短いの
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事務所の最寄駅のホームで電車を待つ帰り道。
見慣れた立ち姿を見つけて思わず声をかけた。
「プロデューサーさん?」
「えっ想楽さん!今日はオフじゃ…」
「そうなんだけど、たまたま大学のみんなと近くでご飯食べてきたんだー。プロデューサーさん、今帰るところー?」
「そうだったんですか。私も今帰るところです。」
「遅くまでお疲れ様ー。」
「いえ…。…想楽さんは何を食べてきたんですか?」
「ただのファミレスだよー。みんなでレポートもやってたしー。」
「そっかあ…レポート大変ですねえ。」
「プロデューサーさんは…もしかしてご飯まだ食べてないー?」
「あ…そうなんですよ。何食べようかなと思って…お腹空いてきちゃいました。」
えへへと笑うプロデューサーに、想楽はふと思い出しリュックのポケットを漁った。
「そうだ、…これあげるー。」
想楽は個包装のチョコクッキーをプロデューサーに手渡す。
「え…お菓子ですか?いいんですか?」
「うん。遅くまで、励むあなたに、ご褒美をー。…っていっても大したものじゃないけどー。今日大学で、授業の前に友達にもらったの、忘れてたー。」
「ありがとうございます。…ふふ、なんだか、懐かしいですね、そういうの。」
「えー?なにー?」
「ファミレスでレポートやったり、学校でお菓子をあげたりもらったり、学生時代を思い出します。」
受け取ったお菓子をにこやかに眺め懐かしむプロデューサーの横顔を見て、ふと、この人も大人の女性だったと思い出した。
いつも忘れているというわけじゃないけど…、抜けているところもあるからか、いつでも僕らアイドルたちの立場に立ってなんでも考えてくれているからか、学生の自分とは違う大人の人だと、あまり意識していなかった。
「ありがたくご褒美、もらいますね。」
嬉しそうに無邪気に笑う彼女を見ても、一度意識してしまったことが頭から離れず、なんだか遠くに感じた。
背だって僕より小さくて、手も足も肩も小さくて、こんなにもすぐ隣にいるのに、大人と学生だという壁がものすごく大きなものに思えた。
「そろそろ電車来ますね。」
「…そうだねー。」
「…電車が来る前に食べちゃっても良いでしょうか。」
「え?」
「…えい」
プロデューサーさんはいたずらっぽく笑いながら、あげたお菓子の包みを開けて一口でお菓子を頬張った。
「おいひい」
「…食べながらしゃべらないでよー。」
「ん。すみません…お腹鳴りそうだったので食べちゃいました。」
えへへと笑うプロデューサーさんを見てなんだか力が抜けた。
もー、と言いつつも、心は暖かくなっていた。
勝手に壁を作っても、しょうがない。この人にそんなこと考えても、何にもならない。
「…ねー、やっぱりこの後、一緒に何か食べにいかないー?」
「え?でも想楽さんは食べてきたんじゃ…」
「甘いもの美味しそうに頬張る誰かさんを見てたら、僕も甘いもの食べたくなっちゃったー。ファミレスでもどうー?」
「…ええ!ぜひ!」
嬉しそうに笑う彼女を見て、自然にこちらも口元が綻んだ。
「青春は、いつになっても、誰にでも。こういうのも、たまにはいいよねー。」