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0・序章
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行き交う人々、活気のある町並みの中を若葉の香を漂わせて、爽やかな風が、スルリと吹き抜けてゆく。
それを名残惜しむかの様に
被っている菅笠の縁を持ち上げて空を見上げた。
穏やかな春の空を見ながらぽつりと呟く。
――三ヶ月かぁ。長かった…。――
久しぶりの親友との再会。
自然と青影の口許に笑みが浮ぶ。
しかし、不粋な男の声でその笑みが陰る。
「おい、ガキ。話し聞いてんのか?。」
男の怒鳴りつける声が辺りに響いた。
+++
その日も、何時もと変わらない、単なる“お使い”になるはずだった。
なのにどうして、こうなってしまったのだろうか。
―― やっぱり自分が不運体質だからなのか。――
乱太郎は溜め息をつく。
それは、学園長先生のお使いの途中で起こった。
頼まれたお使いは、とある茶店のお団子を買ってくる事。
そんなお使いはよくある事で、いつもの三人で買いに行き、そして、厄介事に巻き込まれたのである。
きっかけは、茶店の前で男と乱太郎がぶつかったのが原因だった。
その男は、一方的に乱太郎を怒鳴り付けていて、揚句の果ては、乱太郎からお金まで揺すり取ろうとまでしている。
「おい、ガキ。話し聞いてんのか?。」
男の怒鳴りつける声が、辺りに響いた。
「乱太郎は悪くない、オッサンの方から、ぶつかってきたんだろ。」
きり丸が、男に言い返すとその言葉に腹を立てた男は、きり丸の胸ぐらを掴み上げた。
「きり丸!!。やめてください。ぶつかったのあやまりますから、やめてください。」
隣に居た乱太郎が、慌てて男に頭を下げる。
「乱太郎~。」
そんな彼らの様子を心配して、しんべヱが乱太郎の服を掴む。
「だから、乱太郎。こんな奴に、あやまんなって。」
今だに男に掴まれているきり丸が、怒った声で言うものだから、男はさらにその子を高く掴み上げた。
「なんだと、生意気なガキが。」
きり丸を掴み上げた手とは反対側の手を男が振り上げる。
+++
時間は少し巻き戻る。
小さいな茶店の中で、二人の少年が団子を食べていた。
「関心しないなぁ。」
その呟きを聞いて
「え、何が?。」
そう言うと少年は、店の表を指差した。
見ると小さな子供とゴロツキ風情の男が揉めているようだ。
「さっき、男の方からぶつかったんだよ、なのに子供せいにしてんだぜ。最低野郎だ。」
「
瀬戸田が尋ねると彼は表の子供達へと視線を向けた。そして、その周囲にも。
行きかう人々は何事かと騒動の元を見るだけで、誰も彼らを助けようとしていない。
しかし、その中に見知った人影がある。
「・・・。俺が行くより先に、あいつがもう止めに行った。」
御調の呟きに瀬戸田もちらりと表に目をやり、納得するように頷く。
「そうだね。あの子の前で、子供とお年寄りに手を挙げたら、キレちゃうんだっけ。あの子、普段は温厚なんだけどね。」
瀬戸田の言葉に御調は、思わず眉間にシワをよせる。
「忍者のくせに、そうゆうところが弱いんだよな、あいつ。でもまぁ、任務の時は冷静だからいいんだけど。」
そう言った直後に店の表の方から、大きな音がした。
+++
―― 殴られる。――
きり丸は衝撃に備えて目をギュッと閉じた。
だが、衝撃は逸まで経っても来ない。
恐る恐る目を開けると、ゴロツキ男の腕を誰かが掴んでいる。
『子供に手をあげるなど・・・。最低だな。』
菅笠を被った少年の鋭い眼差しが男に突き刺さった。
「相変わらず、強いね。あの子。」
そう言って表を見ながら瀬戸田は、団子を一つ摘む。
「あぁ。相手の男、鳩尾に一発喰らってやんの。あれは痛いよな、あいつのあの一撃。」
「そう、そう。あの子、力弱いから、長引かないように急所に一撃で仕留めにくるよね。そのくせ、こっちの攻撃は一つも当たらないし。」
「あいつ、目が良いからな。こっちの攻撃、見極めるから避けるんだぜ。」
そう言って御調も団子を摘む。
店の表では、完全に伸びた男とボー然とした子供三人が立っていた。
菅笠を被っているため周りには少年の顔が見えていない。
ざわつく周囲をよそに少年は子供の方へと向き直り。
そして、不思議な行動に出た。
「「!!。」」
眼鏡の男の子とぽっちゃり体型の男の子が驚いて同時に何か叫ぶ。
菅笠の少年に、つり目の男の子が小脇に抱えられていたからだ。
「!!。なっ。なにするんすっか。」
男の子がびっくりして喚くが、菅笠の少年はそのまま慌てた様子でこちらの店に走って来る。
+++
「おい、瀬戸田。怪我人みたいだぞ。」
御調の言葉に瀬戸田は、少しやる気なさげに返事を返す。
「僕、どっちかていうと獣専門なんだけど。」
「何言ってやがる。五年間も、あいつの怪我を手当してやってたくせによ。あいつ、医務室ほとんど行ってなかったのは、お前が居たからだろ。」
「まぁね。しょうがないか。あの男の子、手首を捻ってるみたいだし。」
「あいつを殴るのに男が手を離した時だろ、つり目の子、手を着いてこけたからなぁ。あいつ自分のせいでとか思ってるんだぜ。きっと。」
二人がそんな会話をしてるとは、知らずに少年は彼らの前に現れる。
「数ヶ月ぶりの再会だってのに、お前は相変わらずだなぁ。青影
。」
「元気そうでよかったよ。青影。」
二人の言葉に少年は嬉しそうに笑って
『まぁね。二人もあんまり変わってないね。君達が学園辞めた数ヶ月は、けっこう長く思えたのになぁ。』
そう言い返した後、ずいっと男の子を彼らに見せる。
『瀬戸田、この子見てやって。』
どうやら数ヶ月ぶりの友との再会は、のんびりできないらしい。
店の入り口では、泣きながら物凄い速さで走ってくる眼鏡の男の子と少し遅れて鼻水が垂れている男の子が何か叫びながら近付いて来る。
瀬戸田は御調と目を合わせながら、密に矢羽音を飛ばした。
〈大丈夫かな?この子こんなので。忍術学園で、一人でやってけてるの。〉
〈そうだな、相変わらず厄介事に首を突っ込んでるみたいだから…。もうすでに、奴らにばれてるんじゃねぇか。こいつが女だって。〉
〈ありえる。せっかく僕達が隠してたのに。〉
〈とにかく、その話しは後回しだな。〉
頷き合う二人に少年は苦笑する。
『えっと…。俺にも、今の矢羽音は聞こえて…ぐはっ。』「「キリ丸を返せ!!。」」
菅笠を被った少年の呟きは、二人の子供のタックルで見事に掻き消された。
*