失恋のお話 1
自分の残業の数日も終わり休日の土曜、起きたら
恋人が朝食を作ってくれていた。
「今日もさ、休日出勤なんだ。会社行ってくるから。」
「……なら、朝飯なんて良かったのに。」
「毎日遅くて家の事任せてばっかだったからさ、
それに自分が朝飯食べたかったから(笑)
プロジェクトも上手く行きそうなんだ。
週明けには決着ついて、もう遅くなることもなくなるから……」
「あのさ。……母親が怪我して落ち込んでるみたいなんだ。
ちょっと……実家に帰ろうかと思ってる。」
「……そうなんだ。そうだね、顔みたら元気出ると思うよ。」
「ゴメン…ね?」
「ん?……うん。じゃ、行ってくるね。」
「うん。行ってらっしゃい。」
恋人が出た後、家中を掃除してゴミをまとめ
洗濯も乾燥まで終わらせてたたんで片付け、
持っていた小さめのスーツケースに着替えを詰めた。
母親は転んで腕を骨折していて、怪我をしたのは本当だけど
『落ち込んでる』は自分のついた嘘だった。
母親は怪我をしても相変わらず明るく、
「お父さんがぜーんぶやってくれるから大丈夫よ?」なんて。
相変わらず仲のいい両親で、お互い本音を晒しあいすぎて
時々派手に喧嘩をすることもあるけど、
自分の両親は『パートナーと生きていく』上で一番の理想だった。