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幼馴染の凄さをしる





【昼休み・食事】



「今日は僕、カレーにしようかな!かっちゃんみたいに辛いの食べてみたかったんだぁ」

「やるな、緑谷…」

「胃が爆発するんではないか、緑谷くん?」

「大丈夫だよ!定期的にたまに食べてるし、ね!かっちゃん!」

「っ!?」

「居たのか爆豪」

「……っせぇわ、フンっ」

「こら、爆豪くん!待ちたまえ!その態度は酷くないか?」

「着いてくんな!!」

「…?」

「どうしたの、轟くん?」

「…いや、なんつーか、いつもの爆豪にしては珍しく攻撃的じゃねーなってさ」

「そんな、かっちゃんがいつも爆破してるみたいに」

「あいつならしてるだろ、俺とお前が2人のところ見てる時点で…」

「…ちっ」

「あ、おい…緑谷?」


手を伸ばした轟の声を無視して歩き出した緑谷はカレーを注文し飯田が取っていた席に腰掛ける。 近くとは言い難いが少し離れすぎてない位置に彼は居た。 目の前の食べ物を見ると、緑谷と同じカレーなのに口元が緩む。 きっと、麻婆とカレーを天秤にかけた結果なのだろうと、いつもは口にしないカレーを簡単に緑谷は平らげていた。 それを見つめる轟の表情は少しだけ楽しそうにしつつ、一言「お前らめんどくさいな」と言い放った。



________



【昼休み・クラス内】



そんじゃーまー、行きますかっと1人の少年が立ち上がり、爆豪の机に歩いて行った。 傍から「お、おい、緑谷?」「どったの、緑谷ー」などと声がかかるが知ったこっちゃねーっと珍しく1人で机に座る少年の首根っこを掴んで立たせてやる。


「うぉ、い、いきなりなにすんだ…って、え、デク?」

「かっちゃん、今日は午前の部ご苦労さま。どうだった? 僕、ちゃんと出来てたかなぁ?」

「…なにがだよ、お前は普段通りなんだろ、あれが」

「そう、あれが僕から見た僕だよかっちゃん。わかったら、もう少し距離改めようよ、近いんだよ君って毎回さぁ?」

「それを言うならテメェだって切島達と距離ちかいじゃねーか!舌、切ったからちゅ、ちゅーとか!なにそれ、聞いてねぇよ」

「してねぇぇぇぇぇっわ!きしょいこと抜かすなや!アホ面は後でシメる!」

「いきなりの殺し宣言!? どったの緑谷!?」



2人の会話にざわざわと周囲がざわめく中、普通に上鳴が突っ込んだことでそばに居た耳郎、瀬呂、轟が口を開く。


「幼馴染ってすげぇよな、めちゃくちゃ似せてくんだもん」

「流石に心音は騙せないけどね〜、かっちゃんって呼ばれる度に心臓跳ねさせて、すごいったらないよ、平常心めちゃくちゃ頑張ったじゃん」

「俺もさっきまではマジで緑谷だと思ってた…幼馴染はすごい」


それぞれの言葉に傍に居た周りは更にザワついた。すると、ズカズカと気にせず人に意見する委員長である飯田が手を動かしながら睨み合う2人に声を掛けていた。


「ど、どういうことだい緑谷くん」

「あ? 3人の言った通りだろーが、理解できねぇのかよ委員長の癖によぉ」

「かっちゃん! 普通は理解出来るわけないだろ!」

「キッめぇぇぇぇわ!その顔で俺の名を呼ぶんじゃねぇ!」

「君のその表情のせいで僕の表情筋死ぬ気がするよ!」


ギャイギャイと叫ぶ2人に飯田は疑問符を浮かべ、そばにいた瀬呂と轟がクラスメートに告げる。



「理由はわかんねーけど、朝から緑谷と爆豪が入れ替わってんだよ」

「俺もさっき、やっと食堂で気づいた」

「ウチと多分瀬呂は最初からかなぁ?まぁ、ウチの場合はホームルームの時の心音だったけどね」

「俺は最初からかなー、緑谷が爆豪からかってるあたり。珍しかったし…それにすぐ爆破しないあたりアレってなったわ」

「テメェ!バレてんじゃねーぞクソがっ!」

「かっちゃんこそ、あんなの僕じゃない!」

「俺から見たらテメェはあんななんだよ!この天然たらし野郎が!」

「た、たらしてないし!かっちゃんこそ…信じてたのに、上鳴くんたちと実はキスする仲なんて聞いてないっ!」


ギャイギャイ喧嘩する中、飛び火がかかった上鳴は「おれぇ!?」と周りを見渡す。確かに舌打ちした時にキスしてあげよっかーなどと言ったがそれは冗談ならではであった為に、それを真に受けた緑谷であった事が問題だった。
緑谷は真面目側だしなにより天然路地裏組の一員だ。 容易に言ったが最後、信じてしまえば、懐に敵すら相手を入れてしまうくらい信じ切るタイプなのだ。


「しねぇって言ってんだろがクソきめぇこと抜かすなや!」

「ちょっと、離してよ…浮気癖移るじゃん」

「移るかァァ!ってかしてねぇって言ってんだろ、お前なんかみんなにキュルキュルしやがって」

「してないよ、なんだよキュルキュルって!気持ち悪い!」


言い合いは更にヒートアップするが、そもそも何故、個性事故を受けて直ぐに周りに言わなかったのかと問いかけようとするが、半泣き状態の爆豪と目が釣り上がる緑谷などは見たくないなぁっと皆が遠巻きに見ていて、聞くに聞けなかった。


________




【昼休み・クラス内②】



後に昼休みも半ばに差し掛かった頃、流石に何故こういうことをしたのか聞きたくなったクラスメートは緑谷の姿をした爆豪を切島と上鳴が、爆豪の姿をした緑谷を轟と飯田で止めて、2人を席に座らせ尋問することに成功したのだった。



「一体、どうしてこうなったんですの?」

「ちゃんと説明してよねっ!緑谷だと思って、相談もしたのにぃ!」

「そーだそーだー!緑谷くんだと思ったんだからねぇ!」

「ケッ、簡単に騙されて勝手に相談したのはそっちだろーがよ」

「やめろぉぉぉぉぉ、緑谷はそんな目しねぇぇぇぇ、オイラの緑谷を返せぇぇぇぇ」

「落ち着いてよ峰田くん、僕そもそも君のじゃない」

「爆豪が気持ちわりぃぃぃぃ」

「酷いよ峰田くん!? 一応、かっちゃん顔はいい方だよ!」

「あ? 一応だぁ? いい方だわクソがっ!」

「うわぁ、自分でいうとか痛い人だよかっちゃん」

「黙れやクソカスゴミナードが」

「暴言が酷い」

「やめてぇ、ウチのウチらのデクくんがぁぁぁぁぁ」



クラス中が騒ぎ出す中、全然気にしていない轟は普通に爆豪の姿の緑谷を撫でてから笑いかけた。


「落ち着いて話してくればくご…じゃなくて緑谷」

「…わぁ、イケメン…」


クワっとオールマイト顔になった爆豪のにブハッとクラス全員が吹き出し、緑谷の姿をした爆豪自身、俺ってあんな顔できんのかよっと少し鳥肌が立ったのをしることになった。



「んじゃあ、説明するね」

「やっとかよ」

「黙って峰田ちゃん、いいわよ爆豪ちゃ…じゃなくて緑谷ちゃん」

「呼びやすい方でいいよみんな」

「実は、僕達、中身が入れ替わる個性を掛けられたんだ」

「…」

「……」

「………」

「…………」

「……………で?」

「あ、あれ? それだけなんだけど…」

「いやいや、流石にそれだけではねーだろ!俺たちを騙す所まで至った経緯!」

「騙したつもりは、単にかっちゃんがせっかくだしって始めただけで、意味は無いよ」

「なに、この幼馴染…酷くない?」

「気づくやつは気づくんだし、騙された方がわりぃだろ」

「爆豪くん!緑谷くんの姿で腰パン、そして、その机に足を乗せる座り方はやめたまえ!!」

「あ? そんなん、そいつが我慢してるだけで、やりてぇかもしれないだろ?」

「むむ、そうなのか爆豪くんの中にいる緑谷くん!」

「長いね呼び方!? いや、僕はそんなこと思ってもいないよ、安心して飯田くん、彼の単なる君を言いくるめるための言葉だよ」



話が進みませんわっと溜息を付いた八百万に皆がさっさっと説目してよーっと言われれば、当の本人である幼馴染コンビは楽しそうだったからどこまでなり切れるかって言うレベルを確認しただけなので本当に深い意味が無かったので答えに困ってしまった。



「でも、あれだな…緑谷って、ちゃんと爆豪の真似できんじゃん! 授業の時は何で上手くいかなかったんだよ」

「そういえば、そうですわね」

「いつの間にか合格してたもんな」

「へ? あー、かっちゃんは出来るよ?僕はダイナマイトが出来ないだけ…」



辺りが静まり返った、それもそうだろう。幼馴染の彼の言葉はよく意味が理解しにくかったのだから。 後ろの席に座っていた緑谷の姿をした爆豪は「はぁ、余計なことを…」っと机に頬杖を付いて座っている。



「え? デクくん、どういうこと?」

「え?なにが?麗日さん、落ち着いて?」

「爆豪は出来るけどダイナマは出来ないってどういう意味だ?」

「流石に理解ができないのだが、緑谷くん!」

「説明をお願いしたいわ、緑谷ちゃん」

「緑谷くんっ!流石に理解ができないよ!」

「私もですわ、クラス全員に理解できるようにお願い致します」

「汝でも回答できぬ答え、お前は緑谷の中に入っている悪魔なのでは?」

「大丈夫? 緑谷、疲れてて変になったんじゃないか?」

「緑谷、甘いもん摂取した方がよくねぇ? 俺、流石にわからんかったわ」

「オイラも、一体どういう意味なのか…」

「み、緑谷くんは、だ、ダイナマイトと彼を違うって、具体的に、は?」

「あたしらにも分かるように言ってもらってもいい?」

「はいはーい!ワタシも青山もわかってませーん!」

「いつもキラメキあれば、分からなくても大丈夫うぃ☆」

「…緑谷、オレもわからなかったんだが」

「俺、自分が馬鹿だとは理解してっけど、ここまで馬鹿だったのか?緑谷の言葉が理解できねぇレベルかも、どーしよ切島」

「落ち着け上鳴、多分皆同じ気持ちだぜ」

「一緒にすんじゃねーよ、俺はわかっとるわ」

「…流石は幼馴染ってとこか? んで、どういう意味なんだ?」

「言葉通りの意味だ…バカかよ」


めんどくせぇっと前の椅子を蹴ると「辞めてよかっちゃん!」と頬を膨らます爆豪に…「爆豪ってんな顔出来たんだな」とか聞こえてきた方向にスマッシュをくらわそうとしていたのを緑谷が止めている。



「深く考えないでよ!そのまんまだよ?かっちゃんは真似できるけど、ダイナマイトは無理なんだよ!」

「だからそれがどう言う意味なん?」

「爆豪とダイナマイトは同じだろ?」

「違うよ!全然違うよ轟くん!パスタとラーメンくらい違うよ!」

「例えが分かりづらい」

「いい? かっちゃんは真似できるよ幼馴染で見てきたんだもん、でもねダイナマイトは素敵なんだよ? あんな人僕が出来るわけないんだよ、憧れで素敵でカッコイイんだよ?オールマイトを真似出来ないのと同じくらいダイナマイトは凄いんだ」

「いや、だけどそれも爆豪のかっちゃんだろ?」

「かっちゃん言うなや!」

「違うってば上鳴くん!かっちゃんはかっちゃん!性格は下水煮込み的なあれで!ダイナマイトは口は悪くても、民間に優しい、心あるヒーローだよっ!」



力説する緑谷を見た後にどうすればいいかわからない面々は視線を緑谷の姿をした爆豪に向けた。
爆豪は緑谷の姿のまんま「はぁ、こういうとこがクソナードなんだわ」っと呆れ顔をしていたそうだ。



結局、緑谷の爆豪とダイナマイトの違いを長々と昼休み終わるまで聞かされた面々は、個性事故が起こった経緯も、戻り方も聞けないまんま、後半の授業を受けることとなった。






③(経緯とその後)→
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