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6・鉢屋三郎
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「あっ!」
隣を歩く雷蔵が何かに気づいたのか声を上げた。
鉢屋三郎が何事かと横を向くと雷蔵の視線の先に、風に煽られて書類を飛ばす事務員が目に入った。
「大変だ。拾いに行かなきゃ。早くあの書類集めないと、また風に飛ばされちゃうんじゃないかな。」
と言ってるそばから、数枚の書類がさらに強風によって散らばる。
「うぁぁ、ちょっと待ってぇぇ~~。」
小松田さんの叫び声。
「どっちの書類を拾うべきか・・・。あっちのと、向こうの………。」
悩み出す雷蔵に、私は声を掛ける。
「私は向こうを拾うから、雷蔵はあちら側を頼む。」
「うん、分かった。」
そう返事をして雷蔵は小松田さんの方へと駆けて行く。
私も自分で言ったのだから、彼らとは反対に飛んだ書類を取りに行かねばならない。
飛んだ書類は木に引っ掛かっている。
塀の向こうまで飛んで行かなくてよかった。
小松田さんの場合、不運委員とはまた違う、何故そんな事に!!と言いたくなる程のへっぽこぶりが発揮されるからだ。
木に登り引っ掛かった書類を取りながら、枝の隙間から彼らに視線を向ける。
散らばった書類を拾い小松田さんに渡す雷蔵が見えた。
悩み癖があるのに雷蔵は、小松田さんを助ける事には悩まなかった。でも、飛んでった書類には悩んでいたけれど。
―― そんな所が雷蔵らしいよな。――
お人好しで心根が優しい。
それでも、しっかりした芯の強さを持っている。
だからなのか、雷蔵と居ると気を張り詰める必要がなくて、彼の隣は居心地が良いのかもしれない。
「書類取れたかい!!。三郎~。」
私はその声を聞いて、即座に木から飛び下りた。
「飛ばされたのはコレで全部ですか?。」
書類を小松田さんに渡す。
「ありがとう。不破君、鉢屋君。助かったよ。」
書類の枚数を数えてにっこりと小松田さんは笑い。
「それに、丁度良かった。その書類、学級委員か保健委員に渡そと思ってたんだ。はい、鉢屋君。」
渡した書類は倍になって私の元に返ってくる。
「・・・。どうも。」
ぼそりと呟いた私に雷蔵は苦笑しながら書類を覗き込む。
「そう言えば、そんな時期だったね。三郎、それ配るの手伝おうか?。」
私も渡された書類に目線を落として内容を確認した。
「いや、いいよ。勘右衛門でも捕まえて手伝わすから大丈夫。それに、あいつ学級だし。」
「そうだね。でも五年ろ組の分は僕が貼っとくよ。」
書類を一枚取ると雷蔵がニコニコと笑う。
「三郎も大変だろうからさ。」
雷蔵の言葉に私は小さく頷いた。
渡された書類は各学年組ごとに配らなければならない。
放課後にそれをするのは、かなり手間がかかる。
―― それに、あの人にもこの事伝えないと。――
書類の内容を見た時に浮かんだある先輩を探さなければいけない。
これは、勘右衛門や雷蔵にも頼めない事。
彼女を見つけるのは少々厄介だから。
三郎は僅に溜め息を吐いた。
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