短いの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「プロデューサーさん、僕、プロデューサーさんが好き。…親愛って意味じゃなくて、一人の女性としてって意味だよー。」
取られた手は彼の両手で包まれた。
暖かいその両手は微かに震えているようにも感じられた。
━━え?
私の手は力が抜けていて、彼の両手に支えられているおかげで宙に浮いているのを不思議な気持ちで眺めた。
「僕と付き合ってくれますか?」
彼の赤い瞳はまっすぐに、私を見つめている。
この時、私は考えた。
これを、「こんなおじさん好きになっちゃダメだよ」って山下次郎方式でかわそうかと思っていた。しかし、最近思ったのだ。そういう山下さんみたいな大人は、若い子からみたら魅力的に映ってしまうんじゃないか?(これは経験則からも言えることだった。後になってみれば、大したことではなかった…と思うことも多い。)(これは山下さんのことを言っているわけではないが…!)
逆に燃え上がらせてしまい、追いかけ続けてしまうのではないか?想楽さんの時間を奪ってしまうのでは……
そして、僅かな「私も想楽さんのこと好きだし、ひとときの夢見せてもらえたら」っていう最低の思考を浮かび上がらせて、
了承する。他に好きな人ができたらいつでも言ってくださいね、と念押しするが、そんなのないよって頬に手が触れ、嬉しそうに笑う顔。
…ひとときの夢にしては、強すぎるな…ってクラクラしてしまう。
まあ、簡単に手に入る私は魅力的ではないだろう、あとは彼の都合のいいように、ダラダラとこの夢を過ごせばいい。それが私にも都合がいいはずだ。
そして、これはひとときの夢、夢、夢だ……って思いながら過ごすうちに、しばらく、短いとも言えない時間が経ってしまった。
ひとときの夢は、なんとも刺激的な劇薬だった。人生の中でこんなに甘く、幸せな時間はなかった。このひとときの夢を手放しがたくなってしまっている自分に気づいた時、これはまずいと思った。焦った。その時がくることが突然怖くなる。
彼が、まだ今後もたくさんの出会いが待っている可能性の塊が、(大したことではなかった)とわかった時、本当に大事な人に出会えた時、私は私を保っていられるようにしないといけなかった。
どうにかして、私という異常者が、この甘い夢にのめり込まない方法を模索しなければ。
私はプロデューサーで、想楽さんはアイドルで、私は大人で、想楽さんはまだ学生で、私は、私は、どうしようもなく、想楽さんのことが好きで、
でもそれだけ、それだけなんだ。
告白した時のことはよく覚えている。
僕にしては何の計画もなく、思わず口をついてしまったから。
何の関係もない、些細な雑談だった。
315プロダクションの成人しているアイドルたちで飲み会をしたという。プロデューサーさんも参加していたと雨彦さんから聞いていた。
どうだったー?と聞くと、苦笑いしたプロデューサーさんの口からは、面白そうな話がわんさかと出てきていた。すぐ寝てしまった硲先生が、突然起きたと思ったら「渡辺くん!その髪の長さは校則違反だ。結わいなさい。」とみのりさんの髪を結ってまた寝たりとか。
「みのりさんがたくさん写真や動画撮ってるので、今度見せてもらってください。あっ…でもその時の写真は、みのりさんが撮って!って言ってたから誰か他の人が撮っていたかも…」と笑って話している。
…写真にはプロデューサーさんも写っているのだろうか。僕には見ることのできない場所でのプロデューサーさん、見たくないと言えば嘘になる。
「…僕も早くプロデューサーさんとお酒が飲めるようになりたいなー。」
「えっ、私ですか?」
ぽつりとひとりごちたように言うと、思いの外プロデューサーさんは慌てたように反応した。
「私は、あまりお酒飲めませんから…私とお酒飲んでも楽しくないと思いますよ。雨彦さんやクリスさんがいいかもです。」
二人も想楽さんとお酒を飲むのを楽しみにしてますから、と笑った。
…そういうことじゃなくて、他の人がプロデューサーさんとできていることを僕ができないのがなんだか悔しくて、だって、
「プロデューサーさん、僕、プロデューサーさんが好き。」
ぽかんとした彼女の顔は忘れないだろう。まあ、話の繋がりも全くないし、意味がわからなかったかもしれない。
「…親愛って意味じゃなくて、一人の女性としてって意味だよー。」
勘違いされないよう、慌てて付け足したのだった。あまりにもそんな発想がないって顔してるから。思わず伝えなきゃと思って口に出てしまったんだ。
思いが伝わるように、伝わったらいいなと思って、手を取り両手で握った。けど、その手は震えていたかもしれないから、失敗だったかも。でも、その方が真剣さが伝わるかもしれないとも頭の片隅で思った。
「僕と付き合ってくれますか?」
覆水は、盆に返らぬ、ならいっそ。言ってしまったものは仕方がない。ならもういっそ、嘘偽りないこの気持ちを真摯に伝えるしかない。
まあ何を言われても、そんなに簡単に諦められる思いではないというのも、伝えるしかないけども。
━━意外にも、プロデューサーさんの答えは了承であった。
向こうも少なからず想ってくれていたんだと、薄々は思っていたが、こうも上手くいくとは思わず、僕は浮かれていたかもしれない。
プロデューサーさんが僕の告白を受け入れてくれてから、短くはない時間がたった。
浮かれれば浮かれるほど気づくことがあった。
こちらの希望は大体受け入れてくれるから、嫌がられてない…と思うけど、多分、この人は僕がそのうち離れていくと思っている。…多分。
きっと、だからこんなことを言い出すんだろう。
「あの、想楽さん、少し…あの、私の家に来るのは控えませんか?」
「…………」
「あ、えっと、あの…最近、そういうところが雑誌の記事になってしまったアイドルを見まして…!ちょっと心配というか…」
黙っている僕に対して慌てたのか、ボソボソと喋り出すプロデューサーさん。
「そっかー、まあ心配になる気持ちはわかるよー。」
僕が喋り出すと露骨にホッとした顔をしている。かわいい。このかわいい人と、僕は離れる気なんかさらさらない。
「そんなことになっちゃったら、一緒にいられなくなっちゃったら困るもんねー。」
「あ、そう…ですよね。」
「でも、」
ソファで並んで座るプロデューサーさんの手を握ると、恥ずかしそうにしている。
「一緒にいる時間が減っちゃうのは、寂しいなー。」
じっと見つめると、照れている中でバツが悪そうに苦笑いしている。そんなプロデューサーさんを見てフッと笑った。
「そしたら、今度はたまには、僕の家で会うっていうのはどうー?」
「…えっ?!」
「プロデューサーさんの家よりは、言い訳が効くと思うんだよねー。兄さんの家でもあるし…、あ、でもほとんど家にはいないから、2人でゆっくりすることはできるから、安心してねー。」
「あ……そ、そう…ですか…?」
困惑しつつ、僕に丸め込まれているプロデューサーさんがかわいくて、またふふっと笑ってしまった。そのままプロデューサーさんを腕の中にしまいこんだ。
こんなチャンス、きっと二度とこない。プロデューサーさんの気の迷いと、優しさと、押しの弱さと、使えるものは何でも使って、つけこんで、絶対離れてなんかあげるものか。
「これからも一緒にいられるように、頑張るからねー。なまえさん、…大好きだよー。」