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撮影スタジオを出ると予報通りの雨だった。
「わー結構降ってるねー。」
「予報通りですね、傘を持ってきてよかったです。」
撮影の前にそんな話をしていたため、私も想楽さんもしっかり傘を持って事務所を出たのだった。
「じゃあ事務所に一度戻りましょうか。」
「うんー。」
2人して傘を開いて、駅まで歩き始めた。
しばらく歩いていると、道路の脇の花壇に植えられたチューリップが綺麗に咲いていた。
春だな、と思い、綺麗ですねと想楽さんに話すと、本当だーとにこやかに笑った。
想楽さんは花とは関係ない突拍子もない話を始めた。
「こうやって傘さしてるとさ、手をつなげないよねー。」
「……手…??」
漫画ならば私の頭上にはクエスチョンマークが飛んでいるだろう。手を……つなぐ……?????
「…あ、さっきのドラマの話ですか?」
ふと私が思い至った結論は、先程想楽さんが撮影に参加したドラマの話というものだった。
今回は少女漫画が現在のドラマで、高校生の恋愛を描いている。想楽さんの役は主役ではなく1クラスメイトの役であるが、毎週ファンのみなさんは想楽さんが映るのを楽しみにしてくれているようだ。
本日の撮影では物語の佳境を迎え、主役のヒロインと相手役はついに結ばれて手を繋いで一緒に帰っていくシーンも撮っており、私たちも見学させてもらったのだった。
「まあ、そうそうー。雨が降ってたら手を繋いで帰れなかったかもーと思って。」
だってこんなに雨が降ってたら手が濡れちゃうよね、と想楽さんが笑う。
「確かにそうですね、晴れててよかったです。」
「うーん、雨だったら、同じ傘に入ればいいんじゃないー?」
「なるほど、相合傘ですね。それもいいですね!」
「だよねー。じゃあプロデューサーさん、どうぞー。」
「………??????」
想楽さんは傘を軽く持ち上げて私に片手を差し出した。
私の頭上には先程よりもたくさんのクエスチョンマークが飛んでいることだろう。
「えっと……??私……?…は自分の傘があるので……???」
「えー残念ー。」
残念…???さっきから一体なんだろう。まるで私と手を繋ぎたいようなことばかり言ってくる。
新手のからかいだろうか。
「じゃあプロデューサーさんが傘忘れたら、僕の傘に入れてあげるねー。忘れてきていいよー。」
「…ありがとうございます。あの…もしかして私をからかおうとしてません…?!」
「えー、違うけどー。」
ふふっと想楽さんが笑う。
からかってるでしょ絶対…!
「もう…傘忘れませんから!」
「えー。あ、じゃあプロデューサーさんの傘に入れてもらえばいいかー。」
「え!?」
「じゃあ今度傘忘れてくるねー。」
「なっ…」
「ふふっそんな歌、あったよねー。」
そんな歌を思い浮かべて、赤面した私を見てまた嬉しそうに笑っている。
「雨の日に、チャンスは自分で、作り出しー。…僕が傘を忘れた時はよろしくねー、プロデューサーさん。」