誕生日おめでとう上鳴!
「あ、あのよ…上鳴っ、その」
「…きいてた?」
「その、わりぃ」
「別にいーよ、でも耳郎に悪いから他言無用な?」
にへらっと笑う俺に切島は「勿論だ!」っと言ってから俺と歩き出す。 そろそろパーティもお開きということで主役は片付けはいいから休めっと言われて追い出された俺は切島の部屋に来ていた。 誕生日プレゼント…欲しいのあるんだって言ったろ?っとあの時の事を告げれば、切島は「俺の部屋は何もねぇぞ?」というものだから、俺からしたらあるんだよっと笑って返した。
男らしさ全開の部屋にやっぱり少し笑ってしまう。 隣は爆豪の部屋かっと壁の向こう側を見つめつつ視線を足元に戻す。 ここで、今伝えて振られたらどーしよっとかうじうじしつつ、彼の部屋のベットで互いに無言で過ごす。 口から何も出てこないっと下を向いていると、切島が先にこの空気を破ってくれた「なぁ、上鳴」っと呼ばれたことに顔をあげ、真っ直ぐとその俺を見つめる瞳を捉えた。俺はその瞳を知っていた、その瞳は間違いなく先程の耳郎が数ヶ月前に俺に向けてくれた瞳…でも、男らしくねぇ!っと叫ぶ切島はきっと自分から言わないとって気持ちなんだろう。 だけど俺も同じく男だ…初めての恋くらい自分から踏み出してぇよっと彼の言葉を遮る為に手で奴の口を覆った。
「まずさ、お前に言わす前に言わせて欲しい」
「…」
「俺さ、好きなやつ居たんだ」
「…おう」
話を聞いてやるという体勢に入ったのか口を動かすのをやめたので手をとって口を解放してやった。切島は俺の言葉に何も言わないまんま辛そうに俺を見た。
「…でもよ、これが恋なのかなんなのかわかんなくてさ、耳郎に告白されて…よっしゃ!女の子と恋愛!とか、俺も春が!っとかワクワクしたし嬉しかったしドキドキもした」
「…ん」
「でもさ、いざ返事返そうとしたらさー…どっかのバカが頭にでてくるわけよ」
「…おう?」
「でも、それだけで…好きとかも何もわかんねぇけど、脳内にそいつがチラついてから耳郎の告白にも返事待ってもらっちまった。いつもなら即座に返したくなるのにな…ほんっとマジで困る」
要点だけ言えばいいのに恥ずかしくて言えなくて、何を話したいかわかんなくて相手の個性が解かれているいつもの手を握って、立ち上がってる切島の顔を見る。切島はその手をぎゅっと握ってから眉を下げ話を聞く体勢を保ってくれていた。
「…だけど、今日さ緑谷と出かけて緑谷と色んなデートみたいなやり取りして思ったんだ…」
「俺さ、切島が好きだったんだなって」
少しだけ貯めてから放った俺の言葉に切島は目を見開いて固まった。そりゃそうだろう。男同士でしかも、結構仲のいいダチにこんな言われるのもっと思いつつ彼の手を握った。切島はあーとかうーとかも言わず立ち尽くし耳まで真っ赤に染め上げていた。 意外な反応で驚いてしまった俺も言ってしまったという今更な感覚に頬が染まっていく。 切島の視線的に気づいてると思ってたから言ってしまったがこんな表情見れるとはっと下を向いて彼の手をにぎにぎと握りながら口を結んだ。
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【side 切島】
あっっっっっぶねぇ、大声出すとこだったぁっと俺のベットの上で俯いて俺の手を握る上鳴の姿にドックドクと血が騒いでるのがわかっちまう。 俺は今日、爆豪に言われるまでこの気持ちが分かんなかったし、上鳴からの視線がそういう意味だったのも気づけなかった。 確かに頻繁に目が合うなーとか思ったし、それはアイツが話す時ちゃんと人の目を見るやつだからって楽観的に考えちまったからなんだけどっと握られた手を握り返せずに真っ赤なまんま固まってしまう。 でも、自覚したらわかっちまった。上鳴だけが目で追ってたんじゃねぇって…俺自身も無意識に上鳴を見てたんだなっと納得してしまった。
「…それでさ、切島」
「お、おうっ!!」
「…ふはっ、そんな驚くなよ…気持ち悪いとか思われてんのもわかっけど…」
「気持ち悪いとかねぇだろ! 俺だってお前が好きだ……あっ…いや、違う…違わないけど違くて…あー、その」
緊張して上擦った声の告白に上鳴は少し黙った後に「切島らしっ」と爆笑し始めた。 そっか、俺らはこんなんでいーんだよなっと何故か思ってしまった。 気取る必要も、告白だからってキメなくてもいいんだよなっと感じてから俺の身体は素直に動いちまってた。 本当に数秒だった気がする。 目の前にあった上鳴の顔は少し固まった後に真っ赤に染まっていき下を俯いた。
「へ? あっ、なに…き、きききりしま」
「…悪い、可愛いって思ったら、しちまってた」
「っく、ば、ばぁか…バカ切島…おれ、俺はちゃんと聞いてねぇのに」
「…悪かった…えと、その…さ、順番バラバラになっちまったけど、言ってもいいか?」
小さく頷いた上鳴を抱きしめてから俺はいつもかっこよくセットしてる金髪の髪を優しく撫でるように触りながら笑う。
「俺さ、…いや、俺も上鳴がめっちゃ好きっ」
「…きりしまぁぁぁぁぁ」
「うぉっ、泣くなってのー、おらっ、目が溶けちまうぞ」
何処かで見た『泣きすぎると目が溶ける』という説を思い出して上鳴を抱きしめ直して背中を軽くぽんぽんっとしてやる。互いに身体を離すと、絡んだ視線は顔を近づけていく度に閉じていき、遂に唇が触れた時に目を互いに閉じて、体温を感じ取った。 その時に握っていた手は所謂、『恋人繋ぎ』になっていて、少しだけ恥ずかしくなっちまった。
なぁ、爆豪、緑谷…俺さ、今…めちゃくちゃ可愛いやつを手に入れられた気がしたんだ。
「そういや、プレゼント何貰いたかったんだ?」
「切島の時間」
「……お前、そーいうとこ」
「…しかたねーじゃん、俺も男の子だし、それにさ、いつも爆豪とばーっか居る誰かさんの時間奪いたかったんだよ」
その明確な言葉は明らかな嫉妬心が含まれているのに気づけば、今じゃ距離を近づけつつある2人の応援しつつ、俺は俺で本気を出させてもらおうっと腕の中の恋人を抱きしめた。
「お、そだっ…誕生日おめでとな!上鳴!」
「ふは、遅いぜ切島ー、でもよ、サンキューな!これからも、宜しく」
俺と上鳴の関係はここから始まった。
END
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