「かっちゃんの好きなタイプって誰？」


それは幼馴染兼、恋人からのセリフであった。


「…おーい、緑谷何言ってんだ？」

「流石のかっちゃんも固まってんぞ」

「好きなタイプはお前に決まってるだろ」

「それはちょっと違うんだよね」

「あ？ はぁぁぁぁぁ!?」



それはいきなりの前触れもなく言われた言葉だった。


「待てって緑谷、どういう意味だよ」

「付き合っている＝理想のタイプではないって事だよ切島くん」

「はぁい？ んじゃあ、なんだ？ テメェは好きじゃねーやつと付き合っとるってか？ あぁ？」

「こっわ…違うって、うーん…説明が難しい」

「というか、いきなりそういうの言ってきた理由なによ」


瀬呂に聞かれた緑谷はうーーーーーんった少し唸りつつ、口を開く。



「麗日さん、芦戸さん、葉隠さん、蛙水さんに言われたんだ」

「余計なことを、あのクソモブども」

「緑谷って、爆豪と付き合ってるけど、好みのタイプなの？って」



そこで瀬呂と上鳴はピンッときたらしく、そういうことなっと頷いている。
切島と俺は分からずに2人の様子に苛立ちを覚えた。


「そして、考えたらさ、僕がかっちゃんを選んだのは性格、顔とかじゃないっていうのがわかったんだけど…どーしても、タイプって言われたら出てこなくて、かっちゃんはそういうのあるのかなぁって」

「あー、でもあるよなそういうの、好みと付き合うのは違うってやつっしょ？」

「わかるわかる」

「…なんつーか、要するに、爆豪は好きだけどタイプとはちげぇってことか？」

「うーん、そうじゃなくて…難しいなぁ。僕はかっちゃんが例えクソを下水で煮込んだ性格でも、幼馴染だから本当は優しいところがあるのも、愛情が1倍一途に強いところも、尊敬するところも、憧れる所も沢山あるのを知ってるから、なんというか、付き合うって言って、そのまんま籍入れて、墓も一緒だと思ってる僕が居るんだよね」

「べた褒めじゃねーかよ、カッチャン」

「…ふんっ」

「でも、それはあくまでも僕の気持ちであって、かっちゃんのタイプとはまた違うわけで…うーーーーん…」



またも頭を悩ませる姿にクソかわっと思いつつ、モサモサの頭をぽんっとする



「ナチュラルにいちゃつかなーい」

「うっせ」

「んで、緑谷は結局どういう意図でそれ聞いたのよ」

「要するに、この先も君と添い遂げるなら、君のタイプに少しでも近づきたいってこと」



少し間があったが、その瞬間に俺の頭がBoooMと音をたてて破裂した気がした。 可愛すぎかよ、結婚すんぞクソが



「それで、誰かを聞いて、その人に近くなりたいってことな」

「うん！だって、かっちゃんが今は僕を好きでもタイプが違うって気づいたら、捨てられるかもなんだよ？ だったら、僕も変わるべきかなって！」

「ヒュー♪カッチャン愛されてるぅ〜」

「うるせー、そしてさっきからさりげなくかっちゃん呼ぶなやアホ面」

「ひどっ!?」

「いい心意気だぜ緑谷！ 俺は応援すんぞ！」

「何の応援!? いや、かっちゃんのタイプ聞くだけであって…」

「…んなもん」


俺の開けた口に4人がバッと振り向く



「…ガキの頃から一択だわ、どんだけ強くなっても、先を歩いてても、ムカついても、隣並んでも、そいつ一択しかみえてねーんだよ俺は」


くだんねーっと言えば、スタスタと共有スペースに背を向けエレベーターに向かった。

後に数秒固まってたアイツらが4人とも真っ赤になって、叫んだ声に色んな奴が根掘り葉掘り聞くことになるだろう。




「タイプなんざ知るかよ、俺のタイプは緑谷出久なんだから、変わろうとしてなれるもんじゃねーよ、変わってくお前すら好きって事だわ、クソナードが」


ボソッとエレベーターの中で呟き、それを聞いてるものは誰もいないのだ。








END