「おらァ！もっと力入れろォ！！」
『はい！』
「こんくらいでへばってんじねェ！」
『っ、はい！』


「（（（す、すげぇ…）））」


風柱邸で、毎日繰り広げられている稽古風景。
その中心にいるのは、風柱である不死川実弥と、幾分か背の低い少女だった。

風柱邸に訪れている隠達は、その稽古の激しさに手を止めて見入ってしまう。

一切手加減のない稽古に、少女の顔は歪み額には汗が滲んでいた。
正午に差し掛かろうという時、やっと互いの剣が鞘に収められた。

『ありがとうございました‼︎』
「ちったぁ、マシになったなァ。」
『！…あ、ありがとうございますっ、師匠！』

稽古が終わり、すれ違いざまに頭にポンっと実弥の手が乗る。

「おい、高咲。」
『はい、何でしょうか？』
「今から本部に行くから、書類整理を頼めるか？」
『かしこまりました！お気を付けていってらっしゃいませ。』
「あぁ。」

高咲 奏。
まだあどけなさの残る、20歳にも満たない少女。
その反面、風柱である不死川実弥を師と仰ぎ、継子までのし上がった実力者だ。
一般隊士の中で、実弥についていけるのは彼女しかいないと言われるほど。

『よし！少し休憩したら、書類整理を始めよう！その後に買い出しに行って…あぁ！やることいっぱい！！！』


隊服の袖をまくり、奏は屋敷の中へと入っていった。