短いの
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おじゃましますー…」
誰もいない部屋に声をかける。
合鍵をもらっている彼女の家に1人で入って行くのは、なんとも言えない気持ちになる。悪いことをしているわけではなく、当然、先に入っていていいと許可を得てはいるのだが、悪いことをしているような気分になっていまだに慣れることはなかった。
仕事がまだ終わらないという彼女からは、
『お待たせしてすみません、うちに先に行っててもいいですよ!』
とLINKがきている。
なんとなくもう一度その文章を確認し、少し心を落ち着けた。
先に入ったのだから、クーラーをつけておいて部屋を涼しくしておこう。
買ってきたジュースも冷蔵庫に冷やしておこう。
あとは…本でも読んで待っていようかなー。
まだ帰らない彼女を想いながらも、自由に過ごさせてもらった。
しばらくすると、鍵をあけ玄関が開く音がする。若干息を切らした彼女が帰ってきた。
「すみません!遅くなって…」
「ううん、お疲れ様ー。」
本から顔をあげた僕と目が合うと、彼女は嬉しそうに笑った。
「あ〜…部屋の中涼しい〜…!」
「ふふ、クーラーつけておいてよかったー」
「ありがとうございます!想楽さん1人の時も自由になんでも使ってもらっていいんですからね!」
「ありがとうー」
以前彼女が言っていた、「帰ってきて想楽さんが家にいてくれたら嬉しい」という言葉を思い出す。そう恥ずかしそうに言いながら合鍵を渡してくれた。
今、本当にそう思ってくれてるんだなーと、彼女の顔を見て実感する。
そんな顔をされると、もちろん僕も、嬉しいんだけどー。
心があたたまった矢先、プロデューサーさんが手を洗いに僕のすぐ近くを通るとふわっと慣れないにおいがした。
?
なんで?
という言葉が真っ先に浮かぶ。
一瞬の内にさまざまな思考がめぐるも、手を洗って戻ってきたプロデューサーさんに僕はすぐ口を開いていた。
「…プロデューサーさんってタバコ吸ったっけー?」
「?タバコ?」
「…プロデューサーさんから、においがしたからー。」
「えっ!!!」
それまで穏やかな表情をしていたプロデューサーさんが、青ざめた表情で自分の服のにおいをかいで慌てている。
「すみません…!臭いですよね…!?すみません…!すぐ着替えて…」
「いや、近くを通ったからわかっただけだから、大丈夫だよー」
「そ、そうですか…?でも、なんだか自分でもにおうような気がしてきました…すぐ着替えますー!」
「あ、」
慌てて着替えに行こうとするプロデューサーさんの手を思わず掴んでいた。
「…なんでプロデューサーさんからタバコのにおいがするのー?」
なんでだろう、なぜか焦燥感が止まらなかった。
焦って、イライラしてる、かもしれない。
「あ、あの…!私は吸ってないんですが…、先程まで打ち合わせをしていたレコード会社の方がタバコを吸う方で…。喫煙できる喫茶店に入って…もしかしたら、においがついてしまったかもしれません。私も得意ではないので…」
すみません、と、プロデューサーさんはつぶやき、辛そうな表情をさせてしまった。
その表情に胸が痛くなりながらも、苛立ちは治ってはくれなかった。
むしろ、その話を聞いてますます感じていた。
僕のプロデューサーさんに、って。
知らない誰かのにおいをつけられたと、勝手に感じて勝手に苛立っている。
自分でも、自分勝手だとわかっていたので何も言えなかった。
プロデューサーさんは悪くない。
でも、悪くないのに、謝るプロデューサーさんにも苛立ちを感じている。
あ、
表情笑えないかも、
と思って咄嗟に掴んだ手を引き寄せプロデューサーさんを抱きしめた。
「そ、想楽さん…?あ、あの近づくとにおうかも…!」
プロデューサーさんの言うとおり、抱き寄せたプロデューサーさんの小さな体からは、またタバコのにおいが鼻についた。
そして、そう言って弱い力で僕を押し返そうとしたプロデューサーさんも、全部が僕をイラつかせた。
「………ねえ、……………一緒にお風呂入ろっかー。」
「…え?!」
プロデューサーさんの返事を聞かず、シャツのボタンを外していった。
「え、あ、え?!い、今ですか?!え、あの、」
「たまにはいいでしょー?」
「あ、えっえ、」
「…ね」
「…は………はい、」
恥ずかしそうに慌てていたが、僕の顔を見て少し驚いたような顔をしたプロデューサーさんは、そのあと大人しくなって、僕に服を脱がされていた。
僕の顔はうまく笑えていなかったのかもしれない。
早く、この嫌なにおいのついた服を脱がせて、髪も洗って、体も洗って、一緒に、
同じ匂いに戻さないと。