拍手置場
番が居ないΩは番以外にもヒートが当てられる
番が居れば、ヒートは番にしかわからない。
αはそのヒートに当てられたらラットに入る時がある。
それを教えられたのは僕が無個性の『α』と診断されたころだった。
ただでさえ無個性なのだから、当然『Ω』だろうと思っていたし、そうであって欲しかった。 だって、そうしたら…きっとこの身に彼の吐き出したもので宿る物があったかもしれないから。
だけど、運命とは残酷で…無個性の僕に更なる悲劇を渡そうとはしないらしい。神は平等、確かに平等だった。まぁ、才能マンの彼は平等以上だったけどっと診断の紙をぐしゃっと握りつぶした。
彼の寵愛も得られなくなる僕は、これからどうなるんだろうか…αで番を探して好きでもない人を番にして、組み敷いて子を授けるんだろうか。
そんな、汚いαを誰が好きになるんだ、むしろこの感情を捨てられるくらい、沢山乱して、汚して欲しかった。
「はぁ、はっ…かっちゃ、もう限界」
「うるせぇ、まだ出来んだろ…ゴムは有り余ってんぞ」
「ちが、もう出な…っふぁぁ」
何度も何度も組み敷かれ中で吐き出されても僕は「α」だ。
彼の子を宿せないし、彼が僕を物にすることも出来ないのに…なのに彼はこうやって今でも僕を抱いてくれている。同じ「α」なのにっ。
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「ぷはっ、オラよ」
「ありがと…あのさぁ、かっちゃん…ちょっと、し過ぎじゃない?」
「あ? テメェがくそ弱なだけだろーが」
腰を擦りながら起き上がると受け取った水を口に含んでいく。
疲れた身体には最高に美味しい飲み物だと知ったのは、初めてかっちゃんに抱かれた時だった。 中学の頃にいじめの延長だったのかセックスを初めて知ったかっちゃんは僕を組み敷いて抱いた。
この頃から僕は既に彼が好きだったから、何をされても逆らわずに受け入れた。だから3年になった時に診断の紙を見た瞬間、僕は酷く己の性を怨んだ。 だって、彼が『テメェ、無個性でΩだったらマジで救いようがねぇよな…そうだ、俺が貰ってやるよ。テメェを俺の番にしてやる』と言ってくれたのに。なのに、僕は…「α」だった。
けれど、彼は僕が「α」だったのに、何も変わらず抱いてくれ必要としてくれた。無個性なのに、子も宿せないのにっと何度泣いても嘆いても、彼は僕を酷く欲してくれた。それが凄く嬉しかったんだ。
「テメェ、Ωとあったろ」
「あー、うん。少し会社ですれ違った」
「ったく、変なとこでラット起こすなよ? 俺はテメェの匂い分かんねーんだから」
「え、そうなの? やっぱりα同士だとわかんないとか? そういえば僕もかっちゃんの匂いわかんないと言うより、Ωの匂いもわかんない」
「…ちゃんと効いてんならいーわ」
「え?」
彼は起き上がり僕の項に噛み付いてくる。 番にもなれないのに、酷く跡が残るくらい強めに噛み付いてきた。 それが酷く僕には嬉しくて、幸せだった。いつか消えてしまうのに、消える度に残してくれるその痕に、凄く僕は安心していたんだ。
「そういえば、かっちゃんはΩに当てられたりしないの?」
「あ? ったりめーだろーが。俺は運命の番とあってっからな」
「…ふぅん、そっかぁ…ってえぇ!? 運命の番と!?な、なのになんで僕と一緒に居るの? その番さん大丈夫なの!? 番解除したら死に至るって…むぐっ」
「はぁ、落ち着けや。2人ん時に別の話すんな…」
「うわ、かっちゃん…なにっ、まだするの?」
「あー、足んねぇし…いーだろーが」
「うぅっ、かっちゃんなんて、運命の番さんに嫌われて僕だけ愛すαになっちゃえ」
「…元からそうだっての、クソナードが」
「へ?」
ちゅっと唇を塞がれながらまたも僕はかっちゃんに絆されながら、何回も相手をする羽目になった。
かっちゃんに後に聞かされたが、僕が運命の番らしく、いつしかΩになるらしい。
運命の番がそうだと言い張るのだから本当なのだろうと思ったが、運命の本気を数年後にしることとなる。
end
閲覧ありがとうございました。