍舘の縁側に座り夜の海を眺めていた。
あまり慣れないお酒を飲みすぎたのか、夜の海風が酒で火照った頬に心地よい。
暫く、ぼんやりとしていると近付いて来る足音が一つ。
何気なく視線を向けた。
「今夜の主役がこんな所に居ていいのか。
声が聞こえた途端、白南風丸は縁側から庭へと降りる。
「義丸の兄貴!!。今回の件でご迷惑を……。」
そのまま凄い勢いで下げた白南風丸の頭を義丸が掴み持ち上げる。
「あれくらいの事で頭を下げない。迷惑なんかじゃない。それより、これからの事を白南風丸は考えないと。」
「やっぱり、バタ足は不味いですよね。」
うなだれる白南風丸に義丸はため息をつく。
「舳丸が水練を見てくれるらしい。明日からみっちり鍛えてやるってよ。」
「本当ですか。」
「舳丸をアッと言わせてやれ。それじゃなきゃ、俺と同じ舟には乗れないぞ。 来いよ、此処まで。」
義丸の言葉に白南風丸の表情は一気に引き締まる。
兵庫水軍ナンバーワンの実力を持つ鉤役の義丸と同じ舟乗るとなれば、戦の最前線に立つのと同じ。兵庫水軍の中でも精鋭の集まった舟である。
その舟に見合う実力。
自分の実力が、まだまだであることは明白だ。
しかし、義丸はその精鋭の集まるそこまで来いと言ってくれたのだ。
ぐっと握った拳に力が入る。
「必ず。俺は義丸の兄貴を守る身隠しの盾の役になってみせます。」
『あやつらを見返して…。』
昔、そう言い切ったあの女の子の言葉が頭を過る。
俺はあの時の彼女のように、口角を持ち上げ、自信満々に笑った。
「俺をヘタレって笑ってた奴らを見返してやりますよ。」
俺のその言葉に義丸の兄貴は、満足げに笑ったような気がした。
+++
走り出した少女を慌てて追いかけた。
「ちょっと、待って。」
伸ばした白南風丸の手を逆に彼女が掴む。
「白南風丸も一緒に飛び込む?。バタ足できれば、充分だ。」
彼女は俺の手を掴んだまま、今も走り続けている。
「ムリ、俺はムリだから。」
けれど、彼女の言葉にビビながらも、俺の足も止まらない。
俺も心の何処かで望んでいたのかもしれない。
「白南風丸。あやつらを、見返してやろう。」
グンッと彼女は走る速度をあげた。
俺達を見て驚く友人達の間を走り抜ける。
砂浜では灼熱の潮風も岩場では涼しげに吹き抜ける。
その温度差に息をのんだ。
開けた視界の向こうに見えたのは、真っ青な空と太陽の光を反射した海。
お互い、繋いだ手に力が入る。
「踏み切れ。」
その瞬間、俺達は大岩から飛び出した。
飛び込んだ先の海にいた友から後に聞いた話しでは、あの時の俺達は空を飛び越えて来たかのように見えたらしい。
あの時に飛んだ飛距離は、昔も今も、まだ誰にも抜かれていない。
ヘタレって言われる俺のちょっとした自慢だ。
+++
白南風(しらはえ・しろはえ)
梅雨明けの頃に吹く南風。または八月頃の昼間に吹く南風。
南風(はえ)主に西日本で使われるミナミカゼの事。穏やかな順風。
*
落乱50巻の白南風丸と兵庫水軍さん達のその後ネタです。
色々と勝手に過去捏造しております。
子供時代は7、8歳をイメージしてます。
水軍さん達は偽物注意であります!。
ヒロインらしき女の子も居ます、ご注意下さい。
+++
「悔しいな。」
その子は呟いた。
白南風丸が驚いて彼女を見つめると
「女だからって、ナメるなって事。」
砂浜に座っていた彼女は立ち上がる。
彼女は黒く真っ直ぐな瞳で俺を見つめた。
ニタリと彼女の口角が上がる。初めて見る表情だった。
彼女は、俺達の仲間ではなく余所者である。訳あって、女の身でありながら兵庫水軍で生活していた。
だからなのか、重や航は彼女から距離をとっている。
他の同年代の友達も同様に彼女を避けた。
そんな中、俺はと言えば、どうすればよいか分からないまま、彼女と一緒に過ごすようになっていた。
一人ポツンといる彼女がほっとけなかったし、その時は俺も一人だったから。
「ちょっと、あやつらを見返してくるよ。」
彼女はそう言うと草履を脱ぎ捨てた。
彼女の視線の先には、海に張り出した大岩。
そして、その岩から海に飛び込んで遊ぶ重や航達。
「まさか。」
俺の言葉に彼女は頷いた。
そして、彼女は走り出す。
窓の外に見える大岩に白南風丸はふっと懐かしい光景を思い出していた。
あの大岩は、この辺りでは絶好の遊び場で梅雨明けの蒸し暑くなる頃にはあの岩から子供達が度胸だめしがてら海に飛び込む飛距離を競って遊ぶ。
あの頃の俺は、泳ぎも得意でなかったし、大岩から飛び込むほどの勇気もなかった。
いつも砂浜から彼らのその光景を眺めているだけ。
でも………。
「おーい。白南風丸、早く料理持ってこい。」
そう呼び掛けらてふっと我にかえる。
忍術学園から総大将達と帰宅して、水軍舘で夕食の準備の最中だったのだ。
「今、行きます。」
慌てて白南風丸は夕食を運んだ。
+++
いつものように騒がしくなった夕食の席で、網問は友の元へと走り寄った。
「白南風丸!。身隠しの盾の役に合格したんだって。おめでとう。」
そう言って網問が白南風丸に飛び付き
「白南風丸、よかったな。」
ポンと肩を叩いたのは航である。
「二人とも、ありがとう。」
少し照れた様子で白南風丸が笑う。
向かいの席で、そんな彼等のやり取りを見ていた舳丸も自分の事の様に嬉しくなり、注いであった酒をクイと飲みほした。
網問、航、白南風丸と三人で盃で乾杯していると後から新たな声が上がる。
「それで、どうだった。初忍術学園は、乱太郎達は元気だったか?。」
「重。忍術学園の皆さん元気だったよ。乱太郎君達には色々と助けてもらった。」
振り返えると重と東南風が酒瓶片手に立っている。
「背中の方は大丈夫か。」
東南風の言葉に白南風丸は頷く。
「やっぱり、バレてましたか。背中の方は学園の校医さんに膏薬をもらってからはすっかりよくなりました。痛みもありません。」
白南風丸は今度は横を向く。
「そうだ、網問。新野先生に膏薬を分けてもらったんだ。よかったら一緒に使おう。」
「助かるよ。忍術学園の膏薬って、凄く効きそう。」
「網問だけか、ずるいぞ。」
いつの間にから白南風丸のまわりには、同年代の水夫達が集まっていた。
さらに、その場は賑やかとなる。
+++
白南風丸は水軍舘の縁側に座り夜の海を眺めていた。
あまり慣れないお酒を飲みすぎたのか、夜の海風が酒で火照った頬に心地よい。
暫く、ぼんやりとしていると近付いて来る足音が一つ。
何気なく視線を向けた。
「今夜の主役がこんな所に居ていいのか。
声が聞こえた途端、白南風丸は縁側から庭へと降りる。
「義丸の兄貴!!。今回の件でご迷惑を……。」
そのまま凄い勢いで下げた白南風丸の頭を義丸が掴み持ち上げる。
「あれくらいの事で頭を下げない。迷惑なんかじゃない。それより、これからの事を白南風丸は考えないと。」
「やっぱり、バタ足は不味いですよね。」
うなだれる白南風丸に義丸はため息をつく。
「舳丸が水練を見てくれるらしい。明日からみっちり鍛えてやるってよ。」
「本当ですか。」
「舳丸をアッと言わせてやれ。それじゃなきゃ、俺と同じ舟には乗れないぞ。 来いよ、此処まで。」
義丸の言葉に白南風丸の表情は一気に引き締まる。
兵庫水軍ナンバーワンの実力を持つ鉤役の義丸と同じ舟乗るとなれば、戦の最前線に立つのと同じ。兵庫水軍の中でも精鋭の集まった舟である。
その舟に見合う実力。
自分の実力が、まだまだであることは明白だ。
しかし、義丸はその精鋭の集まるそこまで来いと言ってくれたのだ。
ぐっと握った拳に力が入る。
「必ず。俺は義丸の兄貴を守る身隠しの盾の役になってみせます。」
『あやつらを見返して…。』
昔、そう言い切ったあの女の子の言葉が頭を過る。
俺はあの時の彼女のように、口角を持ち上げ、自信満々に笑った。
「俺をヘタレって笑ってた奴らを見返してやりますよ。」
俺のその言葉に義丸の兄貴は、満足げに笑ったような気がした。
+++
走り出した少女を慌てて追いかけた。
「ちょっと、待って。」
伸ばした白南風丸の手を逆に彼女が掴む。
「白南風丸も一緒に飛び込む?。バタ足できれば、充分だ。」
彼女は俺の手を掴んだまま、今も走り続けている。
「ムリ、俺はムリだから。」
けれど、彼女の言葉にビビながらも、俺の足も止まらない。
俺も心の何処かで望んでいたのかもしれない。
「白南風丸。あやつらを、見返してやろう。」
グンッと彼女は走る速度をあげた。
俺達を見て驚く友人達の間を走り抜ける。
砂浜では灼熱の潮風も岩場では涼しげに吹き抜ける。
その温度差に息をのんだ。
開けた視界の向こうに見えたのは、真っ青な空と太陽の光を反射した海。
お互い、繋いだ手に力が入る。
「踏み切れ。」
その瞬間、俺達は大岩から飛び出した。
飛び込んだ先の海にいた友から後に聞いた話しでは、あの時の俺達は空を飛び越えて来たかのように見えたらしい。
あの時に飛んだ飛距離は、昔も今も、まだ誰にも抜かれていない。
ヘタレって言われる俺のちょっとした自慢だ。
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白南風(しらはえ・しろはえ)
梅雨明けの頃に吹く南風。または八月頃の昼間に吹く南風。
南風(はえ)主に西日本で使われるミナミカゼの事。穏やかな順風。
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