召喚したようです?????
明らかに前の席からのオーラが凄まじくてビクビクと怯えてしまう。 隣に座る彼は何事もなく平気そうに授業を受けているから僕は逆にビックリしてしまう。 やはり、何をやらせても才能マンなのは別世界も同じなのか?ってくらい平然に教科書を理解しノートにペンを走らせていく。 多分、帰ったらあっちの僕に見せるつもりなんだろう、なんとも優しい恋人なんだっと思いつつ、僕は2人の関係を思い出した。
「ねぇ、かっちゃん…」
「……」
「カツキ…」
「なんだよ…」
「向こうの僕とキミの関係って…」
「…番なんだよ、俺とお前…」
ノートから視線を外すと、相手の薬指の指を見つめる。 僕に渡されたのよりシンプルな銀色のその意味がある輪っかに少しだけ妬いてしまいそうになる。 「番?」と聞けば、彼は口元を緩まし、彼を思い出しているのか、「伴侶って事だな」と告げた。あっちの僕と君は結婚してるんだねっと笑えば、照れくさそうに「あぁっ」とだけ言ってくれた。
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休み時間になれば、やはりというかクラスの皆が集まってきた。 同じカッチャンだが、本物よりは話が通じるからか、楽しげに話している。 ボロは出さないように言っているが、彼は本当に才能マンだなっと横目で見つめている。 すると、いきなり前の席からかっちゃんが立ち上がり、僕の腕を引っ掴んで引っ張っていく。 カッチャンが立ち上がり「イズクっ!」と呼ぶも、かっちゃんが目で威圧し、「そこらのモブと話しとけや…カツキくんよぉ」と自分を煽るような言い方に僕はひぃぃっと青ざめてついて行く。一応、何かあったら連絡するよっと貰った指輪を指でトントンっと示した。
「か、かっちゃん…」
「まじでお前は俺を怒らすのが好きだよなぁデクぅ…なぁ?」
「っ、怒らすのが好きだなんて…そんなこと」
「あ? ならなんでアイツを連れて来たんだ? 恋人自慢か?あ?」
「ちがっ、違うよ…彼が来たいって…それにカツキには…ひっ」
バンっと顔の横に手をつかれ、壁が少し焦げる。 彼の目にはイライラが宿っており、怖くて仕方なかった。 謝ってもらえて、少しは関係も修復できたと思ったのにっと目を閉じてビクビク震える。 すると、爆破は降ってこないため、目を恐る恐る開ければ、目の前にはかっちゃんの顔があって、数センチで唇が触れる距離だった。 僕は急いで彼の胸元に手を置いて制しするも、彼の方が力が強いのか手をとられ退かされると、唇が重なった。 なんで?君がなんで僕に?っと考えながらも、カツキとは違った慣れてない口付けに、心がとくんっと鳴った気がした。
「名前、呼んどんな…俺の事、呼べや」
「…かっちゃ…ん」
「呼べや…出久…」
「…勝己…」
「いず…うわっ」
「え、な、なに!?」
急に光出した指輪に僕とかっちゃんは目を閉じる。 眩い光はやがて徐々に静まった瞬間に、僕とかっちゃんは2人で視線をあわせ首を傾げてから教室に戻った。 すると、クラスメートが一斉に駆け寄り「緑谷!個性の爆豪がっ」と言われ急いで先程まで彼が座っていた机に走りよった。そこには八百万さんが作ってくれた制服とカバンだけが残され、彼はいきなり消えたそうだ。
どうしてっと僕は貰った指輪を握ると、その指輪がいきなりビーっと鳴り出して、僕は出そうになった涙を堪えながら教室を走り出した。
どうして、どうしてっと彼の暖かい温もりに甘えていた僕は胸が痛くなった。 まだ、何も伝えてない、まだ君を感じていないのにっとポロポロと零れ頬を伝う涙を拭いきれずに裏庭にしゃがみこんで、指輪を抱きしめた。音がなり続けたそれを触ると、昨日と同じく映像が現れ、僕と先程まで隣にいたカッチャンが居た。何故? 1週間は戻れないのでは?っと映像を眺めると、2人は仲睦まじく寄り添いながら僕の顔を見ていた。
「か、カッチャン!」
『お、繋がったか…良かった、全部が消えた訳じゃねーみたいだな』
『泣いてるよ、大丈夫僕?』
「あ、これはそのっ…」
『いきなり帰っちまってわりぃ…俺にも何が何だか分かんねぇけど…いきなり光に包まれたらこっち居たんだよ』
『僕が書物で調べ物してる時に空から降ってくるから驚いたよ…』
2人の話を聞けば、帰るための方法はふたつあって、ひとつはこの間の魔力装置の回復だ。 もうひとつは、此方の世界でやり残したことを成し遂げる事らしい。やり残したこと?っと2人に問えば、今の君たちにならっと手を握り合って僕を見た。
『君と、そっちのかっちゃんが思いを通じあわす事だよ』
『俺が戻れたっつーことはそういうこったな。おい、俺…』
「へっ、ちょ、どこに喋って…ってかっちゃん!?」
僕が後ろを振り向けば、追ってきていたかっちゃんが目を丸くして映像の中の僕とその僕に寄り添うカッチャンを見つめながら地面に尻を降ろした。
彼に駆け寄ると、彼は僕の手をとって「テメェ、浮気しとったんじゃねーんか」と言われ、僕は即座に否定した。「う、浮気も何も君とはそんなんじゃない」っと告げると抱きしめられた。 彼らしいたくましいその腕に抱かれれば、涙が溢れてきた。 その背中に手を回してぎゅっとすれば、映像の中の僕とカッチャンが「おめでとう」「おい、幸せにし殺さねーと殺す」と言っていて、それに律儀に「たりめぇだわ、大事にし殺す…お前の出番はねぇよ、死ね」と言い放っていた。どこまでもかっちゃんだなぁっと2人を見つめる僕と映像の中の僕らは互いに笑いあった。
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