短いの
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それは忙しい日々だった。
アイドルという仕事を考えれば、忙しいのは良いことだと思うけど。
ただ、隣にいる人が疲れた顔をしているのを見るのは、あまり好きとは思えなかった。大事な人なら尚更。
「電車空いててよかったねー」
「ですね!座りましょう。」
仕事から、二人で戻る、帰り道。
事務所までの短い時間だが、プロデューサーさんと2人きりというのは、内心嬉しいものだった。
…だったが、
隣に並んで座り、落ち着いたのも束の間、彼女はすぐに社用のスマートフォンを取り出し、なにかメールの返信でもしているようであった。
「…まだお仕事ー?」
「あ、すみません…これだけ…」
「大変だねー。ゆっくりでいいよー。」
「すみません…!」
これだけ、と言いながら彼女は画面に集中し始めたようだ。そんな姿を見てやれやれとため息をこぼすが、それも気づいていないだろう。
…兄さんのことを思い出す。彼も、きっと今夜も身を粉にして働いて、帰宅するかもわからない。
兄さんが倒れた時も、プロデューサーさんがそばにいてくれたっけ。あの時は僕も慌てて困惑した姿を見せてしまったけど…
プロデューサーさんも驚いていたようだが、病院まで付き添って、何度も「大丈夫」と言って背中をさすってくれていた。そうすると、不思議と少し落ち着いたことを思い出した。
…助けられてばっかりだなあ。
当然といえばそうだが、アイドルがプロデューサーにしてあげられることは少ない。アイドルとして成果を出してお返しするしかない。けど、なにか、
ふと横に座る彼女を見ると、スマホを持ちながら首がこっくりこっくりと揺れている。
あれー…、寝そうだ。
そう思ったら、スマホを持っている手が膝について力が抜けていた。
周りを見ると車内はそれほど人はいなかった。
そっと揺れている肩を自分の方に寄せると、こて、とプロデューサーさんの頭が僕の肩に触れた。
これで、まあ、前方に倒れ込むことはないだろう。
わずかに寝息で揺れるプロデューサーさんの肩を確認した。
………今は肩を貸すぐらいしか、できないかなー。
そんなことを思いながら、彼女のためと言いながらも、得しているのは僕の方かもしれない。
「…胸の内、貴重な寝顔、焼き付けてー」
いつかアイドルとして、大きな恩返しできるように、
その時まではこうやって、小さな恩返しを積み重ねて、ついでに自分もプロデューサーさんといる時間が長くなって良い思いができるといいなとか、邪な事ばかり考えているのは誰にもバレないよう気をつけなければと思った。
とにかく今は、僕も一緒に寝ないように、電車を乗り過ごさないよう気をつけて、
駅に着いて起きた時、彼女がどんな反応するか、楽しみにしておこう。
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