幼馴染
『熱愛!? ヒーローの卵、大爆殺神ダイナマイトが高校生ながらに夜の街!?』
高校3年に上がって、平和を取り戻したこの街に急に報道されたこの事件に、皆がザワついていた。 それもそうだ、写真を撮られた日付、角度、場所などを推測しても彼はこんな場所には行っていない筈なのだから。
なのに捉えられたこの現場は、どういう作りになっているのか僕は持ち前のブツブツで推測することにした。
「流石に高校生だからなぁ…先生達が否定してくれてるけど」
「爆豪とこの日のこの時間居たのって緑谷だけだろ?」
「でも、僕が言っても…仲悪い僕だし、信憑性無さそう」
「問題あるのか?」
「え? 轟くん?」
「恋人なんだし、夜に一緒でもおかしくねぇだろ」
「ああああ、あーーーー、轟くんっ!!」
『(あっ、やっとくっついたんだ/察し)』
皆の空気も相まって恥ずかしくなる僕は狼狽えつつも周りに手をパタパタさせた。 あ、あのね!ちが、違うんだよっと真っ赤な僕の否定など聞いてはくれやしないクラスの面々はほんわかと見守ってくれていた。
「でも、かっちゃん…毎日22時には寝てるから、この写真がおかしいんだよね」
「例えば?」
「ほら、この目の前の公園の時計みて?22時過ぎてるんだよ」
「確かに…だから深夜なんだもんな…」
「しかもここ、彼の肩幅や手にしては骨格が違うと思うんだ…」
「んん?」
「彼のはもっとこう、なんて言えばいいんだろう…骨の形もしっかりわかってさ…僕の腰を掴む時とか…あれ?皆どうしたの?」
『(友人のシモ事情とかききたくなかったわぁぁぁぁぁ)』
と周りが思っていたが黙ってのみこんでくれていた。
今、この状況を他の人が見ていたら思っただろう、お前ら幼馴染の『不仲説』どこいった?っと。
でも、仲がいいのに越したことはねぇかっと皆が笑った。
「でも、本当にこれは…一体…でも、どこかで見たような?」
「何見とんだ…」
「ふぁ!? わっちゃん!?」
「誰だよわっちゃんって、んで…なんだこれ」
「かっちゃんの熱愛だってさ〜」
「くだんねぇ…つか、この日俺は…あぁ、あん時のか」
「ん? なんかあったっけ?」
「ん、飯食いの…」
「…あぁ、あの日22時回ってたんだねぇ」
幼馴染は周りを蚊帳の外にして話を始めている。 僕らは話しながら、キョトンとする周りに「これ、かっちゃんと僕のお母さん」と話せば「はぁぁ?」と寮内が叫び声に包まれた。
「家族ぐるみでご飯食べに行ったんだぁ」
「そんときのだろ、ほら…コケそうな時に支えたやつ」
「あったあった。かっちゃんのお父さんとお母さんも心配してたっけ」
「引子さん、怪我なくて良かったよな」
「うん、ありがとうかっちゃん!」
「つか、その日のこと忘れとったんか…マジでクソだな」
「もう、クソって言わないでよ〜、その日は色々あったから、少しすっぽ抜けてただけだし」
「どーだか、アレだろ記念日忘れるタイプ」
「忘れないし!!」
そんな僕らの会話に周りは「なんだよ」「幼馴染紛らわし」とか色々言われたけど、内緒事はもう一個あるんだ。 実は僕とかっちゃんの胸元には指輪が下げられている。 この食事会は、僕とかっちゃんの関係を話に行った時のなのだ。 高校生の間は流石に公には出来ないが、卒業して、互いが18になったら籍を入れると誓いあって覚悟を決めて両親と向き合った。
お母さんもかっちゃんの両親も最初は困惑していた、だけどかっちゃんと僕が敵との戦いで負った傷や、気づいた気持ちを正直に話すと、3人とも分かってくれたのだ。 そして、3人に見守られながら紙に署名し、親の印鑑と署名を貰い、爆豪家に保管してもらうことになった。
「かっちゃん、これからも宜しくね」
「ふん、たりめぇだ…勝手にくたばったら俺が殺す」
「それはやだなぁ…ねぇ、君も、ちゃんと僕の元に帰ってきてね」
「…わーっとる」
そんなふうに話しながら手を繋ぐ僕らに皆は「見せつけてくれちゃってー」と笑いながら、ことの発端を先生たちに説明しに行ってくれた。
もう、僕と彼の記事にきっと【不仲説】とは書かれない未来になるようにっと皆がスペースから出ていったのを確認してから視線を合わせて唇を重ねた。
END