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失恋のお話 1


月曜は実家から出勤して、定時で帰ると
実家にあった大きいスーツケースを持ってマンションに行った。
恋人は今日も遅いんだろう。
家具以外の残っていた自分の物を殆ど詰めて
またマンションを出た。
居ない間になんて、何て自分は狡いんだろう。
けど、今の気持ちを顔を合わせて何て話せばいいのか
わからなかった。正直、顔を合わせたくもなかった。

実家に戻ると母親が心配してくれた。
恋人が男性なことも何も言わず認めてくれていた両親。
少し落ち込んでいる自分にもとっくに気付かれていた。
「好きなだけうちにいなさい。」
と言ってくれて、泣きそうになった。


実家に来て1週間が経った。
恋人から1度だけ着信があって履歴に残っていたけど
かけ直しもしなかった。
このままフェードアウトかな……
自分が出てきてしまったのだから、それも仕方ない。

そしてまた数日後のある日の仕事終わり、
会社を出たら、恋人が立っていた。
「……久しぶり。」
「うん……」
「食器とか歯ブラシはそのままだったから、すぐ気づけなかった。
もう、帰ってこないつもり?」
何も返事が返せなかった。
「プロジェクト大成功だったよ? 昇進も確実だし
多分もうすぐ辞令が出ると思う。」
「良かった…… おめでとう。」
「お祝い、してくれる? あの店でも……どう?」
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