初恋戦争
【初恋戦争・出久視点】
「ちょ、ちょっと待ってやデクくん!」
「落ち着け緑谷」
「流石にそれは考えすぎじゃないかい?」
「考えすぎなんかじゃないよ!かっちゃんは浮気してるよ!」
それは僕の一言から始まった、恋愛戦争だった。
「どうしてそう思ったん?」
「最近、なんかよそよそしくて…この間、いつもより仕事終わる時間を1時間遅めに書いたんだ。そして、帰宅したら…女物の靴があったんだよ」
「遊びに来てた奴とかじゃねぇのか?」
「女性を呼んで2人きりの空間で遊びにだけ?彼だって男だよ!」
「落ち着くんだ緑谷くん、他には何か無かったのかい?」
「…凄く甘い声だった、後…」
「後…?」
ゴクッと3人が喉を鳴らして僕の話を聞こうと口を閉じる。
僕は思い出すのも辛いが、2人から聞こえてきた途切れ途切れの内容を口に開いた。
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【回想】
「かっちゃん、今日は帰りがいつもより遅いからご飯は僕のいいからね」
「おう」
「じゃあ、行ってきます」
僕はモヤモヤしたまんま仕事を片付け、静かに鍵をあけ中に入ると、やはり知りたくはない真実がそこにあった。女物の可愛らしい靴が置いてあった。
かっちゃんが浮気なんてっと胸が痛むが僕は男だし可愛らしくもない。
いつかそんなことがあっても仕方ないと考えてはいた。でも、高校から付き合って3年、同棲してから5年…むしろ幼馴染の付き合いで言うなら物心着いた時には傍にいたのに、急に彼が居なくなる毎日を僕は想像できるのか?っとぐるぐる考えていた、でも僕も一応心はある。相手がその気じゃないかもだし、友達かもなんて思って静かに扉に近づいた。
そして、気づいてしまった、彼はその人が好きなんだと。大切なんだと…扉越しでもわかるくらい甘い声で笑う彼の相手に僕は嫉妬してしまった。
「やだ、勝己くんってば…」
「仕方ないですよ、そんなに綺麗なんですから」
「お世辞上手いんだから、ふふ」
「お世辞なんかじゃありませんよ、それより…こうやって2人で会えんの嬉しいっす、時間貰ってすんません」
「そんな、私も会いたかったし気にしないで、それより…その、子供の事なんだけど…私ね、早く欲しいって思っちゃうの…迷惑かけるかな?」
「…それって、俺との子、欲しいってことですか? いいんですか?」
「だって、二人の子でしょ? 一緒に考えたいもの、今度また家に来て? 話し合いましょう」
「は、はいっ!ありがとうございます!俺、頑張ります!」
口調的に相手は尊敬する年上の女性ってところだっと体をふらふらさせながら扉を出ていく。 そして、フルカウル状態で漫喫に入って、その日はかっちゃんに「仕事終わらなさそう、会社の仮眠室泊まって、明日の朝帰る」と連絡した。 かっちゃんからは「迎えに行く、終わったら連絡しろ」と来てて、こんな時でも優しいのかよ馬鹿野郎、好きだってなった事を話した。
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「という訳なんだ…」
「こ、子供の話までとか…爆豪くんんんんんん」
「落ち着け麗日くん、麗らかじゃ無くなってるぞ」
「…燃やすか?」
「そうして欲しいけど、かっちゃんから別れようの一言も無いから、浮気の証拠集めて突きつけた方が早いのかなぁって…」
「徹底的に洗い出そう!デクくんっ!」
「どんな人なんだ?」
「うーん、実は扉越しだから姿とか分からなかったんだよね…でも、声は柔らかそうな人で可愛らしい声だった。あと、かっちゃんのことを勝己くんって呼ぶから、結構仲がいいのかも? お花みたいな香水使ってるみたいだよ? 残り香がそんな感じだから」
「香水の匂い消したりしないんだな」
「むしろバレて欲しいみたいじゃないか?」
うーんっと4人で唸りながら考えるが、一向にいい考えが浮かんでこない。
その時に、携帯が鳴ったので、僕達はそこで解散することにした。
連絡は僕が考えていた人からで、先程の彼との問題を忘れさせてくれるような相手だったので、早足で向かった。
②→