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お題メーカーにお借りしました!






めんどくせぇっと考えながら曇った空を見上げる。 授業も終わり、寮までの道のり位なら雨が降ったとこで問題ねェか等と甘い考えをしつつ窓から外を眺めていた。 授業終了の合図と共にホームルームが始まる。これが終われば帰れるっと雨の日の気だるさを早く取り払いてェと上の空で話を聞いていたら、いきなりの名前に面倒くさそうに顔を振り向かせた。


「爆豪、このあと緑谷とコレ、図書室に返しといてくれ」

「あぁ!? なんで俺がデクなんかとっ」

「せ、先生いいですよっ!! 僕一人で行けますから」

「バカか、クラス全員分の資料を一人でとかふざけたこと抜かすな。今日は2人とも日直だろ、頼んだぞ〜以上。ホームルーム終わりー」


先公はそれだけ言うと、れーいと間延びした挨拶で教室を出ていった。 なんで俺がこいつなんかとっと後ろの席をキッと睨みつければ、睨まれた相手はビクゥっと肩を震わせた後に教科書やノートを鞄にいれた後、そそくさと教卓に向かった。 流石にカバンは邪魔だと思ったのか机の横に掛けたまんまで、「よいしょっと」と掛け声付けながら用意されていた授業で使われた資材を持ち上げる。 クソ髪、アホ面、まる顔、メガネ、半分野郎が「手伝おうか?」等と告げているが、アイツは笑顔で「いいよいいよ、それより雨降りそうだし早く帰った方がいいよ」っと答えていた。 確かに雨が降る前に帰らねェとこの気だるさはとり払えねェっと立ち上がりスタスタと教室を出ていった。 後ろから「かっちゃん!!」と聞こえ、足を止めてから振り向くと、ニッコリとした笑顔で「雨だから、かっちゃんも個性的に苦手だよねっ!!気をつけてね」と抜かしてきやがったからギロッと睨みつけてから「そこらのモブと一緒にすんなっ、雨でも俺はつぇー」と告げたら、そいつはまたも睨みつけられた癖に前とは違い怯えず真っ直ぐに俺を見ながら「そうだねっ、キミは誰よりもすごい人だもん」と答えて来たから、胸がもやっとした。
結局手伝ってやるよ等と言えずに俺はスタスタと階段を降りて靴箱に来ると靴を履き替えた。 近くから普通科のモブ共の声が聞こえてきて、またもくだんねぇ内容だろォなっと空を眺めた。
すると、普通科の奴らの方から変な言葉が聞こえ、帰ろうとしていた足が止まった。 その瞬間、俺はきっと自分でも気づかない速さで資料室に向かっていたんだと思う。
呼びかけようとしたクソ髪やアホ面から後に聞いた話だと、今から一人殺しに行くかと思ったとの事だった。



________




階段を早足でかけ登り少し息を切らしながら資料室まで走る。 空は薄暗くなり、やがて窓に雨粒が当たるように激しい雨が降り始めた。 少し暗くなった廊下を走りながら俺はお目当ての相手を見つけ、足を止める。
ソイツは楽しそうに隣にいた男子生徒に笑いかけ、時折怒ってみせるような表情をし傍から見たら、男同士なのにカップルみたいだった。
先程のモブ女子どもの話が本当なら、今隣にいるやつは、デクのことなんざ考えても居ねぇのに、単なるヒーロー科とお近付きになりたいが為のミーハーだぞクソがっとズカズカとその後ろ姿に向かって歩く。その音にきづいたのか、振り向いたデクがビクゥと怯えてから「か、かっちゃん?帰ったんじゃ…」と聞いてきたから「先公にみっかった。テメェ手伝えだとよ」と伝えたら、デクは「だ、大丈夫だよ? 普通科の人が一緒に持ってくれてるから」っと笑ったのがまたも腹ただしくて、隣に居たやつの資料を奪い取り「後は俺とこいつがやる、失せろや」と告げれば、相手はヒィッと怯えながら「じゃ、じゃあね緑谷くん!! さっきの話考えといてねっ」と叫んでから走り出した。呑気に隣のモサモサは手を振って「ありがとう、ここまで〜」っと笑っていた。なんか腹たったから1発軽く殴ると「痛いよかっちゃん、なぁに〜」と涙目で睨んで来た表情に少しだけ心臓がドキッと跳ねた気がした。


「おい、さっきのなんだよ」

「んー、さっきのって?」

「さっきの話ってやつ…」

「あぁ、あれね…皆で出かけませんかーって言われたんだよね…ヒーロー科の人たち誘って」

「はぁぁ!? そんなん皆断るにきまってんだろォがっ!!」



資材を両手に持ちながらゆっくり歩くデクとその横を軽々と資材を持った俺が歩き二人並んだ形になる。 デクは苦笑いしながら「わかってるよぉ…だから断ってたんだよ、そしたら僕だけでも〜って話してたの」っと返答されると、俺の足はついに止まってしまう。 もう少しで資料室なのにっと思いながらも止まった足は動かず、目の前でフラフラと資材を持つアイツの背中だけが瞳に映り込む。イライラとムカムカとグツグツと何かが混ざり合うような気持ちに駆られてはぁーーーっとため息だけが吐き出された。
もちろんその溜め息が聞こえたデクは肩を震わせてから恐る恐る俺を見てきた。大きな目でみつめてくるその顔やそばかすだらけの柔らかそうなほっぺは美味そうだっと変な感情が背中を駆け上がってくるが、これは気づいたらダメな気がするっと目を閉じて深呼吸してからスタスタと足を踏み出して、軽く持ってた資材の棒をべしっと当ててやってから歩くのを続けた。



「ふぅ、疲れたぁ〜。かっちゃん本当にごめんね。本当は一人でするつもりだったのに」

「俺も日直だし別にいーわ、それより先公に見つかったから仕方ねェだろ」


資料室に資料を戻しながら互いに口を開いて話しながら書かれている数字の棚に教材を直していく。分からないものは2人で話しながら探して、結構こいつとの時間にしてはあっという間にすぎていて、久しぶりに幼馴染らしい空気だった気がするなっと感じつつ片付けを終わらせた。
窓から覗く空は既に雨雲で暗くなっていて、雨も未だ振り続けていた。
背中を向けて片付ける相手に静かに近寄り、トンっと資料室の本棚に軽く押してから背中に額を乗せる。 久しぶりのデクの背中は中学の頃とは違って筋肉もしっかりしていた。 初めて抱いた時は、こんな身体付きはしてなかったのにっと昔の【木偶の坊】であるデクは居ないんだと思い知らされた。
なのになんで、なんでこんなにっ…コイツが俺は…俺は…っと何も言わないで抱きしめられているデクの腹に手を回してギュッと抱きしめる事しか出来ないでいた。



「…かっちゃん?」

「…」

「ねぇ、かっちゃん? そっち、向きたい…な」

「……」



デクの言葉に俺は少しだけ力を弛める。
デクは弛められた腕の中でもそもそ動いて俺を振り向くように腕の中に収まると、俺を向いて照れくさそうに笑みを零す。
その笑みに、俺の心は掻き乱されて堪らねぇっと顔が見えないようにデクの肩に顔を埋め、そいつの視線から逃げることしか出来なかった。
電気も付けていない資料室は雨雲と天候の悪さからか、まだ5時前だと言うのに暗く見づらい屋内での2人きりというシチュエーションは普通の恋人同士なら萌えるものだろうが生憎俺とデクはそんなものでは無いと互いに分かっていた。だが、昔に少しの間は身体を重ねた相手でもある事は確かで薄暗いその空気に2人の顔は近づこうとしていた…その瞬間…



“ピシャン”



っと大きな音と共に悪天候のせいでいつの間にか雷まで鳴っていた為に、デクはビクゥっと大きめに肩を震わせて俺に抱きついて来やがった。
そのときにふわりと香った香りは俺のニトロのような匂いで少し、ほんの少しだけだがコイツに俺の香りがっと心のモヤが晴れた感じがしたのを隠すようにギュッと抱き締め返してやる。



「か、かっちゃ、あの…流石にもう暗いし雨酷いし…その、か、帰ろうよ〜雷はやだよ…」

「相変わらず怖いんかよ雷…」

「…だってお臍取られちゃうかもだよ」

「ぶふぉ…おまっ、お臍って未だに信じとんのか」

「だ、だってかっちゃんが言ったんだよ!? 雷が鳴る日はお臍取られちゃうって」

「わァっとるわ…でも普通、その歳になって信じるかよ流石はデクだな」

「ぐぐぐ、か、かっちゃんが言ったからだもん!! かっちゃんのせいだからねっ」

「俺の言葉なんざ、何も…届いてなかったくせにそういうとこは聞くんかよ、言うこと」

「…かっちゃ…」

「…帰るぞ、流石にだりィわ」



床に置いといた鞄を掴んで歩き出す。 デクは鞄は教室だったなっと思い出して足をA組の教室に向けて進ませることにした。
てててっと可愛らしい走る音に俺はイラッとゾワッとムカッが一気に来た気がするが気にせず足を進め、デクの前を歩くことに集中する。


「かっちゃん、待って…まってよぉ…」

「…っ!?」


言葉に足が止まり俺は思わず後ろを向いてしまった。この間、互いに気持ちをぶつけ合ったばかりの時に思い出した俺の後ろを必死で追いかけてくるのと似たような声に俺は言葉無く、手を差し出すことしか出来なかった。
ぶっきらぼうだと言われても仕方ないような「んっ」と言う一言と共に伸ばした手をキラッキラした目であいつは掴んで「かっちゃん!! ありがとう」と笑った。




________




「まぁ、お前と俺が手を繋いだとこで雨が止むわけねぇわな」

「?なんの話し?」

「うるせェ、黙っとけや」

「酷い…それよりすごい雨だねぇ…かっちゃん傘いる? 僕走って行くし…」

「あ? テメェなんぞの施しは受けねぇ」

「施しって…傘持ってきてるの?」

「…ふんっ」

「ほらぁ、かっちゃん雨嫌いだからいつも雨の匂いしたらすぐ帰ってるのに、今日はわざわざ戻ってきたから、傘持ってきてないんだろ?」

「その知ったような口ぶりがムカつくんだわ」

「いた、痛いよかっちゃんーーーー」


鞄を取りに行き、玄関に共に歩いていく間も手は離さずにいたが、靴を履き替えいざ帰ろうとした瞬間の更に強くなった雨に俺のだるさは一層増していく。 隣でデクが空を見上げながら、傘…無くても僕ならっとかブツブツブツブツ言ってるところを見ると、こいつは俺に貸すしか選択肢はねェんだなっと思って手を繋いだまんま空を見上げる。
デクは繋がれた手をぎゅっと握り返すも、悪天候と俺の呟きに答え、先程のやり取りだった訳だ。 ずっとこうしていても拉致があかねェっと俺は隣の相手を見つめてから繋いでいない方の手を差し出す。
デクはその手のひらを見つめた後にカバンから繋いでない手でわたわたと傘を取り出してから俺に渡して「ぼ、僕…走って帰るからこれ」っと持たされ、はぁーーーーっと盛大なため息を吐いてやり、ぐいっと繋いだ手を引っ張った。


「そっからそこだろォが、一緒入ってくぞ」

「えっ、えぇ!? ぼ、僕とかっちゃんがっ!? い、一緒にぃ!?」

「…不満、なんかよ」

「(かっちゃんが、でれた!?)不満なわけないよ、むしろ嬉しいよっ!!」

「…チッ、そォかよ…おら、行くぞ」

「うん!!(と言ってもそれ、僕の傘だよとは言わないで置こうっと)」



クソだせぇオールマイト柄の傘を開くと、折りたたみということもあり1人用の広さに少しだけ窮屈さを感じながらも、隣の相手を見つめる。
視線にきづいたデクは俺を見てから「かっちゃん、濡れるよ?」と俺の方に傘を傾けて来やがるから、俺は「テメェのがぬれんだろォが、もちっとこっちこいや」と傘を引っ張るついでにデクも引っ張り密着する。
傘は俺の方、デクの方と交互に傾いては真っ直ぐになったり斜めになったりを繰り返し、最終的には寮に着くまでの間に互いの肩はびっしょりと雨を吸っていて重かった。だが、心はこの間の謹慎の時よりは少し軽くなっていたのをわかったし、隣で今も「かっちゃんが濡れたら僕心配で…」とかブツブツ言ってるこいつへの気持ちを向き合ってみるかっと一人で口を開いた。



「あー、結局かっちゃん濡れちゃった…だからもう少しそっち側にって…」

「…」

「…なに、今の…」

「……別に」

「今更、なんなのさっ」

「俺が知るかよ…なんとなく、だ」



俺はそっと顔を離せば、相手がぽかんとしている間に寮の玄関を潜り靴を履き替え、スタスタと片側だけびしょ濡れになったまんま共有スペースを通り過ぎようとした。その時に共有スペースに居たアホ面とクソ髪から「爆豪遅かったじゃんか、やっぱり緑谷手伝って…おい、大丈夫か?」と聞かれたので「あ?」っと睨みつけてやれば、アホ面が「顔、真っ赤だそ笑…風邪?」と続けて来たので深呼吸してから一泊置いてから、アホ面とクソ髪に盛大な爆破をお見舞いしてやった。
デクは入ってこない、きっとまだ…玄関で固まっているからっと俺は少しだけ口元を弛め、耳を真っ赤にしながらエレベーターが来るのを待って、4階に姿を消すことにした。



「はっ、クソナードざまァみろ」


と呟いた俺の言葉はきっと、誰にも聞かれなかったことだろう。








________




【その時のデク】



2人で並んで帰って、かっちゃんが濡れないようにって傘を傾けたのに互いに結局濡れて、互いに反対側の肩が制服越しにずぶ濡れになった。
雨が少し止んできた頃には寮の入口まで帰ってきていて、もうこの時間も終わるんだなぁっと屋根の中に入ったので傘を退かして水を払おうとした瞬間だった。
少しだけ時が止まった気がした。
傘を寮側に向け、僕と彼の顔が隠れる位の傘の位置で手を握られ顔が近くなり唇が重ねられた。 初めての感触に、僕は心がかき乱される感覚に陥った。
急な行いだったのに、そこに嫌悪感は無く、ただ彼からの行為を甘受することと目を閉じ、握っていた手をギュッと互いに握りあった。



「…反則だろ、かっちゃん…」



傘を畳めず、寮の玄関(しかも外)の前で蹲った僕は、さっきの彼の表情を思い出してから耳まで真っ赤にした。 全然帰ってこない僕に心配したのか、麗日さんや飯田くん、轟くんまでもが外に呼びに来てくれたので、真っ赤な顔をバレないように3人に「ただいま」と答えた。


これからは大雨で思い出すのはきっと。君とのこと…










END
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