短いの
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仕事からの帰路、急足で歩いていたところ、ふと目に入った。
駅前のデパートにはお月様とうさぎのイラストが。中秋の名月は今日か。まだまだ暑い日が続くなか、季節の移り変わりの速さにはついていけない。
お月見にはいい思い出がなかった。特に目を向けずに家路を急ごうとしたが、私は足を止めていた。
…やっぱり、
私はお団子を1パック手に取りレジに向かった。
「おかえりなさいー」
帰宅すると、部屋着の想楽さんがにこやかに迎えてくれる。
「お待たせしてすみません。」
「そんなに待ってないよー。あれー?何か買ってきたのー?」
私が手に持ったビニール袋に気づいた想楽さんにそのまま手渡した。
「今日は満月みたいです。」
「あ、お月見かー。いいねー。」
袋の中身を見て、すぐに気付いたようで想楽さんはまた柔らかな笑顔になる。美味しいものも甘いものも好きみたいだし、買ってきてよかった。
「あとで一緒に食べようねー。」
「はい!」
うちのアパートからは、雲が厚いのか残念ながらあまり月は見えなかった。
なのでそのまま食後に普通にお団子を一緒に食べる。
「月はよく見えなかったですね。」
「残念だねー。」
そういいながらお団子を頬張る想楽さんの顔は綻んでいる。私は思わずクスッと笑った。
「どうしたのー?」
「いえ…想楽さんが美味しそうに食べてくれて、買ってきてよかったです。」
「うん、美味しいよー。買ってきてくれてありがとうー。」
「また美味しそうなもの見つけたら買ってきますね。」
「僕も見つけたら買ってここに持ってくるよー。」
事務所に持っていってもいいんだけど、すぐなくなっちゃうからねーと笑っている。
確かに、事務所で月見となると、一体どれだけの量のお団子が必要になるのか。
私はまたふふふと笑った。
想楽さんが淹れてくれた、九郎さんにもらったという美味しいお茶を飲みながら。
「来年は月が見えるといいねー。」
想楽さんがなんとなしに言ったことがたまらなく嬉しかった。
そうですね、とだけ返して、私は開けた窓からは涼しい風が入ってくるのを感じた。もうすぐ秋がくるのかも。