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海賊パロ






【見つけ出して監禁してやる】






「はぁ、…はっ…はぁ…こ、ここ迄来れば…」

「あっちだ! 追え!」

「居ない、こっちも探せ!」

「くっそぉ、なんでこんな事に…全て、彼のせいだぁ」



腰に付いた短剣を抜かないように逃げてきたが、そろそろ限界だ。 市民を傷つけたくはないが、これも正当防衛かっと近づいてくる守衛達に刃物を鋭く光らせた瞬間に、後ろ手に伸びてきた手に口を塞がれる。 ふわっと香った香りに力を抜けば、優しく手で口を塞いでる腕に合図すれば拘束が解かれた。
後ろを振り向くと、近くだと香る火の香りに安堵し笑った。



「遅くなっちまった船長、わりぃ」

「ううん、寧ろありがとう!よく分かったね」

「常闇からの連絡だ、頭上から探してくれていた」

「うわぁ、僕らの船での1番の索敵氏を僕だけの私情に巻き込むとか面目ない…」

「謝罪や反省は後だ、行くぞ船長」

「未だに慣れないなぁ呼び名が、待ってよ轟くん」



彼の脱出ルートを一緒に駆け抜けながら自分の船まで戻る。 息を潜めつつバレないようにと2人で行動し、仲間が頑張って見つけてくれた乗り場まで足を進めた。 時折、地下水の上で走る音や声が聞こえるが聞こえない振りをして轟くんと走った。 守衛に見つかればタダではすまない。 海賊だからではなく、守衛すら味方につけた恐ろしい海賊に差し出されるからだ。



________



【遡る事数時間前】




「デクくん、ほんまに平気?」

「心配ですわ、私達もご一緒に…」

「大丈夫だよ、寧ろここは海賊はあまり歓迎されない町だ。急いで必要なもの調達して戻ってくるよ」

「俺と轟くんは船の機動エンジンを見てくるよ」

「うん、そっちは任せたよ…それにこうやって船を休ませてる間に調達はしとかないとだし、皆は船を守っといてあげてほしいな」

「わかった!緑谷くんがいうなら頑張るよっ!」

「ケロケロ!任せて頂戴。なにかあったら連絡するわ」



海賊船であり、色んな島や洞窟を探索し金品を探し売り買いする商業船でもある僕らの大事な船が、動かなくなった。 しかもタイミング的に『彼ら』の所有する島でもあった。 このご時世、海賊だから捕まえたら賞金とかいうのより、海賊も良し悪しで捕まらない事も多い。 もちろん悪いやつは流石に捕まるが、僕らの船は商業船と海に出たら海を守る海賊として許可を出している。 そんな僕らとは違い、悪どい、素行も悪い海賊としてはすでに上に立っているのに捕まらない強者が乗る船がある。 その船が所有する島のひとつが、ここなのだ。 宿で名前を書こうものなら確実に寝首を搔かれるであろう。 僕だけが、いや僕らの船だけが命がいくつあっても足りない島ということなのだ。



「それじゃあ、さっき船で話したように、僕、轟くん、飯田くん、峰田くんは顔がバレてるから極力、静かに行動しよう、でも船に詳しいのは飯田くんだから、船の修理に使う物はごめんだけど任せるね」

「もちろんだ、荷物持ちには轟くんを借りるし心配はしないでくれ船長」

「うん、頼んだよ。砂糖くんと口田くんと障子くんは船に残って女の子達を護衛してほしい、例え1人1人が強くても、数には敵わない可能性もあるからね」

「おう!任せとけ!」

「う、うん、頑張るよ!海の小さきものにも頼ってみる」

「わかった、傍の索敵なら心配するな」

「頼もしくて安心するよ、峰田くんと尾白くんは食料の調達を頼めるかな?
峰田くんは宿屋とかなら注意だけど買い出しとかならそこまで顔もバレてないと思うから、飲み屋には近づかないようにね」

「了解したぜ!船長!」

「わかった、しっかり峰田の手綱は握っておくよ」

「宜しくね、それじゃあ僕は…」



笛を取り出して音の鳴らないソレを数回吹く。
すると、黒い影と共に空から舞い降りてきた黒い彼にほほ笑みかけた。新たに仲間になった、索敵要員の「常闇」くんである。 彼の凄腕の索敵と個性のお陰で、今の今まで結構、逃げてこられていた。 だが、今回のハプニングは船であったが為に逃げられない僕らは彼が島に近づく前に離れなければっと常闇くんに島の周辺の索敵を定期的にお願いした。


「何回も呼んでごめんね常闇くん、ダークシャドウも」

「気にするな、そのための索敵要員だ、それに今は敵船も周りにはない」

『ソウダ!キニスルナ! オレトフミカゲ 二 マカセトケバ モンダイナイ』

「ありがとう2人とも、それじゃあ各自、目的を遂行するために行こう、せーーーーのっ!」




『Plus ultraーーーーーー!!』





________




という会話が繰り広げられた後だというのに、肝心な僕が見つかるなんてっと服で口元を覆いながら足早に船へ戻った。 事の発端は些細なことで、まさか村の市民の人達ですら、性格が彼に近くなっているというのは本当だったのを思い知った。 豪に入れば郷に従えというのか…ここが彼らのテリトリーだからといって、街の市民までそんな性格にならなくてもいいのにっと後悔した。 街の中に入り、薬の原料調達の為に店を探していた僕はぬいぐるみを抱きながら蹲って泣いている少女を見つけた。 彼女が握っていたぬいぐるみは僕のぬいぐるみで、「どうしたの?迷子?」と声を掛けた瞬間に顔をあげた少女は笑顔で「デク、みぃつけたぁ♪」と楽しそうに僕の手を掴んで引っ張っていく。 子供なのに力が強いっと思いつつ少女について行けば、笑顔で僕をこの島ではとにかくでかい屋敷に連れてこられた。


「主が待ってるよ、デェク?」

「…なんで、君は…」

「ふふ、あはは、あはははは、あのね、この島はね皆がデクを探してたの、デクを探したらね…その日どころか毎日が幸せに変わるんだって! だからね、待ってた、ずぅっとずっと待ってたのよデク!デクなら私に声を掛けてくれる、だって、だってデクは…我らが主が認めた者だもんねっ」


狂ってる、僕はそう悟った、主ということは「彼」だ。 僕が困ってる人を放っておけないからって酷いにも程があるだろっとフルカウルを発動させ、急いでその場を離れた。その瞬間に可愛らしい少女はさっきとは違う顔で「待って、デク…置いて、行かないで」っと僕の腰に巻いてあった布を掴んだ。助けを求めているような顔に僕は少し足が止まるも、直ぐに後ろから来た守衛に突き出そうとしているのを理解し「ごめんね!君が本当に困った時は必ず助けるよ!」っと言い残してそこを離れた。
僕が行く先々の街並みで人が床に座ったり、僕の人形を抱いたりしている。
ひもじそうに見せておいて、僕を捕まえようなんて最低だなキミはっと未だに会いたくない人物に悪態を付いた。


そんな時にいきなりの警笛が鳴り出し、僕は足を止めて橋の下の窪みに隠れる。 連絡用手段の通信機器を取り出すと、船のものへ連絡をいれる。
八百万さん、葉隠さん、麗日さん、蛙吹さんと4人を護衛していた砂糖くん、口田くん、障子くんも無事らしい。 あとの5人はっと連絡を入れようとした瞬間に、僕の顔の横に弾が埋め込まれた。
見つかったっとさっきの警笛の内容を頭に想い出しながら走り出した。




『おい、街中のモブ共聞こえるか? 俺の可愛い可愛いクソナードがこの街に上陸したって情報を得た、俺がそっちに帰還する前に、見つけ出して、捉えて…監禁しておけ』



そんな放送と共に始まった鬼ごっこだが、凄く楽しくない鬼ごっこだよ、恨むぞかっちゃんっと傷つけない程度に交わし、時折、優しく殴ってはこの場を収めてきた。 だが、それだけではへこたれない強めの守衛格には、いざという時短剣でっと考えた瞬間に、轟くんの助けだ。 助かったよ本当にっと下水通路を走りながら船に戻った。




________



「轟くん!緑谷くん!」

「はぁ、はっ、飯田くん、皆は?」

「無事に決まっているだろう! エンジンの修理はすでに全員で取り掛かり終わっている、今すぐこの街を出よう!」

「うん、わかった…峰田くんと尾白くんは?」

「バッチリ戻ってきてんぜ緑谷!」

「警笛鳴ってから急いで集めたから足りないものあるかもだけど、はい緑谷」

「これ、僕が使う調合用の薬草…なんで」

「絶対買えてないかもってさ、峰田と2人で話してて買っておいたんだ、次の島まではもつか?」

「もちろんだよ!またこれでお金にもなるし、皆の怪我も治せるよ!ありがとう!」


そんな会話をしていると、またも後ろからの発砲にそれぞれが備える態勢をとる。 見つかるのが早い、何故?っと船に乗り込んで板を外せば、急いで船の出港準備を始めた。追いつかれる前に離れなければっと船を動かした瞬間に、感じた違和感に空を見上げた。 何も無い、いや逆に何も無いのがおかしい…僕は笛を吹いて1人の青年を呼び出す。



「常闇くん」

「呼んだか緑谷…」

「君は一体…誰なんだ」

「…」

「何言ってんだ緑谷…どうみたって常闇だろう?」

「それはわかってるよ、そういう意味じゃない…」

「誰って…どういう意味なん?」

「君は、誰の命令で僕の船に降り立ったの」



やっと気づいた違和感に僕は仲間を後ろに避難させて彼を見つめる。
あの日から異様にかっちゃん達の索敵がよくわかるし、逆に彼らが詰め寄る時間も早くなってきた気がしていた。 だが、それは普通に彼らなら出来る芸当だと思っていたからだ。 でも今回は違った。 確実に彼は「敵船は周りにはない」と言っていた。それなのにかっちゃんにこの島に上陸したことがバレるなんて有り得ないと、そこで勘づいた。
最後のヒントは空だ。僕を空から見つけたと轟くんは言っていた。 まるで僕が最初から何かしらに巻き込まれる可能性を汲んで空を徘徊していた事になる。 僕を見つけた後も、命令した「索敵」は続いて居たはずなのに、こんな近くまで守衛が来てるのに何も伝えてこないのが徹底的な違和感だった。




「…何故、そんなことを問う?」

「…君が船に降りてきた時の傷を見た時、助けてあげなきゃって思ったし、その後に、お礼に索敵係をしたいと言ってきた君を信じてた」

「み、緑谷さん?」

「…な、なになに? 一体どうしちゃったの?」

「…緑谷ちゃん、貴方は彼が『敵船のスパイ』だと思っているのね」

「……うん」


その言葉に全員が動きを固めた。 だけど、全員の前で糾弾しないと意味が無かったんだ、彼らは君を僕と同じで大好きだからっと真っ直ぐ彼を見つめた。 彼は長い沈黙の中、ダークシャドウを大人しくさせてから1言「すまなかった」と謝罪してくれた。 普通に謝ってくれた彼に安堵して力が抜けるとその場に座り込んでしまった。


「緑谷、すまなかった、だが命令に背くことは死を認めるのと同義だ」

「…殺しはしないと思うけどそれくらい、彼は今切羽詰まってるってことだね」

「我を派遣するくらいにはな」

「…ふぅん、そっか…かっちゃんの最終兵器を向かわせたって事は、そろそろ謝ってくる頃かなぁ」

「デクくん、また許すん!? これで何度目?」

「お前らの喧嘩だけで島が何個か復旧作業に追われてんだからな!」

「砂糖さんの言う通りですわ、毎回、海賊だけの集まる集会に参加しては喧嘩なさるおふたりに巻き込まれる身にもなってくださいませ」

「君たちが本気で喧嘩すると、島が破壊するんだぞ」

「飯田と俺、あっちだと切島達に迷惑がかかる」



それぞれの言い分に僕はにこっと笑い、彼らを黙らす。
この船の船長は誰?っと聞き返すと全員で「緑谷(デクくん、さん、くん、ちゃん)」と返ってくるので、僕は機嫌よく船の中の舵を持つ。
まだ許す気はないよかっちゃん、君が破壊してくれたオールマイトから貰った特製海賊マイトフィギュアを探し出すまでは絶対に捕まるもんかっと胸に誓いを今一度思い出してから、船を出港させた。






彼らが島について爆破で屋敷を少し半壊させるまであと…











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