失恋のお話 2
一緒に暮らしていた恋人が出ていってしまっていた。
実家に泊まってくるとも思ってなくて、
久しぶりにゆっくりできる休日の日曜だったのに恋人は居なくて、
せめてろくに出来なかった分、掃除でもしようかと思ったのに、
家中すでにピカピカで、ゴミも明日出すだけにまとめられて
自分のすることは無かった。
新しいプロジェクトのリーダーなんて大役を任され
自分の仕事人生で一番の勝負の時だと思って頑張った。
これを成功させられたら、もっと自分に自信が持てる。
昇進できたら収入も上がるし、
恋人との安定した将来も見えてくる。
最終プレゼンの明日に向け資料の確認をして、早めに寝た。
プレゼンは成功し、ようやく仕事は落ち着いた。
打ち上げしましょうと言われたけど、それは後日にしてもらった。
定時でもないけど今までよりずっと早い時間に
会社を出たから久々に街を歩いた。
今までのお詫びに何かプレゼントしたいと思い、
恋人の好みそうなシャツを選んでラッピングして貰ったり
恋人の好きなシュークリームも買った。
ホントはお揃いの指輪でも買ってプロポーズしたい
くらいの気分だったけど、それはまたにしよう。
「ただいま」と言って部屋に入った。
靴が無いことに疑問だったが、
部屋には確実に恋人がいるであろう空気を感じたから。
たった今までここにいたような、香りも残っていたし。
けど居ない。まだ実家に泊まってくるのかな?
恋人の寝室のドアを開けて驚愕した。
クローゼットの扉が開いたままで、中は空っぽだった。
慌てて家中を調べた。
リビングやキッチンの共有の物はそのままで、
洗面台には歯ブラシも残っていたけど、
殆どの恋人の私物と靴箱の靴が無くなっていた。
スマホを手に取り電話をかけようかと画面に触れたけど、
今の自分は動揺しすぎていて、
冷静に話せそうも無かったからやめた。
まずは自分の頭を整理しなきゃ。
……なんてのは言い訳で、正直恋人と話すのが怖かった。