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8・主人公
名前変換
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その用紙に、一つ一つ書かれた名前を確認してゆくと明らかに他の学年と比べてその人数は少ない。
それなのに名前の横に記入された数字はどの学年よりも多くて、大きい。
三反田数馬は身体測定の結果を読んでいた視線を六年生に向けた。
人それぞれではあるけれど彼らの体格は立派である。
これから3年間過ぎた自分は、彼らのようになれるだろうか。
「数馬先輩!!。先輩、次の計測始まりますよ。」
僕の思考は後輩のその声で中断する。
慌てて、僕は筆を持ち直した。
「えっと、次は?。」
名簿に書かれた名前は既に全て計測済である。
―― あれ、記入漏れでもあったのかな。――
不思議に思いつつ、記録は余白部分に書き込もうと決めた。
しかし、計測中の伊作先輩を見て思わず苦笑してしまう。
だって伊作先輩が測っている彼は………。
「まずは、座高・2尺3寸6分。胸囲・2尺7分。次が・・・。」
“彼”のその数値に周りの六年生がざわつく。
背後で、潮江先輩が「胸板が薄い」とか呟いているのが聞こえた。
それでも、目の前の伊作先輩と二人の後輩は楽しそうに“彼”を計測していた。
僕の隣では左近が「そろそろ誰かのつっこみが入りますよ。」と少し呆れている。
「そうだね。」
僕もその言葉に頷いた。
「胴回り・6分5厘。」
尚も、計測続行中の伊作先輩が言った数字は明らかに異常だった。
余りにもウエストが細過ぎるのだ。
その記録に驚いた六年生は、測られている彼の正体を確認した。
「伊作っ!。お前、骨格標本のコーちゃんなんて測ってどうするっ!?。」
とうとう、食満先輩が口をはさむ。
今計測されている彼の正体―― それは“骨格標本のコーちゃん”伊作先輩の私物だ。
「食満先輩。いいじゃないですか。先輩達の身体測定終わってしまって暇なんですもん。」
伏木蔵が臆する事なく言ってのけた。
「コーちゃんもわたし達の一員です。」
これまた、乱太郎が言い募る。
そんな二人の言葉に、食満先輩はそれ以上はつっこむ気が失せたらしい。
「と言う訳で…、残りの頭囲も測ろー。」
伊作先輩が巻き尺を伸ばし、頭を測ろうと一歩踏み出した時に脱がさてれていたコーちゃんの頭巾を踏んだ。
「あっ。」
後は連鎖反応で、それに気づいた乱太郎が頭巾を拾おうと頭巾を引っ張ってしまい、それで態勢を崩した伊作先輩の先にはコーちゃんがあって。
伊作先輩はコーちゃんを慌てて掴むも、その衝撃でコーちゃんが分解。
分解した骨は見事に乱太郎、伏木蔵の頭へと直撃した。
だけでは、終わらない。
コーちゃんを分解させた伊作先輩はそのまま派手に転けて薬箪笥に突っ込む。
「伏木蔵――。乱太郎っ!!伊作せんぱいぃぃ。」
叫ぶ左近と彼らに近づいた僕は、二人して散らばったコーちゃんの骨の破片を踏んだ。
あぁ、結果なんて見えている。
僕達は勢い良く転けた。
僕は側に置いてあった硯をおもいっきりひっくり返し。
左近は、まとめてあった各学年の身体結果の紙束を辺りにぶちまけた。
一瞬で静まりかえる医務室。
「保健委員は今日も不運だ。」
誰からともなくそんな呟きが聞こえる。
被害現場へはそれぞれ六年生が手助け来てくれていた。
伊作先輩は潮江先輩と立花先輩に救出されている、左近は中在家先輩が抱き起こし、食満先輩は1年生二人の頭を撫でている。
そんな皆の様子を僕は視界に捉えて安心するけれど、気分は落ち込んだ。
やっぱり保健委員が主役だと無事平穏には終わらないのか。
飛び散った墨に気をつけながら、僕は握り締めていた用紙を確認した。
汚れていたら大変だから。
記録用紙は先ほど変わらなく見える。
―― よかった。無事だった。――
そう思ったのも束の間、僕は名簿に一ヶ所黒い場所を発見して青ざめた。
「大丈夫か、三反田?。」
そんな様子の僕を七松先輩が覗き込む。
「僕は大丈夫です。でも・・・。」
僕の視線は先ほどの見つけた黒い部分へと落ちた。
「あぁ、そこは初めから黒かっただろ。だから、気にするな!。」
「えっ。」
「そこは青影西鶴の場所だ。あいつは今日は課題で来てないぞ。多分、初めから小松田さんが塗りつぶしていただろう。」
七松先輩はそれが当たり前のような表情で用紙を見ている。
確かに、その部分は意図的に黒く塗り潰されており、その記入欄の横には青影西鶴と名前が書かれてあった。
僕はその聞き覚えのない名前に首を傾げる。
「青影先輩ですか。」
その名前を聞いても、どんな先輩なのか僕は瞬時に思い浮かばない。
固まった僕に、七松先輩が手を伸ばし墨だらけとなっていた頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
墨が広がり頭巾は黒く染まる。
僕は呆気にとられ、見上げた先の七松先輩は何時もの笑顔で笑っていた。
「三反田、細かい事は気にするな!!。」
僕の呆気にとられた反応が、名簿の事か頭巾なのか。
どちらを七松先輩が細かい事と指したのをわからないまま、墨で真っ黒になった頭巾を僕がはずしていると
「数馬先輩、大丈夫ですか。」
「先輩ー。わぁっ!墨だらけですね。洗うの大変そーう。」
乱太郎と伏木蔵が手拭い片手にこちらへと来ようとしていた。
「お前ら、頼むから走るなよ。」
僕のその言葉は残念ながら彼らに届かなかった。
走り寄る乱太郎が案の定こぼれた墨を踏ずけ滑り、隣の伏木蔵も短い悲鳴をあげる。
僕の元へと二人はごろごろ転がって来ると見事に直撃した。
七松先輩はしっかりそんな僕達を避けている。
「やっぱり・・・。保健委員は不運だ!。」
三反田数馬は諦めて肩を落とした。
その視界の端に小さな疑問を残して……
++8・青影西鶴++
それなのに名前の横に記入された数字はどの学年よりも多くて、大きい。
三反田数馬は身体測定の結果を読んでいた視線を六年生に向けた。
人それぞれではあるけれど彼らの体格は立派である。
これから3年間過ぎた自分は、彼らのようになれるだろうか。
「数馬先輩!!。先輩、次の計測始まりますよ。」
僕の思考は後輩のその声で中断する。
慌てて、僕は筆を持ち直した。
「えっと、次は?。」
名簿に書かれた名前は既に全て計測済である。
―― あれ、記入漏れでもあったのかな。――
不思議に思いつつ、記録は余白部分に書き込もうと決めた。
しかし、計測中の伊作先輩を見て思わず苦笑してしまう。
だって伊作先輩が測っている彼は………。
「まずは、座高・2尺3寸6分。胸囲・2尺7分。次が・・・。」
“彼”のその数値に周りの六年生がざわつく。
背後で、潮江先輩が「胸板が薄い」とか呟いているのが聞こえた。
それでも、目の前の伊作先輩と二人の後輩は楽しそうに“彼”を計測していた。
僕の隣では左近が「そろそろ誰かのつっこみが入りますよ。」と少し呆れている。
「そうだね。」
僕もその言葉に頷いた。
「胴回り・6分5厘。」
尚も、計測続行中の伊作先輩が言った数字は明らかに異常だった。
余りにもウエストが細過ぎるのだ。
その記録に驚いた六年生は、測られている彼の正体を確認した。
「伊作っ!。お前、骨格標本のコーちゃんなんて測ってどうするっ!?。」
とうとう、食満先輩が口をはさむ。
今計測されている彼の正体―― それは“骨格標本のコーちゃん”伊作先輩の私物だ。
「食満先輩。いいじゃないですか。先輩達の身体測定終わってしまって暇なんですもん。」
伏木蔵が臆する事なく言ってのけた。
「コーちゃんもわたし達の一員です。」
これまた、乱太郎が言い募る。
そんな二人の言葉に、食満先輩はそれ以上はつっこむ気が失せたらしい。
「と言う訳で…、残りの頭囲も測ろー。」
伊作先輩が巻き尺を伸ばし、頭を測ろうと一歩踏み出した時に脱がさてれていたコーちゃんの頭巾を踏んだ。
「あっ。」
後は連鎖反応で、それに気づいた乱太郎が頭巾を拾おうと頭巾を引っ張ってしまい、それで態勢を崩した伊作先輩の先にはコーちゃんがあって。
伊作先輩はコーちゃんを慌てて掴むも、その衝撃でコーちゃんが分解。
分解した骨は見事に乱太郎、伏木蔵の頭へと直撃した。
だけでは、終わらない。
コーちゃんを分解させた伊作先輩はそのまま派手に転けて薬箪笥に突っ込む。
「伏木蔵――。乱太郎っ!!伊作せんぱいぃぃ。」
叫ぶ左近と彼らに近づいた僕は、二人して散らばったコーちゃんの骨の破片を踏んだ。
あぁ、結果なんて見えている。
僕達は勢い良く転けた。
僕は側に置いてあった硯をおもいっきりひっくり返し。
左近は、まとめてあった各学年の身体結果の紙束を辺りにぶちまけた。
一瞬で静まりかえる医務室。
「保健委員は今日も不運だ。」
誰からともなくそんな呟きが聞こえる。
被害現場へはそれぞれ六年生が手助け来てくれていた。
伊作先輩は潮江先輩と立花先輩に救出されている、左近は中在家先輩が抱き起こし、食満先輩は1年生二人の頭を撫でている。
そんな皆の様子を僕は視界に捉えて安心するけれど、気分は落ち込んだ。
やっぱり保健委員が主役だと無事平穏には終わらないのか。
飛び散った墨に気をつけながら、僕は握り締めていた用紙を確認した。
汚れていたら大変だから。
記録用紙は先ほど変わらなく見える。
―― よかった。無事だった。――
そう思ったのも束の間、僕は名簿に一ヶ所黒い場所を発見して青ざめた。
「大丈夫か、三反田?。」
そんな様子の僕を七松先輩が覗き込む。
「僕は大丈夫です。でも・・・。」
僕の視線は先ほどの見つけた黒い部分へと落ちた。
「あぁ、そこは初めから黒かっただろ。だから、気にするな!。」
「えっ。」
「そこは青影西鶴の場所だ。あいつは今日は課題で来てないぞ。多分、初めから小松田さんが塗りつぶしていただろう。」
七松先輩はそれが当たり前のような表情で用紙を見ている。
確かに、その部分は意図的に黒く塗り潰されており、その記入欄の横には青影西鶴と名前が書かれてあった。
僕はその聞き覚えのない名前に首を傾げる。
「青影先輩ですか。」
その名前を聞いても、どんな先輩なのか僕は瞬時に思い浮かばない。
固まった僕に、七松先輩が手を伸ばし墨だらけとなっていた頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
墨が広がり頭巾は黒く染まる。
僕は呆気にとられ、見上げた先の七松先輩は何時もの笑顔で笑っていた。
「三反田、細かい事は気にするな!!。」
僕の呆気にとられた反応が、名簿の事か頭巾なのか。
どちらを七松先輩が細かい事と指したのをわからないまま、墨で真っ黒になった頭巾を僕がはずしていると
「数馬先輩、大丈夫ですか。」
「先輩ー。わぁっ!墨だらけですね。洗うの大変そーう。」
乱太郎と伏木蔵が手拭い片手にこちらへと来ようとしていた。
「お前ら、頼むから走るなよ。」
僕のその言葉は残念ながら彼らに届かなかった。
走り寄る乱太郎が案の定こぼれた墨を踏ずけ滑り、隣の伏木蔵も短い悲鳴をあげる。
僕の元へと二人はごろごろ転がって来ると見事に直撃した。
七松先輩はしっかりそんな僕達を避けている。
「やっぱり・・・。保健委員は不運だ!。」
三反田数馬は諦めて肩を落とした。
その視界の端に小さな疑問を残して……
++8・青影西鶴++