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誕生日おめでとう上鳴!




『あー、あー、こちら瀬呂どうぞ』

『瀬呂か? 爆豪がブチ切れて手におえねーんだけど…そっちどーなってる?』

『…香水店に入ってって、上鳴が緑谷に香水ふりかけてた』

『アイツ、香水を相手に贈る意味分かってんのかな…確か…』

『独占欲、マーキング…だったよなー』

『…ヂィッ』

『すげぇ舌打ち、てか…上鳴、緑谷のこと…』

『…切島?』

『あ、わりっ。なんでもねぇ…』

『………おいくそ髪…しょうゆ面、乗り込むぞ』

『『はぁぁぁぁぁ!?』』

『俺は、恋人が他の奴と出かけてるのをここ迄我慢してやったんだよっ!覚えてろよクソナーーーードっ…帰ったら鳴かす!完膚なきまでに鳴き殺したる!』

『お、おい待てって爆豪! ちょ、瀬呂!2人を避難頼んだ』



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【side 切島&爆豪】




くそっ、くそっ、くそっイライラが収まんねぇ…元々、前から聞いていたとは言えあほ面の為になんで俺がこんなっと瀬呂が言っていた香水店へ足を運ばせる。 1週間ほど前に恋人である緑谷出久…デクから上鳴の誕生日を祝いたいと告げられた。 皆で内緒で計画した為、くじ引きで決めたとはいえ、デクがまさかの誕生日プレゼント選び係になるとは思わず言葉が出なかった。
俺とアイツが付き合ってることは内緒だし、俺も言おうなんて思ってねぇから止めることも出来ねぇから送り出すしかなかった。こんなことなら公にして俺のってつなぎ止めとけば良かったっと後悔しかしてねぇ自分に更にイライラした。 流石に気になりすぎてクソ髪呑みに俺とデクの事を伝え2人の動向を追うために尾行したのだが、距離が近すぎていつ飛び出すか分からないくらい腸が煮えくり返る気持ちだった。 あほ面は殴って爆破するとしても、デクへのお仕置が決めかねていた。周りに言わないと言ったのは自分だ。デクは「み、皆には言っとく?」と小首を傾げて上目遣いで聞いてきたのに俺は「あ? てめぇと付き合ってるとかバレたくねぇし必要もねぇだろ」と面倒臭い事になりたくない為に伝えた言葉がこんな事で後悔するとはっと掌で爆破をしつつ舌打ちをした。

隣を歩く切島は先程の瀬呂との会話に黙ったまんまだ。 めんどくさい事この上ないのはコイツの事でもある。 あほ面が好きなら好きだと言えばいいのにめんどくせぇっと香水店に足を向けながら隣のウザイ友人を見つめた。


「…なぁ、爆豪、マジで行くのか? 帰ろうぜ?」

「あ? てめぇには言ったよな? アイツは俺のもんなんだよっ、やすやすと他の男に贈られたもんを受け取らせろって言いてぇんか」

「…確かに、横取りとか、それは男らしくねぇけど…香水とかなら…上鳴が渡してぇなら…」

「…チッ、うじうじうぜぇんだよ!男らしくねぇのはどっちだこのクソが! 何よりも男らしくねぇのは自分の恋人を誰かに取られんのを見てるって時点で男らしくねーんだよボケっ! 俺はな、自分のもんが自分以外を目に写す時点でムカつくんだよ!あほ面の気持ちなんかしるかよっ、俺がデクを渡したくねぇだけだ、覚えとけクソが!」

「でもよ、上鳴も緑谷が…」

「んなもん知るか!てめぇがどうしてぇんだよ! さっきからあほ面あほ面って、テメェの気持ちはどこにあんだっ」

「…っ」


俺の言葉に顔をあげた切島は自分の胸元をぎゅっと握ってから両手で自分の頬をぱんっと軽く殴ってから深呼吸した。 いつもの瞳で俺を見ると「行こうぜ、爆豪!俺、全然男らしく無かったわ。まだ俺…アイツに何一つ告げてねぇ!」っと言ってから覚悟を決めたように歩き出した。




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【side 上鳴】


俺と緑谷は互いに香水を選んで居ると、緑谷が俺に赤い香水を差し出してきた。 赤?っと珍しく選ばれた色に目を丸くして緑谷を見つめた。 緑谷は笑顔で「これね、香水にしては香りがあんまり無いらしいんだけど…上鳴くんにはなんとなく赤かなぁって」と笑った。 俺は香りじゃねーの?って聞き返すと「香水ってね、独占欲の表れなんだってさ上鳴くん」っと告げてから俺が渡した香水を棚に戻しながら緑谷は俺を振り向いた。


「上鳴くんが独占したいのって、僕じゃないでしょ?」

「…えっ」

「ふふ、今日さ…一緒にいてわかったんだけど、上鳴くんって僕と話してる時、誰かさんの話しかしないんだよ、気づいてた?」


顔を下から覗いてきた緑谷にドキっとしつつも、その言葉になんとなくだが身に覚えがあるため黙ってしまった。 緑谷は俺に黄色い香水ではなく赤い香水を選んだ。赤なのに香りは控えめでスッキリとしたような香りだ。汗臭いどっかの奴にはかけ離れた香りなのに思い出してしまう綺麗な赤の水に俺はふはっと笑ってしまう。


「上鳴くんは、2人で出かけたことないから…ちょっと意地悪しちゃってごめんね、実はね…」


俺は緑谷のその言葉に目を丸くしてから「帰ろうぜ」っと告げた。 自分の気持ちに気づいたのも遅いし、2人で出かけた理由があんなんなら、なんだか緑谷に踊らされてたみたいで癪だが仕方ねーかっと香水店を出た。 すると目の前には三者三様というようにそれぞれのなんつーかその人って感じの待ち伏せされててちょっと笑う。
店の目の前の椅子にイライラしながら貧乏揺すりしてるヴィラン顔した奴と付き合わされた後に2人の面倒を見ていたのかヴィラン顔した友人にテープを巻き付けてる奴と、なにかいいたいのかめちゃくちゃそわそわしながら俺と緑谷を交互に見ては視線逸らしてを繰り返していた奴を見ながら2人の男に駆け寄った。


「切島、瀬呂!」

「よ、上鳴。誕生日プレゼント決められたか?」

「ん? いや、帰ってから貰うことにしたわ」

「帰ってから?」

「ん、欲しいもん…寮にあるみたいなんだわ、俺」


俺はスタスタと切島と瀬呂の腕を掴んで歩き出した。 その後ろを付いてこようとする幼なじみに振り向いてから緑谷の方を見つめながら笑った。


「緑谷、今日はあんがとな!」

「ううん、プレゼント…貰えるといいね」

「…おう、そうだなぁ、爆発さん太郎みたいに言うなら…」


俺は振り向いて緑谷と声を揃えて言葉を紡ぐ


「『プレゼント、貰い殺したる』」


だなっ、だねっ!っと2人で顔をニカッとさせてからもう一度歩き始めた。
俺が前を向く前にチラッと見えた背後の2人は多分爆豪からだろう、小指を差し出して、その小指を絡めてから互いの指を少しずつ少しずつ重ねながらしっかりと手を繋いでいるのだろうと見なくてもわかってしまった。


「あー、甘いなぁ」

「上鳴?」

「…なんでもねーよ、なぁー切島ー」

「ん?」

「俺が欲しいもんさ…切島に言うからさ、用意してくれよな」

「え、なんで俺だよ…寮にあんだろ?」

「そそ、寮にあっからさ…お前からくれよ!ダチだろ!」


俺が笑いながら切島の肩に腕を乗せ抱きつくと、切島はいつものように俺を抱きとめながら笑って「仕方ねーなっ」と言ってくれた。 傍にいた瀬呂はなんとなくわかったのかスタスタと先を歩いて行ってしまった。



彼はくれるだろうか? もらってくれるだろうか? と少しだけの期待と、少しだけの緊張を胸に秘めながら俺は皆が準備していた寮へと走り出した。




④へ

※勝デク要素強め



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