愛情∞!?
起きたら全て夢でしたとか、起きたら∞無くなってたとか、そんなのあったら良かったのに…起きたら隣にかっちゃん居るし、頭上にはそのまんま∞マークはついたまんまだった。 本当になんなんだこのマークっと彼の頭に手を伸ばしてマークに触れようとした。
だけど、触れる前に手を捕われ暖かい腕の中に納められる。誰かなんて言わなくても分かるけど、確認の為に顔をあげてモゾモゾ動くと「動くな、擽ってぇよくそナードが」っと答えてくる。 その声色がいつもとは違って優しいから、なんだか動きたくなくてギュッと彼のシャツを握るように背中に手を回して抱きついた。
再び目を覚ますと、かっちゃんの声が少し遠目に聞こえた。
多分切島くんとかと連絡してるんだろうなっと隣で少しだけ楽しそうにする彼のシャツの裾を引っ張って少し頬を膨らませてみる。 別に付き合っている訳では無いから、こんなことして彼の気を引こうなんてバカみたいだとわかっててもついつい、彼の行動が知りたくて手を伸ばした。
でも、意外と相手に届いたのか僕の起床と共にかっちゃんは話してた相手に何も言わず通話を切った。 後で絶対部屋に押しかけてくるよそれっと起き上がって彼に告げる。
僕といるなんてバレたらどうすんのさっと呟くと、かっちゃんは何言ってんだって顔で僕の頭を乱暴に撫でてきた。
「お前といることなんざ皆知ってるっつーの」
「え? な、なんで!?」
「あ? 俺が言ったからに決まってんだろうがクソが」
「いや、クソじゃないけど…何を言ったの?」
聞きたくないけど、一応聞いとこうっと嫌な予感が胸を過ぎりつつ彼に問いかけた。 彼はいつもの楽しそうに口端をあげてヴィランのような笑顔を浮かべながら僕を見てこう言った。
「くそナードは俺のものだって?」
「……へ? いつ、誰がかっちゃんのものになったのさ」
「んだとテメェ…まさか、あの電話での話…嘘だったわけじゃねぇよなぁ? あぁ?くそデク」
「痛い、いたいっ、痛いよかっちゃん!!嘘じゃないし本音だったけど、かっちゃんからなんも返事聞いてないよ僕っ」
「言わなくても分かれやクソがっ」
「流石にわからないよ!? かっちゃんの気持ちが僕と同じとか、一体なんて言ったのさぁ」
「何度言わすんだよ、テメェが俺のものだって言ったっつの」
「だから、その言い方だよ言い方…こ、こうさ…その、かっちゃんが皆にとか絶対に下僕だとか荷物持ちだとか、前の演習みたいに杖とか?」
「…テメェが杖になっていいって言ったんだろうが」
「…言っては無い。肩を貸してあげるって言っただけだよ」
「言うようになったじゃねぇか…なぁ? くそナードくんよぉ?」
「ひぃぃっ!? こ、恋人にそんな対応ないんじゃないかなぁ!!」
僕が「恋人」を少し力強く言ったからなのか、かっちゃんは照れたのか「くそ、くそ、くそっ」を連呼しつつ僕の額にデコピンを繰り出してきた。
たまに死ねとか入ってるけど、恋人に死ねってありなのかなぁってやっぱり口が悪いかっちゃんに言いたいけど黙ることにした。
ほんとうに僕が死んだ時、泣いてる顔みてやるっと頬を膨らませた瞬間にかっちゃんが僕を軽く蹴っ飛ばした。 へぶっと情けない音を出しながら床にダイブすると、かっちゃんはベットの上から僕を見下ろしながら睨みつけてきていた。
「ぼ、僕なんかした?」
「あ? どーせテメェの事だ、俺の言葉でお前が死んだら悲しむ顔見てやるとかふざけた事かんがえてんじゃねーかって思ってよぉ? くそナードくん」
「なんで僕の考えを…」
「(こいつ、声に出てたの気づいてなかったんか)だけど残念だな!!テメェは死なねぇ」
「…わからないじゃんか」
「わかるっ」
「どうしてさ…」
どうせかっちゃんの事だ、俺以外がお前を殺すなんて許さねぇとかなんとか言うんだろうなっと期待なんかしないまんま彼からの言葉をまった。
彼は僕がじっと見ていたからなのか少し顔を逸らしながらいつもより小さな声で口をかろうじて動かした。
僕は聞き取れなかったので「なんていったの?」っと聞き直せば、いつもでは絶対に見れないような耳まで真っ赤な顔になったかっちゃんが首元を抑えながら口を開き直す。
「テメェは、俺が守ってやっからな。死ぬ時も一緒に決まってんだろぉが…くそデク」
「……っ」
意外と普通の言葉なのに、死ぬ時も一緒とか歯の浮くようなセリフを吐いたかっちゃんに僕自身も真っ赤に染まりあがってしまう。
この頭上の∞ってもしかしてかっちゃんの愛情ありまくりってこと!?
あのかっちゃんが恋人同士になったらデレるタイプとか!!全然知らなかったし凄く見れて嬉しいっと彼を見つめた。
彼は「ふんっ」と鼻を鳴らして僕から視線を逸らすが、さりげなく握った彼の手から優しさが伝わってきた。
かっちゃんは忘れているだろうけど…彼と繋いだ手は本当に優しいのばかりで凄く幸せだったことしかない。
あのヴィランに連れ去られた時のかっちゃんは確かに僕の手は掴んではくれそうになくて、切島くんに頼んでしまったけど、秘密を共用しあい、共に練習をしてくれていた今の彼ならきっと、今みたいに…僕の手を掴んでくれるんじゃないかなっと握られた手をぎゅっと握り返してみた。
ヒーロー計画での島でのヴィランとのバトルのときも「たった一つだけの勝つ方法」に関しても迷わず僕の手に伸ばして「デクっ」と呼んでくれたことも僕だけが覚えているんだっと繋いでる手とは逆の手をぎゅっと握る。
彼は僕の…憧れで、負けたくなくて超えたい人だ…きっとこの先恋人になっても歳をとっていったとしてもそれは変わらないかもしれない。
かっちゃんのベットに乗り直し、彼の背中にぴとっとくっつくとかっちゃんが不機嫌そうに「後ろからでいーんかよ」とか言ってくるもんだから、可愛くて僕はついつい揶揄うように「かっちゃんから抱きしめてくれるなら、前からしたい」とか言ってみた。きっとグーが飛んでくるなっと思っていたから、凄く意外だった。 ふわりと前から抱きしめられ、僕の思考がストップしてしまい彼の温もりと優しさに凄く安心した。 本当に夢じゃないんだっと抱き着いて彼の肩にグリグリと額を当てながら擦り寄って見えないように微笑んだ。
かっちゃんの香りがするっと顔をあげれば、かっちゃんは余裕なさげな表情で僕を見つめると、するりと頬に手を当ててから僕に噛み付くようにキスをする。 彼の熱い舌が口の中に入ろうと僕の唇の薄い隙間を舐め、こじ開け舌を奪い絡めてくる。 ぎゅっと苦しさに目を閉じながらも置いてかれないように彼の舌と絡めながら相手からの舌への愛撫に集中する。 時折彼の熱い舌で舐められ、時折彼の歯で甘く舌を噛まれながらも怪我させまいとする優しさに、更に気持ちよさが募った。
その代わり深く、キスをした事によって、胸へのモヤが大きくもなった。
④へ