忍者と井戸と幽霊
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「皆、すまない。助かった。」
千鶴が深々と頭を下げる。
「気にするなって。」
勘右衛門が朗らかに笑うと千鶴の下げた頭に手を置いて撫で回す。
「ちょっと、ぐちゃぐちゃになるって。」
慌てて千鶴が顔を上げると兵助と目が合った。
今回、一番迷惑をかける人物だ。
なんせ、噂の幽霊の正体は千鶴ではなく兵助とゆう事になるのだから。
おかげで男装の事もばれずにすむ。
「兵助、巻き込んじゃってごめん。その、ありがとう。」
「これくらい、大した事ないよ。千鶴が無事なら、それで良いさ。」
「兵助っ。やっぱりお前、いい奴だな。今日から私の豆腐料理はお前のものだ。」
千鶴が感動したのか、バシバシと兵助を叩きながら言っていると、横から待った掛かる。
「千鶴、それだけはやめとけ。今後、お前の飯はおかず抜きになるぜ。」
心配した八左ヱ門が止めたのだ。
「えっ、なんで。」
ポカンとする千鶴に三郎がツッコむ。
「ばーか。五年は豆腐料理率がスゲー高いだろ。そんな約束したら、千鶴は毎回ご飯だけになるぞ。」
「あぁ、そうだった。兵助、今のなしって事で。」
そんな千鶴の言葉に「どうしようか。」などと兵助が呟いたものだから千鶴は「そんなぁ。」と大慌てだ。
三郎は三郎でそんな慌てる千鶴をからかっている。
「三郎も素直じゃないね。」
「それなら、兵助もだよ。」
そんな彼らを眺めながら、雷蔵と勘右衛門はポツリと呟く。
兵助は豆腐より、千鶴の方が好きだし。
三郎は、千鶴が自分よりも兵助に懐くのが気に食わないのだ。
千鶴は一向にその事には気づかないけれど。
「そうゆう、勘右衛門は参戦しないのか。」
いつの間にか、あの中から抜け出した八左ヱ門はやや呆れたように言って話しに加わる。
「勿論、参戦するよ。」
実は、勘右衛門だって、千鶴
の事が大好きだったりするのだ。
「おーい。千鶴。お前コレ探してたんじゃないのか。」
勘右衛門が群青色の髪紐を握って振り回す。
「勘右衛門。見つけてくれたんだ、ありがとう。」
嬉しそうに笑う千鶴に勘右衛門も口元が緩む。
「どう致しまして。」
「千鶴、次からもっと気を付けろよ。」
三郎が密かに勘右衛門の言葉を遮ぎった。
「あっそうだ、今度は皆で群青色の髪紐にしよう。そうすれば、千鶴が髪紐をなくしても誰だか特定できないよ。」
そう提案したのは雷蔵だ。
結局、雷蔵も彼らの中に入って行く。
「なんだ、雷蔵も参戦するんじゃないか。」
八左ヱ門もそう言って苦笑しつつも、彼もその輪の中に加わるのだ。
兵助がずぶ濡れの幽霊に化けたのも
三郎がナメクジに変装して一年を引き付けたのも
雷蔵が幽霊だけでなく、わざわざ火の玉までやって驚かせたのも
勘右衛門が、誰よりも早く現場に駆けつけて髪紐を探したのだって
俺が、わざと脱走癖のあるカラスを使ったのも
俺たちが、千鶴を大好きだから・・・。
驚忍の術、あれは本当は訓練でも、遊びでもない。
俺たちが
千鶴を守る為に仕掛けた
忍術。
一年ごときに見破れるはずがない。
*
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