誕生日おめでとう上鳴!
それはある日の事だった、共用スペースにて峰田と障子と共に雑誌のグラビアアイドルについて語ってた時だった。 急に後ろから「か、上鳴くんっ」とたどたどしい声が聞こえて振り向くと、クラスメートの緑谷出久が立っている。 珍しく視線をさ迷わせながら俺に話しかけてきた緑谷に顔だけ振り向けば「話が、あるんだけどっ」と言われ、峰田と障子に一言掛けてから椅子から腰をあげた。 俺、なんかしたっけかなぁっと考えながら緑谷の傍に行けば、緑谷は少しだけ頬を染めながら視線さ迷わせたまんま俺を見ては顔を俯かせるを繰り返す。 痺れをきらしそうになる俺はどっかの爆発さん太郎みたいには直ぐに切れるのはなんかなぁっと思いつつ黙って待つことにした。
暫くしても「あの、そのっ…」とか言う緑谷に俺は流石に少しだけ冷たい声で相手に「用がねーなら、戻ってもいいか?」と告げ、踵を返そうとすると、くいっとシャツの裾を引っ張りながら耳まで真っ赤にした緑谷が口を開いた。
「あ、明日!なんか用事ありますかっ!」
その声は結構な声量で、少し離れていた峰田や障子、口田、砂藤達にも聞こえていたみたいで、彼らもなんだ?っとこっちを見てきた。 流石に大声過ぎたので「バカ、緑谷っ、声がでけぇ」っと彼を引っ張って少し奥に移動すると緑谷も「ご、ごめんねっ!迷惑だったよね」っとしょんぼりした。その姿に俺は「別に怒ってねぇし…用事あったんだろ」っと話を続けられるように聞き返せば、先程ので緊張がとけたのか笑顔で「うん、あの…明日用事が無ければ一緒に出かけたいんだ」っと真っ直ぐな瞳で見つめられれば俺は無理とは言えずに「おー、いーよ。どうせ暇してるしな」っと告げてから彼の頭をわしゃわしゃっと撫でてやった。 その瞬間に同い年なのにっと頬を膨らました緑谷に少しだけドキッとしたのは内緒だ。 そして、後ろから少しゾワッとするような睨みに身震いしたのもまた緑谷には内緒にしておこうっと峰田達が待つソファーに戻った。
部屋に戻ると、電気を消したまんま部屋のベットに寝転んだ。 頬を染めながら一生懸命に誘う緑谷を思い出しては少し口元が緩んでしまう。 いやいや、自分は何を考えてるんだよっと首を振りつつ「明日、なんかあったかなぁ」っと呟いてLINEを開く。 LINEには緑谷からメッセージがきてて「明日の朝10時に寮の門前でお願いします」っと丁寧な文章にぶはっと吹き出してしまった。 ダチ相手へのメッセージじゃねぇだろっと思いながらもその返信にスタンプをひとつ送ってからアラームをセットして携帯の画面を暗くし枕元に投げ捨てた。
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次の日は1時間前に起きて簡単に私服に着替えて充電器や携帯、財布などを突っ込んだ鞄を引っ掴んで部屋を出た。 今日は平日だが俺ら雄英生徒は休みだった、なんか学校メンテに伴うなにからしい。 まぁ、学校移動とかする凄いとこだもんな。メンテも入るのは仕方ねぇかっと靴を履き替えて寮を出た。 少し歩くと寮の門前に見知った顔がある。目は男にしてはくりっとしていて大きくて、頬も柔らかそうでそばかすが散ってるところも彼の魅力だろうっと考えながら片手をあげて彼の名前を呼ぶ。 「はよ、みどりやー」っと声を出せば携帯をいじってた緑谷は俺を見つけるとぱぁっと笑顔になり駆け寄ってきた。ん、可愛いっと思うも咳払いした。
緑谷にしては珍しくシャツにハーフズボンじゃねーんだなっと思いつつ笑う。 彼はいつもとは違う格好をしていた。いつもの格好でも良かったのになんだか洒落こんだ感じでわざわざ俺のために考えたんかなぁとか思っちまった。 その考えに少しだけ口元がニヤけそうになったから手で覆うと緑谷は「上鳴くん? 具合、悪い?」っと顔を覗き込んでくるもんだからまたもその優しさにキュンってした。
「いや、大丈夫大丈夫。それより、どこにいくんだよ」
「うん、あのね…か、上鳴くんって今日誕生日でしょ? だから、そのっ…欲しいものわからないから、一緒に選ぼうかなって」
「へ? お、俺の誕生日プレゼント!?」
「う、うん…あの、迷惑だったかな?」
「迷惑なわけあるかよっ!俺自身忘れてたからすげぇ嬉しいぜ!サンキューな緑谷!」
俺の言葉に昨日と同じでぱぁっと笑うと、良かったっと答え俺の手に自分の手を重ねてくる。 これは所謂手繋ぎだよな?っと思いながら狼狽えると、緑谷がはっと顔を赤くしながら手を離した「ご、ごめんっ!こんな汚い手と繋ぎたくないよね、ボロボロだし」っと告げ俯く相手に俺は「んなことねぇよ、お前が頑張ってきた証じゃんか」っと俺から手を握り直した。その瞬間、緑谷がぽふっと赤くなるもんだから「真っ赤」っと笑ってやった。
俺は緑谷と手を繋いだまんま、門を通り過ぎて駅に2人で並んで歩いていった。
後ろから着いてくるこの後起こる惨劇を忘れて
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