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お題メーカーにお借りしました!






今日は、僕が憧れていた大好きな人の結婚式だ…少しだけ眉を歪めながら、白いタキシードに身を包む彼を、この目で見たくなかったはずなのに、僕は彼の素敵な花嫁と笑い合う姿を視界に入れなくてはならなくなった。
あれは、今のこの日から1ヶ月前に起こった出来事だった。


【1ヶ月前】



家の前に、幼馴染が来ていた。 僕は何かあったのかなっと久しぶりに会った幼馴染を、家に通すことにしたら、中に入った瞬間に彼からの一言はコレだった。


「結婚するんだわ、俺」


この一言に僕の思考は暫くストップしてしまった。
なんで? とか、どうして、とかが浮かんで肝心の「おめでとう」が出てこなくて口が何も紡げなかった。 その瞬間に理解してしまった自分の気持ちに心も何もかもが動かなくなった気がした。


「そ、うなんだ…あ、だから会えなくなるって言う、お知らせ、かな?」


彼へ出すマグカップにアイスコーヒーを注ぎながら氷を数個いれて居間に持って行って、ソファーに腰掛ける彼の前に置いた。
手は震えてないだろうか、声は、出てる? 精一杯の平常心を保ったはずなのに自分自身が分かっていない。


「あのよ、それで…結婚式なんだけど」

「その事なんだけど、あのさ…僕とかっちゃんってさ色々あったじゃない? 今じゃこうやって話せてるけどさ…前まではこういう話すらなかった関係だろ、だから…あのねっ、僕のこと結婚式には呼ばないで欲しいんだ」

「デク…」

「ごめん、今日は具合がよくないみたい、また連絡して。結婚祝いの祝費とかなら、切島くん達に渡してお…「お前なんだっ」」

「…え?」


かちゃんっと音をたてて机の上にマグカップが置かれる。
逃げ出そうとした僕をお追うとしたのか、少しだけ立ち上がりながら真っ直ぐ見つめてきた目を捉えた。


「な、何言って…」

「今日、お前にプロポーズしに来たんだ」


彼の真っ赤に鋭く光る瞳にたじろぐ。 なんでこんな顔をするのっと少しだけ心が騒いだ。



「なん、で…僕何も聞いてない、よ」

「言ってねぇし、結婚式は1ヶ月後のつもりだ」

「僕達付き合ってもない、よ?」

「だけど俺はてめぇとの繋がりが必要だったんだよっ!」



バンっと壁に手をつかれ真っ直ぐ見つめられれば心臓がドキリと跳ねる。 彼が僕との?っと疑問に思いつつ頬を撫でた。 彼は辛そうに目を細めながら僕を抱きしめてくれる。



「何があったの? 話してよ、かっちゃん」

「てめぇが、てめぇがっ、死にそうな時傍に居てやれねぇのはめちゃくちゃ辛いんだよっ」

「…どういう、こと?」




彼は1度ソファーに座り直し僕を抱きしめながら口を開いてくれた。
個性事故にあって、今より少し先の未来に飛んだそうだ。そこでは敵の襲撃で街が崩壊されつつある中で、立ち向かったヒーロー達が次々と倒して倒されていく姿があったらしい。
その中には子供や大人を救ける時に瓦礫の下敷きになった僕がいたそうだ。
瓦礫の下敷きになる前に敵の攻撃をモロに食らってた僕は、意識を手放しながら集中治療室に搬送されたそうだ。
その時に駆けつけた恋人である彼が目の前で面会謝絶で入らせて貰えなかったそうだ。 ん?僕ら付き合ってないのに、そこは付き合ってるの?とは聞くに聞けなかった。

その時にシンクロしたのか、胸が締め付けられるくらい苦しくて僕を失うんじゃないかって、傍に置いて守ってやりたいと未来の自分に思ったそうだ。
その時に目が覚めて、互いにプロヒーローで緊急時でも会えるのは身内だけと聞いたので結婚して籍をいれたかったというのが彼の言葉だった。



「ま、まぁ、一理あるけど…そんなことで、僕と結婚していいの?」

「…籍だけでも良かったんだけどよ、結婚式ってのは花嫁の一生に一度らしいから、しろってババアとジジイが…」

「光己さんと勝さんね…そろそろ呼び名改なよ」

「いいんだよ、んな事どーでも…俺が今必要なのはお前の言葉だ、気持ちなんだよ…てめぇを結婚式には呼ぶつもりはねぇ、一緒に披露する側になるんだわ」


頼む、俺の手をとってくれっと真っ直ぐに見つめてきた君に、僕は何もいえなくなった。


「付き合ってないのに?」

「付き合いなんざ、何十年も前からしとる」

「キスも、そういうこともした事ないのに?出来る?僕相手に…」

「お前でしか抜いたことねぇよ…」

「マジかかっちゃん」


ふはっと笑えば彼は少しだけムスッとしてから僕を抱きしめてきた。



「わかったよ、降参…いいよ、結婚しよかっちゃん」

「俺はてめぇがいねーと、弱さすら隠せねぇんだよ…」

「うん、わかったよ…」



久しぶりに抱きしめた身体は震えていた。




________


【1ヶ月後】



今日は、僕が憧れていた大好きな人の結婚式だ…少しだけ自分がウェディングドレスなのに眉を歪めながら、白いタキシードに身を包む彼を、かっこよすぎてこの目で見たくなかったはずなのに、僕は彼の素敵な花婿として笑い合う姿を隣で視界に入れることになる。
今日は、あの日から1ヶ月後に起こった出来事だった。







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