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知ったかぶり

【聴音器について】




只の思い付き。

煮詰めてないので、露時雨・7話の現代版小ネタ。

中学生くらいの一年は組のクラスメイトの女の子視点。



+++





実はあたし、この時間を密かに楽しみしている。

日本史の授業中にある、土井先生の雑学話し。


「聴音器ていうのは・・・」

いつもの事だけれど、教科書から脱線して土井先生は色々な話しを教えてくれるのだ。

今日は室町時代の話しから忍者の話しになり、今は忍者の道具について説明をしてくれていた。


私の密かな楽しみはタカメモ(知り合いのタカ丸お兄さんはメモ癖がある)ならぬ土井メモを作っている。内容は言わずもがな、土井先生の雑学話しだ。


「先程、言った“小音聞き金”の他にも、“聞き筒”と言うものがある。これは………。」

あたしは土井先生の声を聞きながらメモ帳にシャーペンを走らせる。

聞き筒とは真鍮製の金属を入れ籠状に組み合わせたもので畳むと2、3㎝ほどの高さ、伸ばすと20㎝ほどの長い筒になった。
入れ畳んで携行し、使う時は引き伸ばして一端を耳に他を壁や節穴に当てて音を聞き取る。
かすかな音も金属筒の内部に共鳴して増幅されることと、外部の音を遮断するため、良く聞こえた。

そこまでメモをとり、顔を上げると土井先生は何かのプリントを丸く丸めて筒状にしていた。

「筒状だと言うことは、音を聞き取る事も出来るが、こうやって…。」

紙の筒を口元まで持ってくると、大きな声で叫ぶ。

「加藤、佐武!!そろそろ起きろ!。」

「へっ。」

「あっ。」

教室の後ろの方で寝ぼけたような二人の声が聞こえた。

団蔵君も虎若君も爆睡中だったのかと、あたしはクスリと笑った。


「このように聞き筒は、味方に声を届けるメガホンがわりの役目もあるし、“吹筒”のように寝ている敵の顔に粉末状の薬を吹きかけるのにも使用された。」

土井先生はそう説明したあと、時計に目をやりそれから、教科書どおりの授業へと軌道修正してしまった。

そして早速、我らが学級委員長の庄左ヱ門君が先生に質問中だ。


「なんだ、もう終わりかぁ。」

残念そうにあたしが呟くと、


「ねぇ、さっきまで何書いてたの?。」

隣の席の金吾君に話しかけられた。
と言うか耳元で呟かれたので、思わずビックリしてしまった。

ガタっと椅子が動く、幸い土井先生は話している最中でこちらには気が付いてない。


「土井先生の雑学話しを……。」

「ふ~ん。面白そう。」

と興味深げに金吾君はあたしの手元を覗き込む。
そうなると自然と彼と近くになるわけで、一気に頬が熱くなった。


「た、たいした事は書いてないから。」

と言ってみたものの、彼には聞き入れてもらえないようで

「後で、見せてね。」と笑顔を向けられた。
それを断れる程、あたしは勇気を持ち合わせていない。
だって、隣に座れるだけでも超ラッキーなのに。

そんなあたしは窓際の騒ぎに一瞬反応が遅れた。


「あれ、野良犬かな?。」

窓際の兵太夫君の声。

「ゼニの花白い号じゃないの」

「違うって。だって黒色だよ。」

「確かに。それに子犬ぽくない?。」

「小松田さんは捕まえられないみたいだぞ。」

「本当だ。あっまた逃げられてる。」

「手伝った方がいいんじゃないか。」

「そうだね。面白そうだし。」

あっという間に窓際にクラスメイトが勢揃いしている。


「お前達っ!まだ授業は終わってないぞ。」

と土井先生が言うが早いかチャイムがなるのが早かったのか。
無情にも授業終了のチャイムがなった。


「土井先生~。チャイムなっちゃいましたね。」

しんべヱの言葉に溜め息混じりに土井先生は呟いた。

「しょうがない。今日は終わりにしよう。」

「はーーい。」

と元気よくあたし達は返事をする。

密かに窓際に行きそびれたあたしは椅子に座ったままだ。

ぼんやりと窓際を見ていたら


「ねぇ、子犬見に行かないの?。」

喜三太君が横に立っていた。
驚いたあたしは「えっ」とか何やら言葉にならない返事をする前に彼はあたしの手を掴む。

「行こうよ。ふわふわしててさわり心地よさそうだよ。そうゆうの好きでしょ。」

喜三太君は遠目から子犬を見ただけにも関わらず細かな所まで見えているらしい。
しかも、あたしがふわふわだったり、もこもこしたものが好きなの何故か知ってるし!!

固まるあたしの手を掴む手がまた一つ増えた。


「そうだよ。一緒に行こう。」

窓際に行ったはずの金吾君までもが隣に戻っ来ていたのだ。

「うん。」

あたしはなんとか声を出した。だって口から心臓出るんじゃないかってくらいバクバクと心臓が鳴ってるし、心拍数が上昇しっぱなしだ。

そして出入口ではなく窓際に向かう二人。

疑問に思っていると土井先生が怒る声が聞こえた。


「お前達、上履きのまま外にでるなっ!。」


窓の外には上履きのまま外に飛び出した団蔵君や兵太夫君、それに乱太郎君までもがいた。


「先生。あの子犬、もしかしたらけがしてるかもしれないんです。」

乱太郎君は保健委員だ。けがしているのは人だろうと犬だろうとほっとけないようだ。


「土井先生ー。ちゃんとあとで靴裏洗うから大丈夫。」

と叫んだのは団蔵君だ。

その彼の視線がこちらに向く。

「お前も早く来いよ。」

ニカっと彼は笑う。

「だってさ。ねっ、早く。」

喜三太君の言葉に、団蔵君のさっきの言葉はあたしに向かって言ったのだと気がついた。

教室があるのは一階で、窓の外はグランドの端っこ部分だ。

窓枠に飛び乗った金吾君が手を差し出す。

あたしはその手を掴む。


地面に降り立つと、きり丸君があたしの顔が赤いとからかった。

あたしの顔が赤いのは、窓枠に飛び乗るのがはずかしからで………。


言い訳を言葉にする前に再びあたしの手は捕まれる。

「行こう!!。」

そして、あたし達は騒ぎの中に飛び込んだ。



こんな騒ぎが、あたしの日常になるなんて、この時のあたしはまだ気付いてない。


伸ばされた手を掴んだら世界は108度回転して、あたしの毎日に鮮やかな色をつけた。






+++







タイトルは聴音器についてですが、小ネタの一年は組の方がメインになっちゃいました。

現代版でも、一年は組は大騒ぎしてそうです。

現代版だと女の子が普通に彼らのクラスメイトとして居られるので楽しいです。

室町設定だと女の子は男装とか理由付けが必要なので考えすぎちゃったりしてます。

夢主の座席は廊下側のイメージで書いてます。

気づけば金吾よりに。
自分でも書いててビックリです。


あと、私が読んだ本には小音“聞き”金となっていたのですが、落乱コミックスの方は小音“聴き”金となっていました。

なので露時雨・7話の方は小音聴き金となっています。

どうでもいい事なのですけれどね。








 
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