春
朝か……
あぁ、今日もいい天気だな。
昨日より身体もだいぶラクだ。
窓を開け、外を眺める。
もう桜はすっかり終わっちゃったな……
スマホを見ると沢山のメッセージがあった。
自分にはこんなにも心配をしてくれる家族や仲間がいる。
とりあえず親と仲間のグループラインにだけ体調を伝えた。
身体のシンドさよりも心の方がキツくて、
悔しくて悲しくて、それと孤独に付き合わなくちゃならなくて。
向き合う問題は一旦忘れて、とにかく体調を回復させなきゃと
急に出来た何もしなくていい時間の中で
思い出したのはやはり恋人のことだった。
会いたいな……
声に出して呟いたら目が潤んだ。
スマホが鳴る。恋人からだ!
嬉しくて直ぐにタップした。
「ごめん…。ダメなのわかってるけど、来ちゃった。」
えっ?来てるの?
俺だって会いたいよ。会いたいけどまだダメだよ。
「マスク外さないから、顔だけ見たい。
ホントごめん。でも、心配で…会いたくて……頼むよ。」
自分もマスクをしっかり付けて、ドアを開けた。
開けるなり、恋人は俺を抱きしめてきた。
顔見るだけって言ったじゃん……
けど俺も嬉しくて、自然と涙が溢れた。
バカ……うつったらどうすんだよ。
「大丈夫?熱は?もう胸苦しくない?
1人で苦しんでうなされてたらどうしようって…
気が気じゃなかった。」
ん……もう大丈夫だよ。それよりもう離れなきゃ。
ダメだってわかってるのに、自分も突き放すことが出来ない。
恋人の目も俺を見つめて潤んだ。
「帰ったらちゃんとシャワーしてうがいもするからさ。」
そう言うと、マスク越しで一瞬だけのキスをした。
ちょっ…何してんだよ!
帰ったら絶対着替えて洗濯して、
そのマスクも何か袋にでも入れてから捨てて…
「わかってるよ。消毒も全部、ちゃんとするから。
それよりいい機会だからたくさん寝てしっかり身体休ませてよ?
そんで……治ったらもっといっぱい抱きしめて、離さないから。」
そう言うと、恋人は帰って行った。
もう……今度は俺が心配になっちゃうじゃん。
けど心は暖かかった。
スマホでラインを開き、タップした。
「ありがとう。愛してるよ。」