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幼馴染





【かっちゃん!】




こんにちは、緑谷出久です!ヒーロー名はデクです!

実は僕…本日、登校前に個性事故にあって、ひとつの単語しか言えなくなりました。

その言葉がなんと…



「おはよう緑谷」

「おはよう!デクくんっ!」

「おはよう、緑谷くんっ!」

「かっちゃん!」

「…?????爆豪くん?」

「爆豪なら居ないぞ緑谷」

「爆豪くんは、先に教室ではないか?」



3人に僕は急いで口を抑えてから、携帯のメモにスススッと言葉を書いて彼らに見せる。



『個性事故にあったみたいで、実は…かっちゃんしか言えないんだ』


その言葉に、3人は目を丸くした。



________




「それで、お前らが変わりに代弁してやってんのな」

「任せてねデクくんっ!」

「面白い個性に掛かったなぁ緑谷ー」

「…」

「おっ、やっぱり話さないように頑張ってる…なぁ、その単語って一体なんなんだよ?」


瀬呂くんからの質問にビクッと肩をはね上げつつ、僕はふるふると口を抑えた。 少しでも発した時は爆破ものだっと携帯に軽く書いてから彼に視線を捧げた。 彼は文章を見てから、ぶはっと笑ってから「リョーかいっ」と答えてくれた。


相澤先生には既に伝えてあるので、本日の授業で僕が当てられることは無かった。 優しいっと心で感謝しつつ、昼ごはんを食べるために席を立つと、ぐいっと手首を引っ張られ、ぽすりっと後ろに体重をかける形になった。
ふわりと香った甘いニトロの匂いに僕は上を向いて相手を見つめる。



「…っ」


思わず出そうになった声に僕は慌てて口を抑えた。
彼はちっと軽く舌打ちし、僕の手を掴んでスタスタと歩き出す。向かった先は購買で、適当な辛そうなパン、僕の好きそうな甘ったるそうなパンを買い込んで屋上に連れてこられた。



「なぁ、喋れやクソナード、ここなら誰に聞かれてもいーだろーが」

「…」


ふるふるっと首を振る。 彼にバレる訳にはいかないのだっと目で訴えて彼から視線を外した。 彼は苛立ちながら僕の手を掴んで引っ張ると腕の中に僕を収める。 優しさが混じったその温もりにぎゅーっと黙ったまんま抱きついた。



「…声が聞きてぇ、どんな言葉でもいいから、デ…出久」

「…っ」


話してしまいそうになる唇を紡いだまんま、僕は彼の胸元にグリグリっと頭を擦り付けた。 言いたい、言いたいけど伝えて嫌われたくないよっと揺れる気持ちのまんま彼の背中に手を回した。

ふと顔をあげれば、そこには目いっぱいに彼の顔が映り込んできて、唇が奪われる。 「好きだっ」と声には出さない彼の声が聞こえたきがした。



「…ちゃ…」

「…?」

「…かっちゃん…」


僕は涙をポロポロ流しながら、その単語を伝えた。
彼は急に泣き出した僕に少し狼狽えつつ、ぎゅっと抱きしめてから背中を撫でてくれる。 その優しさに、僕は更に涙を流した。




________



しばらくして泣き止み、もぐもぐとパンを頬張る。
彼ももぐもぐとパンを食べながら、僕を足の間に座らせた体制のまんま、腹に手を回し離さないように抱きしめてられている。



「かっちゃん…」

「テメェの単語、それだったんか」

「かっちゃん」

「あー、喋らんでいい…かっちゃかっちゃうぜぇから」

「…かっ…」


口を抑える。声を発っそうとすると出るので、僕は彼から退こうと身体を捩る。 彼がなにしとんだ、お前はっと聞いてきたので携帯を取り出して『煩いだろうから、切れるまでは離れようと思って』と打ち込んで彼にみせた。

すると、はぁーーーーっと大きなため息をついた彼は僕の額にコツンっと自分の額を合わせ、顔を近づけてきた。


「変な勘違いすんなや、うぜぇってのはお前への意味じゃねー…」

「…?」

「名前呼ばれる度にキスしちまいたくなんじゃねーか、だからうぜぇってのは俺自身の為に言ってんだよ…」


そんなふうに自分の気持ちを伝えてくれた彼に僕は飛びついて「かっちゃん、かっちゃん、かっちゃん」と何度も呼んだ。そんな僕に彼は諦めたのか「んだよ、出久」っと優しげに呼んでから、ちゅっと口付けをくれた。




________




【次の日】




「おはようデクくん」

「あ、おはよう麗日さん」

「おぉ、無事解けたんやね!」

「うん、お陰様で…昨日は助かったよありがとう」

「ううん!デクくんの役に立てて嬉しいよ」


そんな会話をしながら教室に向かえば、後ろからきたかっちゃんに膝カックンされた後に「ちんたらしてんじゃねーよ出久」っと言われながらも、彼の姿を捉えてから後ろに引っ付くように「待ってよかっちゃん」と走っていく。

彼は足を止めた後に僕を振り向いてから、校舎の外なのに唇を重ねてから満足そうに歩いていった。



「なっ、なにすっ…もう!かっちゃん!!!!!」



僕は恥ずかしさを隠すために彼を追いかけていった。

その日の校舎でのニュースは僕たち2人が取り上げられていた。






END
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